著者
瀬理 祐 庄田 宏文 松本 功 住田 孝之 藤尾 圭志 山本 一彦
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.154-159, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
39
被引用文献数
2

関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)は全身の慢性,破壊性の多関節炎を主症状とする代表的な自己免疫疾患である.病態形成において様々な遺伝,環境因子の関与が示唆されているが,依然として詳細な機序は不明である.最近,RAの疾患感受性遺伝子として約100種類が報告されたが,Peptidylarginine deiminase type4(PADI4)はRAのgenome-wide association studyによってnon-MHC遺伝子のRA感受性遺伝子として本邦より初めて報告され,様々な疾患の遺伝学的解析と併せてRAとの特異的な関連が示唆されている.現在,PADI4はアジア人や欧米人の一部でもRAとの関連が示され,アジア人ではanti citrullinated peptide antibody(ACPA)の有無に関わらず骨破壊の危険因子となることも報告された.PADI4遺伝子はシトルリン化による翻訳後修飾能を有するPAD4蛋白をコードする.PADI4は骨髄球,顆粒球といった血球系細胞で特異的に発現している.PADI4のRA感受性ハプロタイプではmRNAの安定性が増すことでPAD4蛋白が増加することが示唆されている.従来,RAにおけるACPAの特異性から,PAD4蛋白の増加に伴うシトルリン化蛋白の過剰産生とACPAの誘導といった仮説が注目されてきた.しかし,PADI4は核内移行シグナルを有することで様々な遺伝子発現の制御やneutrophil extracellular trapsの形成に関与し,RAの病態形成において多彩な役割を担う可能性が示唆される.本項ではPADI4の機能とRAにおける役割のまとめ,考察を行う.