著者
瀬戸 清華 佐賀 香奈美 中田 弘子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.41-49, 2022-03

本研究の目的は,教育施設内の対面授業学年数別,高頻度接触面の汚染度実態と,次亜塩素酸水を使用した接触面の拭き取りの影響をATP 拭き取り検査法により明らかにすることである.実態調査の結果は,1・2学年対面授業日での施設内18 箇所の平均汚染度には有意な差はみられなかった.汚染度の高い箇所は,施設出入口の引戸の取っ手,講義室内のクレセント・照明スイッチ,トイレの内鍵などであった.汚染面の拭き取りでは,アルコール,次亜塩素酸水,水道水を用いた結果,3条件の拭き取り前後にはいずれも有意な汚染度の低下がみられた.拭き取り後の条件間の直接比較では,アルコールは次亜塩素酸水と水道水に比べて有意に低下し,次亜塩素酸水と水道水には有意な差はみられなかった.アルコールの入手の困難時では,次亜塩素酸水,水道水を用いた接触面の細菌を含めた有機物の除去の効果には差がみられないことが示唆された.
著者
塚田 久恵 川島 和代 曽根 志穂 石垣 和子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.125-134, 2018-03

地球規模の視野を持ち地域の課題を主体的に解決できる人材(グローカル人材)を育成するため,韓国を研修先とした新たな看護短期研修プログラムの開発を行った.3 年の準備期間を経て,平成27年度に8 日間の研修を実施した結果,様々な保健医療福祉施設の見学やフィールドワークを組み入れたこと,また,住民等との交流プログラムを積極的に導入したことが功を奏し,所期の研修目的と学習目標はほぼ達成できたと考える.一方,今後は,危機管理体制の整備や授業としての位置づけ,引率教員や現地スタッフの介在等についても考慮する必要がある.研修の円滑な実施には,研修先の選定や関係機関との調整について行政機関の協力を得ることも有効である.
著者
谷本 千恵
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.57-64, 2004-03

セルフヘルプ・グループ(以下,SHG)に関する研究を概観し,SHGの概念・定義,及びその援助機能・効果を検討するため,データベース(MEDLINE,医学中央雑誌,最新看護索引)の検索を中心とする文献研究を行った.SHGの定義として,専門職の関与がないことが重要な点であるが,実際には公的機関や専門職が支援していることが近年明らかになっており,これが混乱を招いている.SHGの援助機能については,メンバーの力づけ(empowerment)がその本質として考えられているが,実証的な研究はほとんどなされていないのが実状であり,今後,SHGの効果を検証するための方法論の確立が課題である.また,SHGがその援助機能を十全に発揮するためにはグループの自律性が重要であり,専門職が関わる場合は介入しすぎないことが大切である
著者
塚田 久恵 石垣 和子 辻村 真由子 都筑 千景 金川 克子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.77-88, 2013-03

韓国における保健所の機能と公衆衛生における看護職の役割について現地調査及び文献検討をした.韓国の公衆衛生は,日本と同様,保健所を中核施設として始まり,発展してきた.日本の保健所が主な対人支援機能を市町村に移管し,企画調整や指導研修機能に転換したのに対し,韓国では今日でも保健所が診療機能の保有,保健支所の配置,農漁村では看護職が保健診療員として一次医療を担っている.一方,韓国は,急激な高齢化と,生活習慣病の増加により国民医療費が急増している.そこで,国民健康増進法,地域保健法を制定し,保健所機能の拡大,地域保健を担う看護職の専門化に取り組んできた.さらに,2010年から保健教育を担う保健教育師の養成を開始し,2012年8月には地域保健法改正案を立法予告して保健所の機能を再編強化する方針を打ち出している.今後,韓国の保健所において,企画調整,情報管理などが法的に付加されることにより,益々機能が強化されると考える.(著者抄録)
著者
大木 秀一 彦 聖美
出版者
石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.7-18, 2013

英米の書籍(基本書)をもとに研究方法論としての文献レビュー(文献研究)について検討した.インターネットで書籍検索を実施した結果,システマティック・レビューやメタアナリシスなど高度な文献研究のみを扱った書籍を除外すると2012年9月現在,文献レビューに関する英文の書籍は13種類25冊であった.各書籍の最新版をもとに内容を検討し以下の知見を得た.書籍の起源は1998年と推定された.文献レビューは,一定の手順と技術に基づいて実施される,それ自体が独立した研究方法論と言える.優れた文献レビューには網羅性(情報量)と独創性の2側面が要求される.大学院生(学位論文の執筆)では必須の素養に位置付けられる.文献レビューのトレーニングは,文献検索(情報収集)能力,文献の品質評価能力,各種データの統合力,オリジナリティの創出力,学術的作文能力など,研究に必要な基礎的能力を習得する機会として有用だと思われる.(著者抄録)
著者
彦 聖美 大木 秀一
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2016

男性介護者は女性介護者と比較して,介護生活が破綻しやすいハイリスク集団である.増加する男性介護者が性別特徴による課題を有する集団として注目されたのは最近のことである.男性介護者の健康支援を考える場合には,社会学等で先行する多くの知見を加味する必要がある.男性介護者の健康は,個人レベルでは,性差,婚姻,経済状況,就業,生活習慣,心理状態,社会的サポート,社会的ネットワークなど,集団レベルでは,ジェンダー,性別役割,家族形態の変化,ワーク・ライフ・バランス,介護保険制度,ソーシャル・キャピタル,地域差などの様々な社会的要因が関与する.今回,これらの要因について現在までに得られている知見をまとめた.男性介護者に対する個人レベル・集団レベルでの包括的な健康支援は,介護者全体を取り巻くより本質的な問題の解決につながり,その結果,性別を問わず,介護者全体が健康に暮らせるような社会につながる可能性が期待できる.
著者
木村 賛
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.13-16, 2006-03

大学院看護科学論授業で問題となった,検証可能性というものについて,ヒトの進化過程に関する仮説の例を引いて考察した.
著者
杵淵 恵美子 高橋 真理
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-47, 2004
被引用文献数
1

人工妊娠中絶を経験した女性の心理経過を事例を通して明らかにすることを目的に,3名(21〜28歳.未婚2名)を対象に,中絶手術当日から術後4ヵ月まで,半構成的面接を継続的に行った(2〜4回).その結果,3名の女性の心理変化は一様ではなく,個別の経過を辿っており,心理的な危機状態に陥ることはなかった.人工中絶の経験は,女性たちにとってパートナーや夫との関係や自分自身を振り返る契機となっていた
著者
大永 慶子 浅見 洋
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.83-97, 2018-03

精神科病院で最期を迎える精神疾患患者に対する看取りケアを精神科病院の特性をふまえて明らかにするために,現象学的な質的記述的研究を行った.精神科病院で看取られた患者の受け持ちであった看護師に対し,看取りの経験についてインタビューを行った.その結果看取りの特性として【家族関係の希薄さ】【精神症状の減少】【訴えの曖昧さ】【長期にわたる関わり】【孤立する家族】の5 テーマが導き出され,看取りケアとして【家族の代わりになる】【身体ケアに重点を移す】【身体症状を見極める】【人生の伴走者として関わる】【家族の立場に立つ】の5 テーマが導き出された.さらにこれらの特性とケアのテーマから看取りにおける本質として【家族の代わりに最善の決定をする】【身体の苦痛緩和と安楽を実現する】【曖昧な訴えの本質をつかむ】【人生の最後まで寄り添う】【孤立する家族の苦悩に寄り添う】が導き出された.
著者
子吉 知恵美
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-57, 2010

本研究は,就学前において発達障害児を早期発見し,早期支援に結びつけるために専門職者の保護者への支援体制の実際と,就学へと継続支援していくために専門職者の経験年数が影響あるのか一考察を得ることを目的に行った.就学前の様々な支援体制の中で,保健センターでは乳幼児健診とその後のフォロー,教育委員会では平成19年度から都内全域で進められている就学支援シートに主に着目した.教育委員会と保健センター双方の調査結果から,保護者への支援体制を整える一方,関係機関がそれぞれで体制を整えるのではなく継続支援のための一貫した組織編成や専門職者による発達障害の情報提供などが保護者の認識を得るための条件との一考察を得た.また,専門職者の経験年数が継続支援のための支援体制に影響があるかということでは,就学支援シートの活用については,影響があると示唆されたが,それ以外については特に影響がないという見解を得た.(著者抄録)
著者
塚田 久恵 石垣 和子 辻村 真由子 都筑 千景 金川 克子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.77-88, 2013

韓国における保健所の機能と公衆衛生における看護職の役割について現地調査及び文献検討をした.韓国の公衆衛生は,日本と同様,保健所を中核施設として始まり,発展してきた.日本の保健所が主な対人支援機能を市町村に移管し,企画調整や指導研修機能に転換したのに対し,韓国では今日でも保健所が診療機能の保有,保健支所の配置,農漁村では看護職が保健診療員として一次医療を担っている.一方,韓国は,急激な高齢化と,生活習慣病の増加により国民医療費が急増している.そこで,国民健康増進法,地域保健法を制定し,保健所機能の拡大,地域保健を担う看護職の専門化に取り組んできた.さらに,2010年から保健教育を担う保健教育師の養成を開始し,2012年8月には地域保健法改正案を立法予告して保健所の機能を再編強化する方針を打ち出している.今後,韓国の保健所において,企画調整,情報管理などが法的に付加されることにより,益々機能が強化されると考える.(著者抄録)
著者
寺井 梨恵子 丸岡 直子 林 静子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-22, 2017-03

本研究の目的は,看護師の看護場面における視線について眼球運動測定を行った先行研究の動向を明らかにし,今後の課題を検討することである.Cooper の統合的文献レビューの方法を参考に文献検討を行った.医学中央雑誌,CINAHL,PubMed にて,「看護」,「注視」,「眼球運動」をキーワードとして検索を行った結果,国内文献22 件,海外文献10 件が分析対象となった. 結果,国内では静止画を提示した文献が多く,海外ではシミュレーション教育に用いたものが多かった.測定項目は国内においては「注視時間」を測定しているものが最も多かった.注視の定義は統一されておらず,今後,検討していく必要が示唆された.視覚情報を測定することでの看護師への教育的効果については明らかにされていなかった.視覚情報の取り込みは臨床経験によって違いがあると述べている文献が多かったが,一方で,違いがないものもあった.
著者
今井 美和 吉田 和枝 大門 真理那 中西 愛海 山越 杏奈
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-24, 2019-03

HPV ワクチンの接種が推奨されていた世代に属する大学1,2年生女子の子宮頸がんとその予防に関する知識,子宮頸がんと子宮頸がん検診に対する態度の状況を把握することを目的とし,2014 年度に質問紙調査を行い,393 人の結果について分析した.HPV ワクチン接種者は62.3% で,子宮頸がん,HPV ワクチン,子宮頸がん検診の用語は知っていても,子宮頸がんとその予防に関する詳細な内容の理解は十分ではなかった.子宮頸がんに罹患する可能性と子宮頸がん検診の有益性を認識していた者は10% 台で,20 歳からの子宮頸がん検診受診の意識が非常に高かった者は18.6% であった.子宮頸がんとその予防に関する教育を受けた者は29.5%,20 歳からの子宮頸がん検診の受診を周囲から勧められた者は8.4% であり,10 代後半女性の子宮頸がんとその予防に関する理解と認識を深めるために,養護教諭や医師などの専門職がこれらの情報を積極的に提供することが必要であると考えられた.
著者
高窪 美智子 西村 真実子 津田 朗子 関 秀俊 田屋 明子 井上 ひとみ 林 千寿子
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-20, 2005-08

育児における暴力・暴言の実態と背景要因を明らかにすることを目的に,3ヵ月・1歳半・3歳時健診を受診した母親を対象にアンケート調査を実施し,537名より有効回答(36.1%)を得た.このうち,「夜泣き」など(3ヵ月児)・「いたずら」など(1歳半児)・「お漏らし」など(3歳児)のいずれかの育児場面で困難を伴ったことがあると回答した376名(平均年齢30.0±4.1歳)のうち,思いきり叩いたり暴言を繰り返し言うことが「よく」または「時々」あると回答した者は156名であった.こうした「虐待イエロー」状態の母親は他の母親と比べ,実父との相性が良くない,妊娠を望んでいなかった,もともと子どもが嫌い,わが子が好きになれない,と回答した者が有意に多かった
著者
今井 美和 吉田 和枝 大門 真理那 中西 愛海 山越 杏奈
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-24, 2019

HPV ワクチンの接種が推奨されていた世代に属する大学1,2年生女子の子宮頸がんとその予防に関する知識,子宮頸がんと子宮頸がん検診に対する態度の状況を把握することを目的とし,2014 年度に質問紙調査を行い,393 人の結果について分析した.HPV ワクチン接種者は62.3% で,子宮頸がん,HPV ワクチン,子宮頸がん検診の用語は知っていても,子宮頸がんとその予防に関する詳細な内容の理解は十分ではなかった.子宮頸がんに罹患する可能性と子宮頸がん検診の有益性を認識していた者は10% 台で,20 歳からの子宮頸がん検診受診の意識が非常に高かった者は18.6% であった.子宮頸がんとその予防に関する教育を受けた者は29.5%,20 歳からの子宮頸がん検診の受診を周囲から勧められた者は8.4% であり,10 代後半女性の子宮頸がんとその予防に関する理解と認識を深めるために,養護教諭や医師などの専門職がこれらの情報を積極的に提供することが必要であると考えられた.
著者
今井 美和 吉田 和枝
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-62, 2018-03

HPV ワクチン接種が推奨されていた世代の高校2,3 年生女子を対象として,子宮頸がんとその予防に関する知識,子宮頸がんと子宮頸がん検診に対する態度の状況を把握するため,2014 年度にヘルスビリーフモデルを用いた質問紙による調査を行い,179 人の結果について分析した.HPV ワクチン接種者は66.5% であった.半数以上の者は子宮頸がん,HPV ワクチン,子宮頸がん検診の用語,子宮頸がんの発症年齢を知っていたが,HPV の用語,子宮頸がんの症状,HPV,HPV ワクチン,子宮頸がん検診に関する知識のすべての項目については半数に満たなかった.子宮頸がんに罹患する可能性と子宮頸がん検診の有益性を認識していた者は20% 前後で,20 歳からの子宮頸がん検診受診の意識があった者は24.6% であった.子宮頸がんとその予防に関する教育を受けた者は38.5%,20 歳からの子宮頸がん検診の受診を周囲から勧められた者は15.1% であった.それ故に,子宮頸がんとその予防に関する情報を女子高校生に合った方法で提供して理解と認識を深める必要があると考えられた.
著者
松井 久美 上田 桃子 高本 奈瑠美 田村 幸恵 川島 和代
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.103-110, 2017-03

本研究の目的は,認知症高齢者のこれまでの人生や現在の思い,今後の希望について聴き取り,その結果を【メモリーブック】として媒体にまとめ,本人やケアを行うスタッフと共有し,生活に反映させ,その効果を明らかにすることである.2015 年8月から9月までの間,石川県内のグループホームに入所する6名の認知症高齢者を対象に,半構成的面接法により聴き取りを行い,【メモリーブック】を作成した.時系列に,実施前,聴き取り期間,【メモリーブック】完成時,2週間後の4段階に分け,メモリーブック作成過程における認知症高齢者の客観的な変化を記録し,認知機能や意欲の推移についてスケールを用いて測定した.この結果,【メモリーブック】を用いた関わりは,認知機能の向上,意欲の向上につながることが推察された.また,これまでの人生(過去),現在,未来に焦点を当てた関わりは,認知機能の低下を抑止し, 機能維持に効果的であることが示唆された.