著者
金 利昭
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.91-96, 2009-10-25
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

本研究は、自転車利用者の満足度を用いて自転車走行環境を評価し、自転車レーンのサービス水準を設定した。具体的な成果は第一に、自転車レーンにおける満足度評価の安定には10回程度の実走行が必要である。第二に、交通環境と満足度の関係を分析し、満足度モデルを構築した。第三に、構築した満足度モデルを用いてさまざまな道路状況における自転車レーン走行環境のサービス水準を設定した。これにより、利用者の満足度指標を用いた自転車レーンの評価を可能とした。
著者
杉田 早苗 小林 宣洸 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.751-756, 2010-10-25
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

本研究では、ホームレスにとって重要な場所である寝場所の移動を把握し、またその移動と様々な形態をとる排除との関係を考察することを目的とする。川崎市のホームレス支援NPOが所有するデータを個人別データベース化し、寝場所の移動の実態と傾向を把握するとともに、ヒアリング調査と資料調査からホームレスの排除事例と排除された場所の現在の利用状況を検証し、移動と排除の関係を分析した。結論は以下の3点である。1.川崎市のホームレス支援NPOから提供を受けたデータを個人別データベースとして構築し、寝場所の移動の実態を明らかにした。2.寝場所を移動している人は全体の60%程度であり、また河川では一定の場所で野宿を継続する人が、公園や道路、駅では移動を繰り返しながら野宿する人が多いことがわかった。3.排除行為の発生は公園、道路、駅にある寝場所で起こることが多く、河川では少ない。このことが結論2の移動と固定と関係あることが推測される。
著者
坂井 文
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.643-648, 2008-10-15
被引用文献数
6

景観法の活用を促すうえで、自治体への技術的なサポートや、住民参加のためのアドバイスを提供するシステムの構築について議論する必要があると考えられる。本論においては、良好な景観を形成する開発計画のデザイン誘導を試みる英国中央政府の外郭団体である建築・都市環境委員会(Commission for Architecture and Built Environment)の活動とその役割に着目しながら、特に、その組織の構成と、地方自治体のデザイン政策の指導方法、またデザイン審査の方法について明らかにし、日本の景観法の活用をすすめるサポート組織の構築と、サポート手法について考察することを目的とする。本論を通して、中央に情報を集中させ専門的に分析し情報公開することによって、情報の共有化が図られ、各自治体の負担を軽くしていることがわかった。同時に、各地の状況に対応したアドバイスを行う地域組織の存在と、そのネットワーク化による横の連携を構築することにより、現場における適切な対応や、地域間での情報の共有が可能となることが明らかとなった。
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.39, pp.553-558, 2004-10-25
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。(1)事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。(2)りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後 30年集計)を GREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。(3)これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.901-906, 2009-10-25
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究の目的は、1900年から1930年頃までのイギリス近代都市計画成立期における都市協会運動の性格について、当時の都市協会論と先導的な都市協会の活動の展開を明らかにすることで、理解を深めることである。当時の都市協会論からは、都市協会の役割が行政の補完であり、また地方分権の促進者であったことが明らかになった。また、リヴァプール都市協会、ロンドン協会、バーミンガム都市協会の活動の変遷からは、この時代における行政と都市協会との関係の変化が、都市協会運動の性格を決定付けたことが示唆された。
著者
伊藤 将司 森本 章倫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.847-852, 2010-10-25
参考文献数
10
被引用文献数
2

宇都宮市は、魅力的で持続可能な都市づくりのために、LRT導入を目指して先進的な取り組みを実施している。LRT導入においては、市民意向が重要視され、市民合意形成を図るためのわかりやすい情報を提供が重要な課題である。本研究は、わかりやすい情報提供ツールであるイメージ動画を活用した市民の意識変容を把握するとともに、その知見をもとに合意形成手法の提案を行ったものである。市民の意識変容では、イメージ動画を見る前と後での意識の違いを分析し、イメージ動画が市民の認知度や理解度を向上させ、賛否の態度形成に有効であることが分かった。また、合意形成手法では、イメージ動画を用いた情報提供を行いながら、広く説明する、深く議論する、広く深く議論し方向性を導く3つの合意形成のステップを提案した。
著者
石倉 智樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.565-570, 2010-10-25
参考文献数
14

パンデミックは人類の歴史上繰り返し発生し、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらしてきた。近年でも、高病原性インフルエンザ(A/H5N1型)の流行など、世界的な感染症流行の拡大が生じている。パンデミックが生じると、都市の社会機能や経済活動の混乱が起きる。パンデミックが発生した際には、ワクチンの開発には最低でも3~6ヶ月はかかると言われている。それまでの間、感染拡大を抑制または遅延させるための有効な政策として、公共交通の停止や学校閉鎖といった人々の活動制限が考えられる。一方でこれらの政策は、経済活動の縮小を伴うものであり、行うタイミングを誤れば効果が半減するだけでなく、経済活動へ大きな損失を与える。すなわち、活動制限による適切な政策効果を得るためには、政策実施を適切なタイミングを把握することが求められる。そこで、本研究は、パンデミック時の、特に初期の段階、すなわちワクチン生産等の医療対策が整っていない段階において、公共交通の停止や地域間境界閉鎖のような水際対策などの社会経済活動制限を行うか否かの判断、および活動制限の最適な実施タイミングを導出する方法論を提案する。
著者
岩元 俊輔 木方 十根
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.823-828, 2009-10-25
被引用文献数
3

鹿児島県は太平洋戦争末期において小都市に至るまで戦災を被った。本論は、こうした鹿児島県下の地方小都市の戦災復興都市計画における広場の計画に着目した研究である。その目的は広場の計画と実施状況を把握することでその特色を明らかにすること、実施された広場の現況および現況に至る過程での改修・改変の実態を明らかにすることを通して、都市計画資産の継承について問題提起することである。本報告で明らかとなったことは、鹿児島県の小都市では、ロータリーや親水空間などが計画され、都市美の形成を意図した広場が実現したこと。しかしながら、当初計画では美観や親水性に考慮して設けた広場が、交通優先の機能重視の改変によって、その空間的価値や意味を喪失し、現在では市民の空間としての価値が認識されることのない状況にあること。以上である。
著者
窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.715-720, 2009-10-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

東京都は新たな路上生活者支援策として、「地域生活移行支援事業」を2004年より四年間行った。移行事業は、就労支援を主目的とした段階的な支援という従来の方法ではなく、路上から借り上げアパートすなわち地域生活への移行を行うもので、アメリカで広まったハウジング・ファーストの考え方だといえる。これまでの日本の住宅政策の経緯と、近年の急激な社会構造の変化、経済的状況の悪化をふまえれば、日本でもハウジング・ファーストの考え方を導入する必要がある。そのために、1)低家賃住戸賃貸事業における公共性への社会的合意、2)都市計画における安定した住環境の確保、3)当事者支援を専門とする民間組織の支援、4)ホームレスという認識の社会的共有、について議論を深め社会的な認識を共有することが、本格的な導入につながる。
著者
デンベレ ムッサ 古山 正雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.37, pp.463-468, 2002-10-15
参考文献数
16
被引用文献数
2

19世紀後半のフランスによる植民化は、西アフリカ都市に根本的な影響を与えたと同時に、近代的都市計画の出発点をもたらした。西アフリカのプレ・コロニアルな都市はフィジカルやメタフィジカルな記号によって構成され、住民にとって生活規約や伝統的生活の社会的意味を持つ空間である。本研究はマリ共和国の植民地都市であるジェンネやバマコにおける都市発展過程の考察を通して、伝統的都市空間がどのように植民地化による変容と近代化の影響を受けたかを明らかにした。プレ・コロニアルとコロニアル都市の比較研究により、マリの都市空間が物理的変化を受けた結果生じた社会構造の変化を考察した。こうした都市の物理的変化によって人と空間の関係が失われたことで伝統社会のコミュニケーションが変容したことを明らかにする。
著者
猪八重 拓郎 永家 忠司 外尾 一則
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.541-546, 2009-10-25
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究の目的は、駅を核とした街路網形成の過程と道路網のまとまりをスペース・シンタックス理論の応用により明らかにすることにある。対象は佐賀駅及びその周辺市街地であり、まず、明治32年から平成17年までの7時点の地図よりGISを用いてアクシャルマップを作成した。次に、佐賀駅を中心とした場合のシステム境界の設定を逐次的に行い、各Stepにおけるインテグレーション値を算出することにより、経年的に佐賀駅を中心とした街路網がどのような中心性を持ち形成されてきたかを明らかにした。さらに、インテグレーション値より都市エントロピー係数を算出し、佐賀駅を核とする道路網のまとまりについて分析を行った。その結果Step3における街路網がまとまりが強いことがわかり、この範囲に含まれる建物用途別集積とStep3以降システムのインテグレーション値との関係性から、これらの建物集積がより広域なシステムに依拠していることが明らかとなった。このことは、佐賀駅を核とする道路網のまとまりと市街地の利用としての建物用途の乖離を示す結果となった。
著者
満田 真史 樋口 秀 中出 文平 松川 寿也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.553-558, 2009-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

本研究は、地方都市の中心市街地で急増する平面駐車場について、駐車場問題の普遍性を明らかにすると共に、今後の駐車場マネジメントに向けた知見を得ることを目的とする。まず、シェイプアップマイタウン計画策定20市を対象に、中心部(1970年DID)内の平面駐車場の実態を把握した。次に、その計画内容ならびに自治体の認識と対応を検討した。さらに、20市と同様に、新法による中心市街地活性化基本計画認定53市の駐車場に対する認識と対応策を把握した。その結果、駐車場について詳細な情報を把握している都市は殆ど存在せず、対応策についても時間貸し駐車場に重点が置かれていることが明らかになった。また、現段階で駐車場施策の効果は小さいことが把握できた。
著者
垣内 恵美子 奥山 忠裕 寺田 鮎美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.403-408, 2009-10-25
参考文献数
8
被引用文献数
1

社会的便益を過小評価されがちな美術館活動について、その受益者及び社会的便益をある程度客観的に推計することにより、その社会的便益にふさわしい適切な支援のあり方を検討することを目的として、岡山県倉敷市にある大原美術館を事例として取り上げ、CVM(仮想評価法)を用いた市民調査を実施した。結果として、大原美術館が、近隣地域(倉敷市及び岡山市)の市民に与える総便益は年間約6億円と推計され、将来世代のためといった遺贈価値、他の人が利用しているからといった代位価値、誇りに思うといった威信価値、都市の魅力を高めるなどの非利用価値が大きいことがわかった。また、WTP(支払意志額)に影響する変数は、大学院レベルの学歴及び所得、大原美術館への総訪問回数となった。また半数を超える市民が支払意志を有することから地方自治体による一定程度の支援は正当性を有すると考えられるが、同時に、相対的に高いWTPを有する一部の市民が存在することから、別途これらの人々の支援を得るスキームを考えることも必要であろう。
著者
川崎 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.25-33, 2008-10-15
参考文献数
33
被引用文献数
4

本研究は、都市計画決定の処分性と計画裁量に関する判例の状況について整理した上で、伊東市都市計画道路変更決定事件東京高裁判決に関する考察を行うことを通じて、今後の都市計画訴訟をめぐる議論に基礎資料を提供することを目的とするものである。本件判決は、基礎調査の結果が客観性、実証性を欠くために現状の認識及び将来の見通しが合理性を欠くにもかかわらず、これに依拠して都市計画が変更決定されたとして、その違法性を判示した。本研究では、本件判決につき、行政庁が都市計画変更決定に関する計画裁量を行使する上での判断過程について密度の高い統制手法を採ったこと、行政庁に適正調査義務とでも言うべき法的義務を義務づけたこと、行政庁に主張立証責任を要求したことに着目して考察した。最後に、本件判決を踏まえつつ、都市計画訴訟制度の再構築に向けた検討課題として、都市計画に関する策定手続を充実させた上で、都市計画決定又は変更決定自体を争えることにする代わりに、その後にはその違法主張を認めないという都市計画に特有の訴訟制度を創設することが検討されるべきであることを提言するとともに、都市計画制度の再構築に向けた検討課題として、基礎調査の充実と都市計画決定に至る判断過程の客観的明示の義務化が検討されるべきであることを提起した。
著者
北浪 健太郎 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.85-90, 2003-10-25
参考文献数
4
被引用文献数
5

わが国最大規模の開発面積を誇る多摩ニュータウンも既に入居開始から30年が経過した。この多摩ニュータウンは高度経済成長期に「東京で働く勤労者向けに良質な住宅を大量に供給すること」を目的として出発したが、その後、時代の要請に対応しながら役割を見直し、今日では様々な機能を取り込んだ複合都市として整備されている。そして今、東京都施行の新住宅市街地開発事業が終了する等ニュータウンの開発に関する事業はいよいよ終息期をむかえようとしている。しかしながら一方では、初期に建設された住宅や施設の老朽化と居住者の急速な高齢化が進み、建築物の更新、増加する単身老人世帯への対応、学校の余剰・廃校問題等、新たな課題が顕在化しつつある。また、近年では転出者数が転入者数を上回る状況が続いており、都市機能の維持・成熟という観点でも陰りが見受けられる。 こうした事態の背景には、そもそもニュータウン入居者が一定の年齢層に偏っており、結果としてニュータウン全体の人口構成も「団塊の世代」(第1世代)と「その子供世代」(第2世代)に偏在していることがあるが、加えてこの第 2世代が近年、世帯分離のタイミングをむかえていることも状況を複雑にしていると考えられる。新しい課題に対応し、多摩ニュータウンを今後とも継続的に成長ないし成熟化させてゆく具体的な施策を検討するためにはこの第2世代の動向を的確に把握することが非常に重要である。 しかしこれまで地方都市の分析や世帯主に関する研究は行われているが、大都市ニュータウンの第2世代の住み替えを対象とした研究は実態把握の困難性もあってほとんど行われていない。そこで本研究では、第2世代が世帯分離後どのように住み替えを行っているのかを明らかにするために、アンケート調査を実施し、 (1)第1・第2世代の同別居状況 (2)第2世代の世帯分離後の住み替え先の傾向 (3)現在も第1世代と同居している第2世代のニュータウンへの定住意向、居住性の評価等 を明らかにし、ニュータウンで育った第2世代の住み替えの動向を把握することを目的とする。 調査方法としては、多摩市内のニュータウン区域には 59町丁目が存在するが、入居開始後に町名変更・編入が行われた町丁目並びに未だ人口定着が浅い人口 100人未満の町丁目と土地区画整理事業区域内の町丁目を除くと、結果的に19町丁目を抽出し、アンケートは各戸のポストへ投函・郵送回収で行った。また、アンケート記入対象者と主な質問内容は記入者の属性と同別居状況、別居の場合はその理由を聞いた上で、既に別居している場合は現在の世帯主(第1世代)に対して第2世代の住み替え先を、同居している場合は18歳以上の第2世代に対してニュータウンの居住性等を問う質問に答えて頂くように設定した。 分析方法としては、 (1)把握できた724人の第2世代に対して数量化_III_類を用いて類型化し、同別居状況についての特徴を導く。 (2)別居者の住み替え先と、多摩市全体の転出者の転出先を比較する。また「年代」と「別居理由」から特徴を導く。 (3)第1世代と同居している第2世代のニュータウンの居住性評価の特徴を分析する。 調査結果としては、 (1)第2世代の別居時期は、住宅所有関係で違いがあり、「借家」の方が「持家」に比べて別居する時期が早い。 (2)多摩市の転出者は一般に「23区以外の東京都」に多く移り住んでいるのに対して、第2世代は、「周辺県」や「都内23区内」にも多く移り住んでいる。 (3)年齢が「20代」「30代」の第2世代で「一人暮らしを希望」して別居した人は「都内 23区内」に住み替える割合が高く、特に多摩ニュータウンまで直接乗り入れている京王、小田急線沿線に住み替えている人が多い。 (4)現在も同居している第 2世代のニュータウンに対する愛着や住み良さの評価は高い。特に「10代」「40代」の居住性評価は非常に高い。しかし「20代」「30代」になると都心の利便性等との比較において否定的な評価が増加する。 また、同居第2世代の定住意向は多摩市政世論の結果よりも低い水準であり、今後も引き続き「20代」「30代」となった第2世代が多摩ニュータウンから離れて行く可能性は高い。その際にはニュータウン区域から「都内23区内」、「京王線小田急線沿線」への住み替えが起こる可能性が極めて高いことがわかった。
著者
姥浦 道生 小泉 秀樹 大方 潤一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.37, pp.811-816, 2002-10-15
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究においては、ドイツ・ノルトライン-ヴェストファーレン州において大型小売店舗の建設誘導計画を通じた立地コントロールの実態を調査・分析している。結論としては、まず立地コントロール規準の適合性の判断に関し、判断資料となる数値の導出過程が明示的ではないこと、及び規準が抽象的なため主体によって適合性の判断基準が異なることが、明らかになった。また、これらの帰結として異なる結論の意見書が出されていたが、それらを専門的観点から調整する場は存在していないことが明らかになった。さらに、一方ではこの立地コントロール規準が、実質的には政治的な裁量の枠を限定していることも明らかになった。
著者
高橋 正義 十代田 朗 羽生 冬佳
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.571-576, 2003-10-25
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究は、戦後まもなく制定された観光関係特別都市建設法(以下、「国観法」)及び国観法制定都市に着目し、まず、(1)国会での議論から戦後復興期の観光政策の中で国観法並びに国観法制定都市がどのように位置付けられていたのか。を把握した上で、制定都市では、(2)法制定前後の時期に観光都市建設を目指してどのような計画が描かれたのか。さらに、(3)その構想実現のためにどのような具体的整備計画が立てられ、その後どのように変遷していったのか。の3点を明らかにすることを目的としている。資料としては、国会議事録、計画案、関連新聞記事、市史、関連文献・研究等を用いている。<BR> その結果、以下のことを明らかにしている。まず(1)国会での議論から観光政策が縦割り行政を越えられず都市計画行政の枠組みにはめられていったこと、また発言内容を総合すると、各都市の個別法を支える基本法あるいは一般法を制定すべきだという議論が議員からなされたが、政府はそれに対して都市計画法の改正での対応を示唆するなど否定的な見方をしており、結果的に国庫からの助成措置もほとんどなされることはなかったことを確認している。次に(2)各都市の計画内容から、現状認識を6項目、コンセプト4タイプ、主要目標14項目に大凡まとめている。この内、都市内部の条件や計画コンセプトに共通性がある都市間では、主要目標にも共通性がみられる傾向がある。一方で、国が推進する広域的な都市の位置付けよりも、都市内部に目を向けた計画となっていることが読み取れる。さらに(3)具体的な方策を見ていくと、法案提出以前から観光都市建設のビジョンのある都市では方策の中に観光要素が盛り込まれ、ビジョンを持っていなかった都市では既存の制度に則った計画づくりが行われているという史実を確認している。例えば、別府では、構想実現のため計画を既存制度に当てはめることが行われ、その後、国策の重点が工業開発へと変わると方向転換を余儀なくされ、結局、多くの事業が実施されることなく現在に至っている。<BR> 以上総括すると、国側における制度的裏付けの欠落、都市側での計画技術(構想力、実現力)の不足から国観法は機能しなかったと考えられる。<BR>
著者
天野 裕 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.733-738, 2008-10-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は、迅速かつ大量に住宅供給を可能とした復興政策の立案過程と、市民社会の台頭の契機となった復興活動の生成過程を具体的に把握し、震災以前のメキシコシティの住宅政策、借家人運動の系譜を参照しつつ、市民セクターがメキシコ震災復興に果たした役割を明らかにすることである。結論として、メキシコ大地震の復興プロセスにおいて民衆セクターが果たした役割を、以下の2点に集約した。1. 震災以前に借家人運動の前史を持つ組織が、被災者の動員型要求運動を牽引し、公布後半年間停滞していたRHP実施のための要件を、政府と民衆セクターの協定という形で具体化した。2. 協定の締結により、低所得層に属する被災者の経済状況に配慮した大量の住宅供給と、少数ではあるが民衆セクターの自助努力による包括的コミュニティデベロップメントを達成した。