著者
猪阪 善隆 松井 功
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.665-669, 2018 (Released:2018-11-28)
参考文献数
28

CKD-MBDに関わる因子のうちで, 最も生命予後と関係の深い因子である, リンの調整系が判明したのは最近のことである. fibroblast growth factor 23 (FGF23) は骨細胞より分泌されるが, KlothoとFGF受容体の複合体に結合すると, 近位尿細管でのナトリウム-リン共輸送体 (NaPi-Ⅱ) の発現が抑制され, リンの再吸収が低下する. また, 活性型ビタミンD [1,25(OH)2D] 産生を抑制し, 腸管からのリン再吸収を抑制する. KlothoはCKDの早期から発現が低下し始めるが, 動物実験などから腎保護作用を有することが確かめられている. FGF23もCKD早期から上昇を認めるが, 透析患者のみならず, 保存期CKD患者の予後とも関係が深い. また, FGF23は予後予測因子というだけでなく, 予後不良因子として, FGF23自体が左室肥大をきたすことも指摘されており, そのメカニズムも解明されつつある. さらには, 肥大心自体もFGF23を産生することが判明している.
著者
猪阪 善隆 楽木 宏実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.1074-1080, 2014-05-10 (Released:2015-05-10)
参考文献数
10

ヨード造影剤は時に急性腎障害をきたすが,慢性腎臓病患者ではそのリスクが高い.造影剤投与直後に起こる血管攣縮に伴う腎虚血と造影剤による尿細管の障害が造影剤腎症のメカニズムと考えられているが,造影剤投与後短時間で発症するため,予防が重要である.さまざまな臨床研究が行われているが,現時点で有効な予防法は,造影剤使用量を最小限にすることと,適切な輸液のみであり,患者のリスクと病態の把握が肝要である.
著者
土井 洋平 下村 明弘 猪阪 善隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.477-485, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
9

スクロオキシ水酸化鉄は強力な血清リン低下効果を示す薬剤であるが, 透析患者のリン管理において服薬アドヒアランスも重要であるとされている. 今回スクロオキシ水酸化鉄チュアブル錠から顆粒剤へ切り替えた患者を対象にアンケート調査を行い, 臨床検査所見の推移についても検討した. 対象は92例で85例 (92.3%) が3か月以上切り替え後顆粒剤を継続していた. アンケート調査からは顆粒剤のほうが飲みやすく, 指示された用法・用量通りに服用できる患者が増加することが示唆された. 臨床検査データに関しては血清リン濃度を含めた骨ミネラル代謝, 鉄代謝パラメーター, ヘモグロビンなどに臨床的に有意な変動を認めなかった. スクロオキシ水酸化鉄顆粒剤はチュアブル錠と比較して臨床検査値に大きな変化はなく, 服薬アドヒアランスを考慮すると有用である可能性がある.
著者
今井 圓裕 伊藤 孝仁 猪阪 善隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.800-807, 2004-04-10
参考文献数
22

腎疾患における最も重要な問題は増加する慢性腎不全患者をいかに抑制するかであり,この根本的な解決は患者にとっての福音であるばかりでなく,医療経済的にも大きなメリットとなり,今後も引き続き重点的に研究が続けられるであろう.ポストゲノム研究の中心的な課題であるゲノム創薬は国際的に熾烈な競争が行われているが,腎臓分野もその重要なターゲットである.ただし,腎疾患関連遺伝子の同定がボトルネックとなっており,遺伝子の同定および機能解析が急務である.糸球体腎炎や腎線維化に対する遺伝子治療および腎再生医療などの革新的な治療法の開発はわが国が先行する状況で行われている.腎移植は移植領域では最も進んだ治療法であり,移植腎の長期生着をめざした研究が活発に行われている.また,最近開発された急性拒絶反応を起こさないα1, 3-galactosyltransferase欠損ブタの腎臓がヒト代用腎として使用される日も遠くはないと思われる.