著者
熊本 卓哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.266-269, 2012-06-20 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
1

アジピン酸の工業的合成とその利用について述べる。アジピン酸は,シクロヘキサンの酸化より合成されるシクロヘキサノン-シクロヘキサノールの混合物(KA oil)を硝酸酸化して得るKA法が一般的であるが,副生する一酸化二窒素が環境に対して問題があるため,硝酸酸化を用いない方法や一酸化二窒素の再利用法の開発も進んでいる。本稿では,アジピン酸の製造について,KA oilを経由する方法のほか,シクロヘキセンを経由する製造法や,シクロヘキサンからの1段階合成法などについて概説し,その利用について簡単に述べる。
著者
熊本 卓哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.70-73, 2013-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

高校の教科書では,同位体どうしは,原子番号が同じであり,同一元素の属する原子であるので,化学的性質はほぼ同じと紹介されている。しかしながら,核種や利用法によって特徴のある性質を示すものがある。一昨年の原発の事故以来,放射性同位体に関する話題が喧し<,何かと悪者にされる同位体であるが,同位体の分類や性質,エネルギー源として以外の利用法について理解を深めることは重要ではないかと考えられる。本稿では,同位体が見つかった経緯と同位体の種類,最近の同位体を用いた研究例について概説する。
著者
熊本 卓哉 石川 勉 大村 智
出版者
社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.49-58, 2004-01-01
参考文献数
39
被引用文献数
15

Kinamycin antibiotics, strongly active against gram-positive bacteria, were isolated from the culture broth of <I>Streptomyces murayamaensis</I>. Their structures were firstly determined to be a benzo [<I>b</I>] carbazoloquinone skeleton with <I>N</I>-cyanamide [N-C&equiv;N] moiety. After that, prekinamycin was isolated from the same organism as a biosynthetic precursor and the same 6-6-5-6 ring system was also proposed for the structure. But problems still remained on the determination of substituent pattern at <I>N</I>-cyanamide moiety by spectroscopic means. Recently, the structures of kinamycins and prekinamycin were revised to be a benzo [<I>b</I>] fluorene skeleton with diazoalkane moiety [C<SUP>-</SUP>-N<SUP>+</SUP>&equiv;N]. However, a synthetic compound with the revised structure for prekinamycin was found to be different from natural prekinamycin, instead an isomeric benzo [<I>a</I>] fluorene skeleton, a 6-5-6-6 ring system was proposed for the natural product, which was newly named as isoprekinamycin. Herein the chemistry of kinamycins and their related compounds with structural confusions is reviewed, especially focused on the history of structural determination and recent synthetic studies.
著者
熊本 卓哉
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

昨年度に引き続き,各種グアニジン誘導体より,窒素上にアリル置換基を有するアジリジンを合成し,熱的,および光条件による環化付加反応を検討した.しかしながら,いずれの場合も目的の環化体を得ることができなかった.一方,四酸化オスミウムを用いるジヒドロキシル化については,アリル置換基上でのみ酸化が進行した所望のジヒドロキシル体を与えた.今後,ここで生じたジオール部位に対して更なる変換を行い,C3単位ををアジリジンに組み込んだヘテロ環合成へと変換する予定である.また,アジリジン環に対する反応性を調査する上で,有機銅試薬による開環反応,有機ホウ素試薬によるシグマトロピー型反応などの検討を行ったが,所望の環化付加体を得ることはできなかった.その検討の過程において,塩化インジウムを用いた場合にtransアジリジンからcisアジリジンへの異性化反応が効率よく進行することを見出した.この異性化はこれまでに例がなく,特にcisアジリジンを部分骨格に有するマイトマイシンCなどの天然物合成への展開が期待される有用な反応であり,これらの事項についてHeterocycles誌に投稿した.一方,アジリジンを一旦フェニルゼレン試薬で開環してβ-ゼレノアミンとした後,アリルスズ試薬を用いたラジカル型炭素-炭素結合反応によりアリル基の導入に成功した.今後このアリル基を足がかりとした環化反応に展開していく予定である.
著者
関 宏子 熊本 卓哉
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ビスグアニジン型化合物と各種酸性化合物との複合体を用い、単結晶X線解析や溶液・固体NMR を組み合わせた機能性化合物の分子間相互作用を含む構造解析を行った。ビスグアニジン-ヒ酸複合体の固体NMRは想定される本数よりも多いシグナルを示した。これは複合体中のグアニジン部位が非等価であるというX線解析の結果を反映したデータであり、固体NMRが分子間相互作用を持つ複合体の構造解析に有効な手段となる可能性を示した。