- 著者
-
犬飼 裕一
- 出版者
- 日本社会学理論学会
- 雑誌
- 現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.14-27, 2015 (Released:2020-03-09)
科学をめぐる語りは、社会学においても決定的な役割を果たしてきた。「社会」について科学的に語ることは長年にわたって重視されてきた。ただし、社会について語る社会科学者自身については多く語られてこなかった。「社会科学者」は、しばしば透明な存在であり、「社会」から距離を取って「客観的」な立場で論じていると主張してきた。本稿の課題は、その種の「語り」や「主張」を自己言及として問い直すことである。それは「客観性」を自称しながら、実際には「社会」に対して大きな影響を及ぼしている社会科学の現状を、問い直すことでもある。「社会」について論じる当人はどうなのか。自己言及的に問うことによって、自己言及を排した「科学」とは異なった形の議論が可能になる。ただし、それはたんなる暴露学ではない。むしろ、問題は社会科学全般について、それが「社会」に対して果たしうる役割について問い直すことに向かう。それは社会についての「語り」そのものを主題とする社会修辞学なのである。