著者
郷 譲治 永井 清仁 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.737-742, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
30
被引用文献数
4 6

近年,三重県英虞湾でKarenia mikimotoi赤潮が発生し,アコヤガイ真珠養殖への被害が懸念されている。K. mikimotoiがアコヤガイに及ぼす影響を調べるため赤潮海水による曝露試験を行った。アコヤガイ稚貝は本種の細胞密度1×104 cells/mLで36時間までに7.5%,6×104 cells/mLでは24時間までに100%がへい死した。成貝は0.5×103 cells/mLから殻体開閉の頻度が高くなり,3×103 cells/mLで頻繁な開閉運動を示した。
著者
瀬川 進 井塚 隆 玉城 世雄 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.101-108, 1993-03-31

1992年5月18日に, 沖縄県石垣島の米原沖約1.5kmのサンゴ礁で囲まれた水深約23mのくぼ地に発達した直径約20mの枝状の群体を形成するミドリイシ類を主体とするサンゴ礁において, アオリイカの産卵群を観察する機会が得られた。産卵群は少なくとも, 最後の観察を行った7月2日まで継続的に観察され, その間の産卵群の個体数は目視によると, 最低約20個体から最高100個体以上であった。産卵群の詳細な観察は1992年5月25日および5月28日にスキューバ潜水により行った。数個体を除いたほとんどのアオリイカは雌雄の対をなしており, 雌雄は同一方向を向いて上下にならんで遊泳していた。卵嚢は死んだ枝状のサンゴの上に発育した生きているサンゴの隙間を通して, 死んだサンゴの枝に産み付けられていた。卵嚢は従来報告されているアオリイカの卵嚢のように, 数十の卵嚢が卵嚢の基部から房状に束ねられて産み付けられるのではなく, 個々の卵嚢が比較的ばらばらにサンゴに付着しており, すでに産み付けられた卵嚢の中央部に付着して産み付けられた卵嚢も観察された。卵嚢中には5∿13個(平均9.2個, 標準偏差1.2個)の卵が1列に並んでいた。アオリイカでは1卵嚢中に10個以上の卵を保有する卵嚢の報告は今までに知られていない。産卵を行っている雌雄に他のアオリイカが近付きすぎた場合に, 番(つがい)を成している雄が近付きすぎた個体に対して独特の体色変化を示す例が観察された。他の個体が番を成している雄の上から近付いた場合は, 雄は雌に近い頭部および腕の部分を褐色にし, 相手に近い外套部を白く浮き立たせた。また他の雄が横から近付きすぎた場合には, 雄は雌に近いほうの体半分を褐色にし, 相手の雄の側面半分を白色に, 背中線を境に左右に異なる体色を示した。このような体色変化はアオリイカでは初めての観察である。従来沖縄に生息するアオリイカは, 漁業者によって「アカイカ」, 「シロイカ」, 「クアイカ」などと異なった名前で呼ばれていながら, 形態的には区別が付けられていなかった。しかし, 今回の観察により産卵生態, 1卵嚢中の卵数の違い等から, 明らかになんらかの形で隔離された複数の異なった個体群の存在が示唆される。
著者
樋口 恵太 永井 清仁 服部 文弘 前山 薫 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.608-618, 2016 (Released:2016-08-25)
参考文献数
56
被引用文献数
2 2

真珠収穫後のアコヤガイ貝肉を主原料とし,海事作業から発生する貝掃除屑を加えてコンポスト化試験を行った。その結果,アコヤガイ貝肉は約 45 日の処理でコンポスト化が可能である事が分かった。また,貝掃除屑はコンポスト材料の通気性向上や,コンポストの肥料成分を増加させる効果が認められた。完熟したコンポストは,塩分を含むが,コマツナに対して肥料効果を示した。以上より,真珠養殖過程で廃棄される貝肉および貝掃除屑は,農業資材として有効活用できる事が示され,真珠養殖による環境負荷の低減につながると期待された。
著者
渡辺 久美 安藤 和人 土屋 光太郎 瀬川 進
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.291-301, 1998-12-31
被引用文献数
2

ソデイカの浮遊卵塊から得られた孵化6目前の胚から、孵化4∿5日後の孵化幼生までの発生を観察した。孵化6目前の胚は、器官形成期にあり、ほぼStage IXの発生段階(Neaf, 1982)にあると判断された。この胚には既に多くの色素胞が形成されており、ソデイカの発生上の特徴として色素胞出現時期が他のツツイカ類に比べ早いことが判った。また、孵化個体の色素胞の数は他のツツイカ類の孵化個体に比べ顕著に多かった。第III、IV腕の発達が遅く、孵化4∿5日後の個体の腕長式は、I>II>IV>IIIであった。また、観察の結果、従来腕として認識されていたものが触腕であることが明らかとなった。孵化4∿5日後の個体の触腕は第I腕の2倍の長さに発達していたが、触腕掌部は分化しておらず、基部寄り1/3の位置に4列に13∿14個の吸盤が形成されていた。この触腕の形態および吸盤の位置は成体とは大きく異なり、ソデイカのparalarva期を定義する上での重要な形質の1つであると考えられた。