著者
神戸 大朋 片山 高嶺 高橋 正和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、過去40 年にわたり急激に増加した疾患として知られる。IBDの発症や憎悪化のメカニズムの一つとして、「亜鉛欠乏」が「腸型アルカリフォスファターゼ(IAP)の活性消失」を引き起こすことがあげられることを、細胞及び動物レベルで証明し、IBDの予防と治療に亜鉛の活用が実践的であることを示す。さらに、亜鉛の吸収効率を上昇させる食品因子を探索し、本因子が実際にIBDの予防や治療に有効に作用することを実証する。亜鉛を充足させる食の提案は、医薬や食品など幅広い分野の応用に新しい展開をもたらすものと期待される。
著者
片山 高嶺
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.17-24, 2016-03-15 (Released:2017-04-26)
参考文献数
50

ビフィズス菌はヒト腸内の常在菌であり、プロバイオティクスとして広く認知されている。母乳栄養児の腸管ではビフィズス菌優勢な腸内細菌叢が形成されることが古くから知られており、それには人乳に含まれるオリゴ糖成分が関与していると言われてきたが、その詳細を分子レベルで推考するほどの情報は全くなかった。我々の研究グループは 10 年ほど前に、ビフィズス菌がヒト由来の糖質に作用する特異的な酵素を有していることを発見し、そのことがきっかけでヒトとビフィズス菌の共生を考えるようになった。本総説では、その歴史的背景を踏まえながら、ビフィズス菌が有する母乳オリゴ糖分解酵素について紹介する。母乳オリゴ糖は、ヒトとビフィズス菌という分類学上の「界」を超えた生物同士を結びつけた共生因子といえる。