著者
坪井 康浩 東野 哲也 牛迫 泰明 森満 保
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.717-725, 1996

1995年5月までに宮崎医科大学耳鼻咽喉科にて行われた人工内耳手術は25例26耳であり, このうち2耳において顔面神経迷路部に近接する電極で顔面神経刺激が誘発された. 第1症例の原因は聴神経腫瘍による骨破壊や手術による骨削開で蝸牛骨包と顔面神経管の間の骨隔壁が脆弱となり漏電が生じたものと思われた. また第2症例では内耳梅毒に伴う骨病変のため迷路骨包の導電性が変化したためと考えられた. 術前のCTで, 迷路骨包と顔面神経管を境する骨が不明瞭であつたり, 迷路骨包の骨に病的所見を認める症例では顔面神経刺激誘発の可能性を考慮しておく必要がある. 本合併症に対して現時点では該当するチャンネルを不活性にするしか方策はないが, 電極の構造的な改良やマッピングの工夫とともに症例によつては蝸牛と顔面神経との間に手術的に絶縁体挿入の策も考慮すべきと考えた.
著者
松田 圭二 牛迫 泰明 春田 厚 東野 哲也 安達 裕一郎 深江 陽子 堀之内 謙一 森満 保
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.187-192, 1992
被引用文献数
1

騒音レベル80-100dB (A), 中心周波数250Hz-4kHzの某新聞社輪転機室就業員24人の聴力レベルの変動を8年間にわたり追跡した。 24人中21人は聴力レベルに大きな変化なく, 年齢による生理的聴力損失にほぼ添う経過であった。 3人にc<sup>5</sup> dipがみられたが, 難聴の発現, 進展時期に関しては個人差が大きく, 一定の傾向はなかった。 4kHzと8kHzの聴力レベルは, c<sup>5</sup> dipのある者で各年ごとのばらつきが大きく, 聴力正常な者ではばらつきが小さかった。 また, 2例にc<sup>5</sup> dipの深さに左右差があった。 これらはこの個体が 「c<sup>5</sup> dipが始まり固定するまでの期間内」 にあること, 言い換えれば内耳損傷がなお現在進行していることを示すものと思われた。 また, 耳栓使用で騒音性難聴発生が抑制できることが改めて確認できた。