著者
牧野 智恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.10-18, 2000-03-31

本研究は, 未告知状況下におけるがん患者の家族と看護者のありのままの世界を理解し, 未告知状況下の患者・家族への看護の手がかりを見つけることを目的に, 現象学的方法論による面接を行った. 研究参加者は未告知がん患者の家族 (配偶者) 8名と, その受け持ち看護者8名である.<BR>現象学的方法論を用いた面接を行った結果, 以下のことが明らかになった.<BR>1. 未告知状況下におけるがん患者の家族の世界は, 告知後患者が悪い結果になるに違いないという <思いこみ (決めつけ)> から, 告知後の結果への <恐れ>, 告知後のかかわりへの <自信のなさ> の中でつらく, 苦しみ, 不自由な状況がみられた.<BR>2. 未告知状況下のがん患者の受け持ち看護者の世界は, 家族と同様 <思い込み><恐れ><自信のなさ> の要因の他に,<無関心><多忙> の要因のなかで, つらく不自由な状況が見られた.<BR>3. 参加者は面接の初めの頃, 1.2. のような状況であった. しかし, 現象学的方法論を用いた面接をすすめるにしたがって, 参加者は「~したい」気持ちと「~してはいけない」気持ちの中でつらく不自由な自分の姿に気づき始め, 自分の本来のあるがままの気持ちに素直に動き始める世界が見られた.