著者
烏雲 畢力格 柘植 雅義
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.11-24, 2021-05-31 (Released:2021-11-30)
参考文献数
54

本研究は、知的障害者95名を対象として、目標志向性と就労における自己調整方略および職務満足感の関連を検討した。因子分析の結果、目標志向性として「マスター目標志向性」と「パフォーマンス目標志向性」が、職務満足感として「外在的職務満足」と「内在的職務満足」が、それぞれ抽出された。パス解析の結果、(1)メタ認知的方略の「柔軟的調整」が行動・環境の調整方略を規定することが示唆された。(2)目標志向性と就労における自己調整方略の関連について、マスター目標志向性は「目標設定」と「柔軟的調整」及び「作業方略」と正の関連を有するほかは、「柔軟的調整」を媒介して間接的に行動・環境の調整方略を予測していると考えられる。(3)就労における自己調整方略と職務満足感の関連について、「援助要請」と「作業方略」は職務満足感と正の関連を有していた。また、目標志向性は職務満足感と正の関連を有するほかは、「援助要請」と「作業方略」を介して間接的に職務満足感を予測していると考えられる。したがって、知的障害者の職務満足感の向上に向けて、就労における自己調整方略に対する支援の重要性が示唆された。
著者
烏雲 畢力格 柘植 雅義
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.11-24, 2021

<p>本研究は、知的障害者95名を対象として、目標志向性と就労における自己調整方略および職務満足感の関連を検討した。因子分析の結果、目標志向性として「マスター目標志向性」と「パフォーマンス目標志向性」が、職務満足感として「外在的職務満足」と「内在的職務満足」が、それぞれ抽出された。パス解析の結果、(1)メタ認知的方略の「柔軟的調整」が行動・環境の調整方略を規定することが示唆された。(2)目標志向性と就労における自己調整方略の関連について、マスター目標志向性は「目標設定」と「柔軟的調整」及び「作業方略」と正の関連を有するほかは、「柔軟的調整」を媒介して間接的に行動・環境の調整方略を予測していると考えられる。(3)就労における自己調整方略と職務満足感の関連について、「援助要請」と「作業方略」は職務満足感と正の関連を有していた。また、目標志向性は職務満足感と正の関連を有するほかは、「援助要請」と「作業方略」を介して間接的に職務満足感を予測していると考えられる。したがって、知的障害者の職務満足感の向上に向けて、就労における自己調整方略に対する支援の重要性が示唆された。</p>
著者
烏雲畢力格 柘植 雅義
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 = Japanese journal of disability sciences (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.29-42, 2018

本研究は自己調整方略の主炭な要素であるメタ認知の調整、行動の調整、環境の調整に含まれている6つの方略を用い、知的障害者の作業遂行力を促進する自己調整方略の尺度を作成することを目的とした。併せて知的障害者の就労における自己調整方略の使用の実態を検討した。既存の尺度や、職員に対する調査から項目を収集し、また内容的妥当性の検討を経て項目を選定した。このように収集・選定された項目を基に、成人期知的障害者366名を対象に調査を実施した。その結果、48項目からなる知的障害者の就労における自己調整方略尺度が作成された。因子分析の結果、この尺度は、(1)「目標設定」「柔軟的調整」「援助要請」「作業方略」「環境の管理」の5つの下位尺度から構成されていること、(2) 得られたα係数値から尺度の信頼性が示されたこと、(3)「作業方略」「援助要請」「柔軟的調整」「目標設定」「環境の管埋」の順に得点が高いことが、それぞれ確認された。Self-Regulation Strategy at Employment are important variables to promote work performance in people with intellectual disabilities. The purpose of this study was to develop a scale of Self-Regulation Strategy at Employment and to examine the current condition of Self-Regulation Strategy at Employment in people with intellectual disabilities. Strategy items were collected from an existing scale form and a questionnaire survey to Employee support staff. After the content validity, the selected items were completed by 366 people with intellectual disabilittes. As a result, a 48-item Self-Regulation Strategy at Employment Scale in people with intellectual disabilities was developed. (1)Factor analysis yielded 5 subscales: "goal setting" "Flexible regulation" "Help seeking" "Task strategy" "Environment structuring", (2)The scale was confirmed moderately reliability from Cronbach's alpha coefficient, (3)Using level was high in the order of "Task strategy" "Help seeking" "Flexible regulation" "goal setting" "Environment structuring".