著者
井上 悦子 七堂 利幸 北小路 博司 鍋田 智之 角谷 英治 楳田 高士 會澤 重勝 西田 篤 高橋 則人 越智 秀樹 丹澤 章八 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.635-645, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)

風邪症状に対する鍼灸の予防、治療効果に関する多施設ランダム化比較試験 (RCT) の経緯ならびに現状について紹介した。パイロット試験では2週間の鍼治療が明瞭な効果を示したのに対し、多施設RCTによる同様な咽頭部への鍼刺激、さらには普遍的な間接灸刺激 (2週間) の効果は、いずれも300名を超す被験者を集めながら顕著なものとはならなかった。そこで、治療期間を最低8週間として、各施設においてパイロットRCTを実施した結果、より有効性が高まる傾向が認められた。これまでの臨床試験の経験や反省をふまえた議論のなかで、被験者の選択や対照群の設定、実験デザイン等の再検討の必要性が確認された。
著者
濱野 香苗 竹熊 麻子 井上 悦子
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.79-87, 1998
被引用文献数
1

本研究は、佐賀県における独居高齢者の住環境に関する安全に対する意識およびその関連要因を明らかにすることを目的とした。調査に同意の得られた佐賀県内在住の65歳以上の独居高齢者173名(男性29名、女性144名)を対象とした。調査期間は平成8年10月23日〜平成10年2月12日で、構造的質問紙を用いた面接による聞き取り調査を実施した。「安全のために何らかの配慮をしている」のは31.2%であった。配慮している内容の多くは「手すりをつけた」「トイレや風呂場の改造」で、「玄関や廊下の改造」はわずかであった。安全への配慮の有り群と無し群で有意差があった要因は、「独居年数」、「学歴」、「2階建て住居」、「トイレの様式」、「健康に関する記事や番組への関心」であった。独居高齢者の87.3%が希望している「このまま一人暮らしを続ける」を維持するためには、住環境の安全性への配慮が重要である。地域における様々な高齢者の活動の機会やマスメデイアを通じて住環境や住居周辺環境を整備することの必要性を啓蒙するとともに、社会資源の活用方法の情報提供を行う必要がある。
著者
伊藤 トモ子 牧 ゆかり 藤原 悦子 山本 りえ 下大迫 祐子 井上 悦子 矢部 博樹 永井 謙一 仲西 寿男 神木 照雄
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.83-86, 1988-05-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
16

院内感染予防のための効果的な手指消毒法を石ケンと流水による手洗い, ベースン法および速乾性擦拭消毒剤 (塩化ベンザルコニウム・アルコールローション) で検討した.ICU病棟における排便介助後に手指細菌数が増加し, 日常看護業務で手指が細菌汚染を受けることが示唆された.石ケンと流水による手洗いでは除菌率42.5%であり, ベースン法では除菌効果を認めなかったのに対し, 塩化ベンザルコニウム・アルコールローションによる擦拭消毒では除菌率93.1%と高く, 前二者にくらべ有意に優れた除菌効果が認められた.また本剤は皮膚刺激性が少なく, 皮膚炎をおこさないことが重要である手指消毒薬としても推奨されるべき方法と考えられた.
著者
池上 春香 永井 宏平 松橋 珠子 小林 直彦 武本 淳史 吉廣 卓哉 井上 悦子 樋口 智香 守田 昂太郎 内堀 翔 天野 朋子 田口 善智 加藤 博己 入谷 明 松本 和也
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.141-152, 2015-05-25 (Released:2015-06-18)
参考文献数
17

黒毛和種肥育牛の枝肉形質を推定するバイオマーカー候補タンパク質の同定を目的に,枝肉形質情報ならびに腎周囲白色脂肪組織のプロテオーム解析情報を搭載した統合情報管理システムを運用し,プロテオーム解析データを持つ去勢牛200頭から,5つの形質(枝肉重量・ロース芯面積・バラの厚さ・皮下脂肪の厚さ・BMSナンバー)に関して上位と下位の2群を選抜して,この2群間で314個のタンパク質スポットの発現量と枝肉成績との関連性を検討した.各形質の上位群(平均値+標準偏差)および下位群(平均値−標準偏差)として抽出した個体間の各スポットのタンパク質発現量を比較した結果,合計でタンパク質45種類(90スポット)の発現量に有意な差が認められた.これらタンパク質の一部について,代謝経路における位置付けを行なうとともに,vimentinのウエスタンブロット解析より発現量を検証したところ,枝肉形質を推定するバイオマーカー候補タンパク質としての可能性が示唆された.
著者
井上 悦子
出版者
佐賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

「目的」この研究は100歳長寿者の健康度,生活像及び生活支援ニードを明らかにすることを目的とした。「対象」佐賀県に在住する100歳長寿者で承諾の得られた79名を対象とした。「方法」半構成的質問紙を介した面接調査を1.HDS-R 2.Barthel Index 3.老研式IADL 4.AADL 5.PGCモラールスケール6.ライフイベント調査(喜び悲しみの体験,苦労したこと,生きがい)の測定具を使用して行った.「結果」年齢100歳-107.(平均10.1.2)性別男性6名,女性73名,居住場所.在宅22名(27.8%)施設57名(72.2%),HDS-R.8.52,Barthel Index45.38,老研式IADL1.59,AADL1.42,PGCモラールスケール8.79であった。80-90歳寿者24名を同じ尺度で行った調査結果は.HDS-R 19.75,Barthel Index96.67老研式IADL8.21,AADL8.35,PGCモラールスケール9.63であった。身体的能力及び認知能力においては100長寿者と80-90歳寿者の群間にt検定において有意差(P<0.01)があった。ライフイベント調査では両群間においての有意差はなかった。ライフイベントによる生きがいについては,明確に自分の生きがいを答える事ができた者は21名(26.6%)であった。生きがいがあると答えたものには「佐賀県で長寿者一番になるやゲイトボールで勝つ事など人生に対して目的があり,まだまだ何年でも生きたい」と意欲的であった.生きがいがないと答えた対象者はその理由として「ここまで長く生きたからもう十分という満足感」と「長く生きても仕方が無い」「夫・子供・友達も逝ってしまった」という無力感や寂寥感が述べられた。佐賀県に居住する100歳長寿者の主観的幸福感は身体動作能力,認知能力の高い者が生活においても満足しているが全体の概ね1/4の回答によるものであり対象者全体の中では少数である。この考えにおいて100歳長寿者全体としての満足度は低いと考えられる。100歳長寿者がますます増える傾向にあるが,身体能力が低下してない80代からのADLの強化につながる活動計画が100歳長寿者の生活満足感を得る一つの方策と考える。