著者
犬塚 康博 イヌズカ ヤスヒロ INUDZUKA Yasuhiro
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.28, pp.228-236, 2014-03-30

『志段味古墳群』(2011年)は、名古屋市教育委員会が計画する「歴史の里」のために実施された発掘調査等の報告書である。同書には、リテラシーの過失が複数認められた。ヘーゲルを参照するとき、同書の意味は「経験と歴史の断絶」にあることが仮説され、文化財保護の断絶、諸学との断絶に概括できるいくつかの徴証がこれを支持した。区画整理によって、地域の生活世界の経験と歴史が物質的、精神的に断絶されてゆくなか、古墳群を再編するのが「歴史の里」である。『志段味古墳群』の断絶性がこれを拘束し、さらに神話的世界の「尾張氏」が援用されてこの断絶を糊塗する。ここに、歴史のサブカルチャー化が予感されるとともに、天皇制を内面化した敗戦前の歴史の再演もが想起された。『志段味古墳群』のいわゆる「非科学的な考古学」は、現在の安倍政権等による、対中国を頂点とした戦争機運醸成ならびに戦争体制整備としての中央集権強化と同期するのである。
著者
犬塚 康博 イヌヅカ ヤスヒロ INUZUKA Yasuhiro
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.18, pp.15-25, 2009-03

新京動植物園は、満洲国の首都新京特別市にあった。上野動物園園長古賀忠道の指導のもと1938年に着工され、仙台動物園園長を辞した中俣充志が園長に就いた。広大な敷地に設けられた同園は、動物園と植物園の総合という分類学展示から生態学展示への転換、動物展示における無柵放養式の全面的採用、動物の北方馴化、教育と研究の主導と娯楽の後退、産業への応用など、斬新なテーマを多くもりこんで計画された。指導に際し古賀が「あまり日本の動物園のまねはしないで下さい」と主張したのに即せば、同園は〈日本ならざる未来〉であったと言える。無柵放養式と北方馴化はドイツのハーゲンベック動物園をモデルとしており、狭義には〈極東のハーゲンベック〉を目指したと言うこともできるだろう。同園は完成することなく1945年に終焉するが、北方馴化のテーマは北海道の動物園へ、無柵放養式のテーマは多摩動物公園での本格的採用へと、それぞれ継続した。
著者
犬塚 康博
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.18, pp.15-25, 2009-03

新京動植物園は、満洲国の首都新京特別市にあった。上野動物園園長古賀忠道の指導のもと1938年に着工され、仙台動物園園長を辞した中俣充志が園長に就いた。広大な敷地に設けられた同園は、動物園と植物園の総合という分類学展示から生態学展示への転換、動物展示における無柵放養式の全面的採用、動物の北方馴化、教育と研究の主導と娯楽の後退、産業への応用など、斬新なテーマを多くもりこんで計画された。指導に際し古賀が「あまり日本の動物園のまねはしないで下さい」と主張したのに即せば、同園は〈日本ならざる未来〉であったと言える。無柵放養式と北方馴化はドイツのハーゲンベック動物園をモデルとしており、狭義には〈極東のハーゲンベック〉を目指したと言うこともできるだろう。同園は完成することなく1945年に終焉するが、北方馴化のテーマは北海道の動物園へ、無柵放養式のテーマは多摩動物公園での本格的採用へと、それぞれ継続した。
著者
犬塚 康博
出版者
関西大学
雑誌
関西大学博物館紀要 (ISSN:13414895)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.283-292, 2004-03-31
著者
浜田 弘明 金子 淳 犬塚 康博 横山 恵美 森本 いずみ 平松 左枝子 清水 周 橋場 万里子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「鶴田文庫」は、博物館学者・故鶴田総一郎旧蔵の博物館及び博物館学に関する蔵書・資料群で、その総量は段ボール箱約250箱に及び、桜美林大学図書館が所蔵している。本研究では、最も公開が望まれている国内外の書籍に重点を置き、約13,000点に及ぶ資料の目録化を実現した。合わせて、鶴田の業績を明らかにしつつ、日本における戦後博物館学の発展・展開過程を検討した。目録化された資料は、桜美林大学「桜美林資料展示室」の「鶴田文庫コーナー」で公開している。