著者
岡田 美智男 鈴木 紀子 石井 和夫 犬童 早苗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声
巻号頁・発行日
vol.97, no.338, pp.37-43, 1997-10-23
被引用文献数
2

日常での雑談などにおける発話には, (1)「意味を伝える」機能と, (2) お互いの発話に対して「意味を与えあう」機能とがいつも同居している. あるいは, 「伝えようとして伝わること」と相手の応答との重なりの中で「事後的に意味や役割が出現すること」とが同居している. これまでの行為遂行的な, 情報伝達的な側面を重視した対話研究では, 「伝えようとして伝わること」について主に検討されており, 後者の側面に対しては十分に議論が尽くされていない. 本稿では, 様々な発話の重なりの中で新たな意味を発現させうる「多声性を帯びた発話」の存在に着目し, その多声性に富んだコミュニケーション, すなわち「雑談」の成り立ちについて考察する. また, この多声的な関わりや間身体的な場の形成に着目しながら, 共同想起対話におけるユニゾン的な同時発話の現象の意味について考える.