著者
濱野 香苗
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

介護保険の導入が高齢者の生活上でのサポートシステムに与える影響を評価することを目的に、佐賀県の離島在住の第1号被保険者及び第2号被保険者の身体的、精神的、社会的、霊的面への介護保険の影響を明らかにした。第1号被保険者には平成17年6月〜11月、半構成的質問紙を用いて面接調査を行った。性別は男性50名、女性70名、年齢は65〜97歳、平均76.3歳であった。家族構成は配偶者と2人暮らし31.7%、配偶者と子供家族と同居26.7%、子供家族と同居23.3%、独居18.3%であった。介護保険導入により高齢者センターが建築され、入浴を含むデイサービスが開始された。それに伴い、老人会はデイサービスを手伝うボランティア活動を始めた。デイサービスや送迎バスの利用は、坂道が多く活動範囲が制限されていた第1号被保険者にとって、身体的に安楽になったばかりでなく、楽しみが増え、精神的にも良い影響があった。社会的、霊的面への影響はなかった。地域を基盤とした精神的サポート、手段的サポート、日常生活での支え合い等のサポートシステムは高い割合で維持されており、介護保険の影響は見られなかった。生活への影響は、少ない年金から介護保険料を引かれることによる経済的影響、デイサービスやボランティアに行くようになったことであった。第2号被保険者には平成18年6月〜12月、半構成的質問紙を用いて面接調査を行った。性別は男性51名、女性53名、年齢は40〜64歳、平均53.1歳であった。家族構成は親と同居51.9%、配偶者と2人暮らしおよび配偶者と子供と同居20.2%、子供と同居および独居3.8%であった。第2号被保険者においては、身体的、精神的、社会的、霊的面への介護保険の影響は見られなかった。また、地域を基盤としたサポートシステムへの影響も見られなかった。生活への影響は介護保険料に対する負担感であった。
著者
濱野 香苗 竹熊 麻子 井上 悦子
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.79-87, 1998
被引用文献数
1

本研究は、佐賀県における独居高齢者の住環境に関する安全に対する意識およびその関連要因を明らかにすることを目的とした。調査に同意の得られた佐賀県内在住の65歳以上の独居高齢者173名(男性29名、女性144名)を対象とした。調査期間は平成8年10月23日〜平成10年2月12日で、構造的質問紙を用いた面接による聞き取り調査を実施した。「安全のために何らかの配慮をしている」のは31.2%であった。配慮している内容の多くは「手すりをつけた」「トイレや風呂場の改造」で、「玄関や廊下の改造」はわずかであった。安全への配慮の有り群と無し群で有意差があった要因は、「独居年数」、「学歴」、「2階建て住居」、「トイレの様式」、「健康に関する記事や番組への関心」であった。独居高齢者の87.3%が希望している「このまま一人暮らしを続ける」を維持するためには、住環境の安全性への配慮が重要である。地域における様々な高齢者の活動の機会やマスメデイアを通じて住環境や住居周辺環境を整備することの必要性を啓蒙するとともに、社会資源の活用方法の情報提供を行う必要がある。