- 著者
-
志賀 剛
- 出版者
- 一般社団法人 日本不整脈心電学会
- 雑誌
- 心電図 (ISSN:02851660)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.4, pp.365-375, 2011 (Released:2012-02-10)
- 参考文献数
- 52
心臓突然死は心不全患者の死因の1/3を占め,そのほとんどが心室頻拍・心室細動(VT/VF)を原因とする.これら心室不整脈は有効な心室収縮を破綻することで循環血液の駆出を妨げ,心静止や無脈性電気活動に至る.心不全治療を行ううえで,心室不整脈に対する対策が必要である.VFおよび血行動態が破綻する持続性VTには,電気的除細動が最も有効である.電気的除細動抵抗性のVT/VFに対しては,リドカインに比し,アミオダロンあるいはニフェカラントの有用性が示されている.一方,予防薬としてはβ遮断薬が心不全患者の生命予後を改善するのみならず,心臓突然死をも予防することが示されている.心不全を対象とした大規模臨床試験から明らかになった心臓突然死を減少させるβ遮断薬は,メトプロロール,ビソプロロールおよびカルベジロールである.一方,アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の心臓突然死予防効果については,一定の見解がない.抗不整脈薬では,アミオダロンが数々の大規模臨床試験から突然死予防薬として位置付けされている.しかし,その効果には限界があり,ハイリスク例に対する心臓突然死予防としては植込み型除細動器(ICD)が有効とされる.ただし,ICDには不整脈予防効果がないため,アミオダロンにはICDへの付加治療としての役割もある.心室不整脈の抑制,VT周期の延長,上室不整脈の予防,房室伝導の抑制からICDショック作動の抑制,抗頻拍ペーシング成功率の改善,頻回作動の抑制ならびに不適切作動の回避が考えられる.近年,アミオダロンの心外性副作用の欠点を補う新しいIII群抗不整脈薬が開発され,その臨床応用が待たれている.