著者
入來 篤史
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.786-791, 2000-09-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
13
著者
入來 篤史 岡ノ谷 一夫 熊澤 紀子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

「好奇心」とは、新たな経験を求める行動傾向を表出するための内発的な動機付けの要素とされ、ヒトの創造性発現の重要な基盤になっていると考えられる。本研究は、熊手状の道具使用を習得する能力があることが予備実験により確認されている、齧歯類デグー(Degu; Octodon degu)を新モデル動物として用いて、高次認知機能研究の新たな座標軸たる「好奇心」という視点に切り込み、齧歯類ではこれまで類例の無い道具使用学習が、この動物に特徴的に発現する「好奇心」に由来するとの仮説に基づいて、道具使用を触発する脳内機構を神経科学的メカニズムの解明することを目的としてきた。昨年度は、齧歯類デグーが前肢による熊手状の道具使用を習得する能力のあることを確認し、新モデル動物として確立することやその訓練過程の軌跡の定量化に成功した。さらに、デグーが道具の機能を理解していることを示唆するデータと共にまとめた論文が、本年度PLoS ONE誌に掲載されることになった。さらに、本年度はこのモデルを用いて道具使用行動習得に伴うニューロン新生の変化について組織学的に検討したところ、海馬歯状回の新生ニューロン数が道具使用訓練群で増加しているという結果が得られている。また、大脳皮質についても検討を行ったところ、他のげっ歯類ではほとんど見られない幼弱ニューロンの存在を大脳皮質前頭野で確認しており、その細胞とニューロン新生との関連性について詳細に検討を進めている。
著者
入來 篤史
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

行動経済学はバブルを引き起こすと考えられるヒトの非合理的な行動の一部について説明することを始めている。たとえば、「貨幣錯覚」と呼ばれる現象は、インフレーション下で名目所得が増加すると実質所得は減っていても所得が増えたように錯覚することであり、購買行動を誘発することでバブルを引き起こすと考えられる。一方、神経経済学はバブルに関わるヒトの非合理的な行動を支持する神経基盤を明らかにしつつあるが、バブルが発生しているときに取引しているヒトの脳活動はこれまでに計測されていない。我々は、実際にバブルの様相を呈し破綻に至った投資会社の株式価格データを用いて、実際に株取引を行っているときの脳活動を計測した。被験者は取引により収益を最大化するよう求められ、参加の謝金が収益に依存することを理解して実験に参加した。実験の結果、バブル期の買い注文に関わる脳活動のなかで被験者の収益に相関するのは腹内側前頭前野(BA32)であった一方、売り注文に関わる脳活動のなかで被験者の収益に相関するのは外側前頭前野(BA10)であった。これらは我々の仮説を支持する。また、fMRI実験後に行った時間展望尺度アンケートの結果と相関するバブル期の買い注文の脳活動が左下頭頂小葉(BA40)に見られた。これらの結果から、下頭頂小葉で計算される株価の見通しが認知バイアスとして働くことで腹内側前頭前野の非合理的判断を誘導したのではないだろうか。もしそうであるならば、下頭頂小葉がヒトで大きく発達したことが、経済的な予測を可能にするのと同時にバブルという病理を生み出しているのかもしれない。
著者
入來 篤史
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.113-118, 2006-12-25

Primates have evolved to allow placing their hands in front of their face, where precise three-dimensional structures could be analyzed through their unique binocular vision. Primate parietal cortex possesses neural mechanisms subsurving such elaborate shaping of hands under visual supervision, which should have in turn enabled higher primates to handle primitive tools. Such parietal multimodal integration may not be limited to interpretations of represented shapes and the meanings of spatial structures, but may also be extrapolated to higher intellectual functions in humans.
著者
小川 昭利 入來 篤史
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.35, no.16, pp.93-96, 2011-03-08

脳機能画像から知覚や認知の内容を解読すること目指すデコーディング研究では,初期には視覚刺激が対象となっていたが,聴覚刺激,体性感覚刺激,さらには注意のシフトなどのような高次認知にまで対象が広がってきている.本研究は,脳機能画像から被験者が推論を行っていることを識別することを目指した.被験者はベースとなる関係を学習し,MRI内で推論の課題を行った.解析の結果,ベースとなる関係の試行と推論の試行を識別することができた.このことは,推論を行ったかどうかを識別するための情報が符号化された脳部位の存在を示唆する.
著者
山崎 由美子 小川 昭利 入來 篤史
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.366-377, 2008 (Released:2010-02-15)
参考文献数
57
被引用文献数
9

Researchers studying symmetry, one of the requirements for establishing stimulus equivalence, have contrasted inferences made by human and nonhuman animals and suggested that inference in each animal species is determined by several biological factors developed in the course of the evolution of a given species. This paper reviews the relevant experimental studies with human and nonhuman animals, including studies of young children, individuals with developmental disabilities, and nonhuman mammals. This work indicates that developmental, ethological, and behavioral factors are closely related to produce symmetry. In searching for the neural factors of symmetry, evidence from fMRI studies suggests that brain activity associated with equivalence relationships occurs in the processing of stimuli with or without temporal order. Thus, further research on the processing of temporal-spatial factors of stimuli is needed in both human and nonhuman animals. A detailed analysis of human subjects failing to establish equivalence relationships, and of nonhuman animals performing prerequisites for symmetry, such as identity matching and matching by exclusion, is crucial for understanding the biological origins of symmetry inferences.
著者
岡ノ谷 一夫 入來 篤史 時本 楠緒子 上北 朋子 沓掛 展之
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

社会性齧歯類デグーは豊富な音声レパートリーを有し,約20種類の音声を状況別に使い分けコミュニケーションをする。デグーの発声中枢PAGの電気刺激実験の結果から、状況依存的発声はより上位の領域において制御され,特定の文脈における適切な発声が可能になっていると考えられる。学習・記憶研究において,海馬は文脈認知の有力な候補であるが,発声と海馬の関与は未だ明らかでない。文脈依存的な発声行動における海馬の役割を明らかにするため,海馬損傷を施した個体の発声の変化を飼育場面と求愛場面において検討した。海馬損傷個体において歌頻度が減少し、求愛開始時に特徴的な導入行動が欠落するなどの歌の変化が見られたほか、機能の異なる音が求愛歌中に出現した。求愛行動に関しても、海馬損傷個体では雌の拒絶の発声にも関わらず、雌に対する接触行動が増加した。また、海馬損傷個体では、同性個体に対しても接触頻度が増加し、喧嘩頻度の増加がみられた。ただし、海馬損傷個体が喧嘩の開始をすることはなく、他個体の拒絶にも関わらず接近行動を繰り返すなど、対他個体への反応様式の変化が喧嘩を誘発する傾向があった。親和行動に関しては、グルーミング行動や他個体に寄り合って寝る行動の減少がみられた。物体に対する馴化や新奇物体の認知に関しては、海馬損傷個体に異常はなかった。これらの結果から、海馬が音声・非音声コミュニケーションにおける状況の認知に寄与していることが示唆された。
著者
入來 篤史
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.113-118, 2006 (Released:2006-12-22)
参考文献数
11

Primates have evolved to allow placing their hands in front of their face, where precise three-dimensional structures could be analyzed through their unique binocular vision. Primate parietal cortex possesses neural mechanisms subsurving such elaborate shaping of hands under visual supervision, which should have in turn enabled higher primates to handle primitive tools. Such parietal multimodal integration may not be limited to interpretations of represented shapes and the meanings of spatial structures, but may also be extrapolated to higher intellectual functions in humans.