著者
時本 楠緒子
出版者
尚美学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、定位操作の一種である「入れ子操作」用いてデグーの階層的物体操作能力を定量的に分析し、ヒトを含む霊長類と直接比較することにより、ヒト認知能力の特性を検討することを目的とした。実験に先立ち、物体操作におけるデグーの身体的不利を補うため、実験装置の改良を行った。これを用いてデグーに入れ子操作の訓練を行い、得られた結果を、時系列的に記述して霊長類の結果と比較した。結果、デグーの入れ子操作行動は、pairからpotまでの行動の変化がチンパンジーとi類似していることが確認された。また最終的に4個のカッフ.を用いたpot操作が確認されたが、 subassembly操作は現れなかった。これが謁歯類であるデグーの階層的操作能力の限界であると考えられる。
著者
岡ノ谷 一夫 時本 楠緒子 熊澤 紀子 日原 さやか 入来 篤史
出版者
社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.110-110, 2008

ネズミの一種デグーに熊手型の道具で餌を取ることを訓練した。結果、デグーは道具の構造と機能の対応を理解する選択行動を示した。特殊に見える認知機構も一般的な能力の組み合わせから創発しえることを示唆する。
著者
岡ノ谷 一夫 入來 篤史 時本 楠緒子 上北 朋子 沓掛 展之
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

社会性齧歯類デグーは豊富な音声レパートリーを有し,約20種類の音声を状況別に使い分けコミュニケーションをする。デグーの発声中枢PAGの電気刺激実験の結果から、状況依存的発声はより上位の領域において制御され,特定の文脈における適切な発声が可能になっていると考えられる。学習・記憶研究において,海馬は文脈認知の有力な候補であるが,発声と海馬の関与は未だ明らかでない。文脈依存的な発声行動における海馬の役割を明らかにするため,海馬損傷を施した個体の発声の変化を飼育場面と求愛場面において検討した。海馬損傷個体において歌頻度が減少し、求愛開始時に特徴的な導入行動が欠落するなどの歌の変化が見られたほか、機能の異なる音が求愛歌中に出現した。求愛行動に関しても、海馬損傷個体では雌の拒絶の発声にも関わらず、雌に対する接触行動が増加した。また、海馬損傷個体では、同性個体に対しても接触頻度が増加し、喧嘩頻度の増加がみられた。ただし、海馬損傷個体が喧嘩の開始をすることはなく、他個体の拒絶にも関わらず接近行動を繰り返すなど、対他個体への反応様式の変化が喧嘩を誘発する傾向があった。親和行動に関しては、グルーミング行動や他個体に寄り合って寝る行動の減少がみられた。物体に対する馴化や新奇物体の認知に関しては、海馬損傷個体に異常はなかった。これらの結果から、海馬が音声・非音声コミュニケーションにおける状況の認知に寄与していることが示唆された。