著者
入來 篤史 岡ノ谷 一夫 熊澤 紀子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

「好奇心」とは、新たな経験を求める行動傾向を表出するための内発的な動機付けの要素とされ、ヒトの創造性発現の重要な基盤になっていると考えられる。本研究は、熊手状の道具使用を習得する能力があることが予備実験により確認されている、齧歯類デグー(Degu; Octodon degu)を新モデル動物として用いて、高次認知機能研究の新たな座標軸たる「好奇心」という視点に切り込み、齧歯類ではこれまで類例の無い道具使用学習が、この動物に特徴的に発現する「好奇心」に由来するとの仮説に基づいて、道具使用を触発する脳内機構を神経科学的メカニズムの解明することを目的としてきた。昨年度は、齧歯類デグーが前肢による熊手状の道具使用を習得する能力のあることを確認し、新モデル動物として確立することやその訓練過程の軌跡の定量化に成功した。さらに、デグーが道具の機能を理解していることを示唆するデータと共にまとめた論文が、本年度PLoS ONE誌に掲載されることになった。さらに、本年度はこのモデルを用いて道具使用行動習得に伴うニューロン新生の変化について組織学的に検討したところ、海馬歯状回の新生ニューロン数が道具使用訓練群で増加しているという結果が得られている。また、大脳皮質についても検討を行ったところ、他のげっ歯類ではほとんど見られない幼弱ニューロンの存在を大脳皮質前頭野で確認しており、その細胞とニューロン新生との関連性について詳細に検討を進めている。
著者
岡ノ谷 一夫 時本 楠緒子 熊澤 紀子 日原 さやか 入来 篤史
出版者
社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.110-110, 2008

ネズミの一種デグーに熊手型の道具で餌を取ることを訓練した。結果、デグーは道具の構造と機能の対応を理解する選択行動を示した。特殊に見える認知機構も一般的な能力の組み合わせから創発しえることを示唆する。