著者
河 喜鉄 瀬下 明良 亀岡 信悟
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.347-353, 2003-05-01
被引用文献数
1

幽門側胃切除後の胃食道逆流症(GERD)の病態,評価について検討した.対象・方法:幽門側胃切除,Billroth I法再建を行った胃癌109例に対して逆流についてアンケート調査した.これをもとに,術前後のHis角,残胃小彎長,性差,郭清程度などと逆流症状との関連について検討した.さらに,26例では術後Bilitec2000を用いて24時間食道内胆汁逆流の頻度を測定し,上記因子と逆流の程度について検討を加えた.結果:アンケート調査では逆流症状(有症状群)を23例(21%)に認めた.逆流の成因となる因子について検討すると,術後のHis角が有症状群92.6±32.2°,無症状群74.7±26.5°と有症状群で開大していた(p=0.007).また,残胃小彎長(N cm)ではN≦5の群で逆流症状を示した症例が22例中9例(41%)と有意に多かった. (p=0.026).また,発症頻度は男性15.5%,女性31.6%と性差を認めた.重回帰分析でもこれら因子が独立した有意な因子となった.また,Bilitec2000を用いて胆汁逆流の頻度を測定した26例については,胆汁逆流の頻度が5%以上の20例では,His角は90.6±21.5°,5%未満の6例では74.5±14.2°となり胆汁逆流群ではHis角は開大していた.このうち6例に逆流症状を認めたが,いずれも胆汁逆流群であった.考察:幽門側胃切除後のGERDの発症にはHis角の開大で示される噴門部の形態変化および残胃の大きさ,性別が重要な因子と考えられた.
著者
小西 寿子 志賀 剛 瀬下 明良 木村 利美
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.169-172, 2018-07-31 (Released:2018-08-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は83 歳,男性.経皮的冠動脈形成術後に伴う心室期外収縮に対してフレカイニド 50 mg 1回 1錠 1日 2 回で服用していた.中部胆管癌を併発し,食事摂取量が減り,体重も減少した.他院でビタミン C 大量静注中に心肺停止を来し,心肺蘇生により心拍再開を得た.当院救急搬送後,心電図にてQT 間隔の延長 (0.76秒) を認め,フレカイニドを中止した (血中フレカイニド濃度は治療域であった) .さらに血清カリウム値が 2.0 mEq/L,血清アルブミン値が 2.7 g/dL と低値であったため,カリウム製剤による補正を行うとともにヒト血清アルブミン製剤 25 g/日の投与と中心静脈栄養を併用することで血清カリウム値も改善し QT 間隔が正常化した.本例では食事摂取不良による低栄養から低カリウム血症を来し,フレカイニドによる QT 延長作用が増強し心停止に至ったと考えられた.