- 著者
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王 培玉
金子 誉
- 出版者
- 山梨医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
最近数十年、食生活の欧米化によって、糖質の摂取量が減らしつづけている。このことが日本における糖尿病増加の原因の一つと考えられる。申請者の実験によると、健康な若者でも、糖質の少ない食事によって耐糖能が悪化し、糖尿病と判定されかねないケースが約30%あった。このような低糖質による耐糖能の悪化が将来糖尿病に進展するのか否かを検証することは糖尿病の予防という実際的観点からも興味深い。ヒトでこれを確認することは不可能である(20-40年かかる)から、ラットをもちいて検証したいと考えている。実験方法は、9週令の雄性Wistarラット40尾を1週間馴化した後、ランダムに2群に分けた。実験群は低糖質/高脂肪食(糖質10%、蛋白質25%、脂肪65%)で、対照群は普通食(糖質60%、蛋白質25%、脂肪15%)で飼育した。2ヶ月ごとに腹腔内糖負荷試験(IPGTT)を行った。血漿インスリン濃度も測定した。飼育開始14ヶ月後、実験群の空腹時血糖値が対照群に比べて有意に高くなった。負荷後2時間値は、飼育2ヶ月後から実験群の方が対照群より高く、その後両群間に差が次第に大きくなり、実験終了時には実験群が256±44mg/dl、対照群が196±25mg/dlであった。血糖曲線下面積(AUC)においても、実験群の方が対照群より高かった(292±48vs183±34mg/dl・hr)。空腹時血漿インスリン濃度は、12ヶ月までは実験群の方が対照群(C-F)より高かったが、負荷後30分の血漿インスリン濃度は、実験群が対照群に比べて有意に低かった。体重は、飼育開始3ヶ月後から実験群の方が大きくなったが、14ヶ月後から急激に減少した。また、Woleverらのラット糖尿病型の判定基準(負荷後の最大血糖値>300mg/dlまたは負荷後2時間値>200mg/dl)によって分類すると、実験終了時には対照群ラット17尾中4尾が糖尿病型であったが、実験群では18尾中16尾が糖尿病型で、著しい差が認められた。結論を言うと、低糖質/高脂肪食でラットを長期間飼育すると、耐糖能が悪化し、インスリン分泌が低下して糖尿病型となる。