著者
笠原 義正 板垣 昭浩 久間木 國男 片桐 進
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-7_1, 1996-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
14
被引用文献数
2 5

毒茸のツキヨタケをマウスに投与したときの消化器系に与える影響を検討し, 塩蔵による毒抜き操作の有効性を調べた. その結果, 餌摂取量の減少, 体重の減少, 胃の膨満, 便重量の減少などの異常な状態はツキヨタケを塩蔵後塩抜きすることによって消失することが分った. また, 胃を膨満させる毒性物質として illudin S を単離した. 更に, この物質がツキヨタケの中毒症状の一つである嘔吐の原因物質であることもカエルを用いた動物実験により明らかにした.
著者
笠原 義正 伊藤 健 沼澤 聡明 和田 章伸
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.364-369, 2013
被引用文献数
5

野生のトリカブトの葉や根などに含まれている4種のアコニチン類(AC類)をLC-MS/MSを用いて一斉定量した.また,マウスに対する毒性とAC類の定量値との関係を検討した.野生のトリカブトの葉,根,花弁,蜜腺に含まれるAC類を定量した結果,おのおの5.9,928.1,46.1,69.8 μg/gで,根の次に蜜腺の含有率が高かった.また,市販のはちみつを検査したが,AC類が検出されたものはなかった.トリカブトの根エキスのマウス毒性とAC類の定量結果は良い一致を示した.また,AC類が検出されなかったウゼントリカブトにマウス毒性は観察されなかった.4種のAC類の加熱による変化では,0.5分間ゆでた葉のAC類含有量は31.6%に減少し,そのゆで汁に54.5%移行した.また,メサコニチンを加熱してベンゾイルメサコニンに変化することが確認されたので,これが検出されてもトリカブト属植物による中毒が示唆できることが分かった.
著者
鈴木 彰 Duc Hoang Pham Nguyen 中村 公亮 穐山 浩 笠原 義正
出版者
日本食品化学学会
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.18-24, 2011

2004年に、木材腐朽性の担子菌スギヒラタケを摂食した人、とりわけ慢性腎臓病患者に深刻な急性脳症が大発生した。急性脳症を引き起こす要因の主体は依然未解明である。これは、同菌の生長が極度に遅いことに一部起因している。このため、様々な分野の研究の進展に資する同菌の栄養生長に適する培地の探索を試みた。日本各地の地理的に異なる地点のスギとアカマツの枯木から分離した同菌の15菌株をポテトデキストロース寒天培地(PDA)で培養したところ、生長速度のみならずコロニー形態にも著しい変異が存在することが明らかになった。生長の速い5菌株を選抜し、5種類の液体培地[ポテトデキストロース培地(PD培地)、麦芽エキス・酵母エキス培地(MY培地)、ジャガイモ抽出液・ニンジン抽出液培地(PC培地)、甘酒培地、太田氏培地]で20℃、暗黒下で8週間、静置培養したのち、各菌株の乾燥重を量った。同菌の乾燥生物量を指標とした生長は、PD培地で最大値が得られ、次いで太田氏培地、MY培地、甘酒培地、PC培地の順となった。同一培地での液体培養において、いずれの供試菌株ともに生物量に顕著な変異がみられ、栄養菌糸体には発育不全の分枝が高頻度に発生しており、栄養生長が極めて遅い一因となっていると推察される。これらの結果から、日本産のスギヒラタケの個体群には顕著な生長変異が存在することが判明した。以上から、今後、栄養生長能の高いスギヒラタケ菌株を選び、PD培地や太田氏培地を用いて培養実験を行なえば、同菌の菌体化学成分と急性脳症の発症との関係の解明に寄与すると期待される。
著者
笠原 義正 伊藤 健
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.167-172, 2009-08-25 (Released:2009-09-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3 15

LC/MS/MSを用いてツキヨタケおよびその食中毒原因食品に含まれるilludin Sの定量法を開発した.試料をメタノールで抽出し,Oasis HLBを用いて精製し,LCのカラムにはInertsil ODS-3を使用し,移動相には0.1%ギ酸-メタノール(7 : 3)を用いた.MS/MSの条件はESIポジティブモード,測定はMRMモードで行った.本法では他のキノコに添加した場合のilludin Sの回収率は84~94%で,検出限界は0.08~0.10 μg/gであった.食中毒原因食品からilludin Sの測定は可能であり,食中毒食品を想定したキノコ汁についてはilludin Sの回収率は74.8%であった.本法はツキヨタケおよび食中毒原因食品中のilludin Sの分析に有用な方法である.