著者
猪八重 拓郎 永家 忠司 外尾 一則
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.541-546, 2009-10-25
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究の目的は、駅を核とした街路網形成の過程と道路網のまとまりをスペース・シンタックス理論の応用により明らかにすることにある。対象は佐賀駅及びその周辺市街地であり、まず、明治32年から平成17年までの7時点の地図よりGISを用いてアクシャルマップを作成した。次に、佐賀駅を中心とした場合のシステム境界の設定を逐次的に行い、各Stepにおけるインテグレーション値を算出することにより、経年的に佐賀駅を中心とした街路網がどのような中心性を持ち形成されてきたかを明らかにした。さらに、インテグレーション値より都市エントロピー係数を算出し、佐賀駅を核とする道路網のまとまりについて分析を行った。その結果Step3における街路網がまとまりが強いことがわかり、この範囲に含まれる建物用途別集積とStep3以降システムのインテグレーション値との関係性から、これらの建物集積がより広域なシステムに依拠していることが明らかとなった。このことは、佐賀駅を核とする道路網のまとまりと市街地の利用としての建物用途の乖離を示す結果となった。
著者
牝小路 諒 猪八重 拓郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.814-820, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
9

炭鉱都市とは石炭産業に関連して栄えた都市で、炭鉱を中心に集落が形成された都市であり、エネルギー革命による石炭産業の撤退以降、人口減少に代表される様々な問題が発生した。しかしながら、石炭産業という一定の産業の下、都市構造が形成されたわけであるが、石炭産業撤退後の変容は一様ではない。そこで本研究では、まず炭鉱都市を人口、産業に関連する指標の変化を価値基準において類型化し、数値的および時系列的にその変容を考察する。また、スペースシンタックス理論を用いて道路網および主要施設の時系列的変化から都市構造の変化を捉えることで、類型化されたパターンと都市構造の関係性を道路網構成の観点から明らかにすることを目的とする。
著者
谷崎 竜也 猪八重 拓郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.266-273, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究では、コンパクト化政策の一つである立地適正化計画が策定されている都市である熊本市を対象とし、都市のコンパクト化のシナリオの違いが、どのようにアクセシビリティに影響を及ぼすのか明らかにすることで、都市のコンパクト化のより望ましい方向性をアクセシビリティの面で評価することを目的とする。基準年を2015年とした2040年までの人口を100m×100mのメッシュ単位で推計し、その後、現状、趨勢型、市街化区域集約型、居住誘導区域集約型、拠点集約型の計5つのシナリオを作成した。その結果、コンパクト化を行ったシナリオは徒歩、徒歩+電車、徒歩+バスにおいて、ACの面で良好な結果を示し、現状の水準を維持できることが明らかとなった。
著者
野中 健志郎 猪八重 拓郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.457-463, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究の目的は,住環境評価の視点から判別分析を用いて居住誘導区域が設定された場所の要件を明らかにすることにある.はじめに,線引き都市を対象に居住誘導区域の設定状況を市街化区域の人口密度と居住誘導区域に対する市街化区域の縮小率を用いて分析し,クラスター分析により6つのtypeに分類した.その上で,そのtypeを基に代表都市として土浦市,鶴岡市,箕面市,熊本市を選出した.さらに,住環境評価の視点から居住誘導区域の設定の有無を識別するための判別モデルを構築した.最後に,構築した判別モデルを縮小率の異なる他都市に適用した.結果として,判別モデルにより縮小率の高低を住環境指標の観点から一定程度説明することができた.
著者
永家 忠司 外尾 一則 猪八重 拓郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.43-48, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究の主たる目的は防犯環境設計における「監視性」、「領域性」を対象にスペースシンタックス理論を基に都市空間の防犯性能を考察した上で、スペースシンタックス理論におけるインテグレーション値と街頭犯罪の発生および警察の犯罪リスク認知空間との関係を分析することである。街頭犯罪の発生と警察の犯罪リスク認知空間の空間的分布を把握するため、アンケート調査を地域住民および警察官に対し行い、GISデータベース化を行った。本研究の成果は1.街頭犯罪の発生と警察の犯罪リスク認知空間の空間的分布状況を明らかにしたこと、2.都市全体から見たアクセシビリティの高低が容易に判断できるアクシャルマップを作成することにより、人通りや見通しがもたらす潜在的な監視性や領域性の推定を行ったこと、3.街頭犯罪の発生および警察の犯罪リスク認知空間とインテグレーション値の高さにおいて関係性があることが明らかとなったことである。