著者
都甲 由紀子 朝比奈 はるか 王 立松 王 東 張 穎君
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的:中国雲南省山岳地域において少数民族の彝族が纏う民族衣装の装飾方法に関する伝統知識や技術、その伝承について調査する。<br>方法:2011~2013年にわたり雲南省各地で3回のフィールド調査を行った。 街中で手刺繍をしたり手刺繍の民族衣装を身につけていたりした人々や、手刺繍商品販売会社の社長、山間部の村人らに手作りの衣装に関してインタビューを行い、現状を把握し記録をとった。村人の踊りや衣装の様子、そして演者が現地で刺繍職人から技術指導を受けている様子などの動画や画像を撮影し、技術につき分析した。<br>結果:中国雲南省の少数民族の中で最も人口が多いのが彝族である。雲南省の中だけでも彝族はいくつものグループに分かれ、それぞれが形、色などにおいて特徴をもった民族衣装を身に着けていた。彝族の民族衣装には多くの刺繍が施されているのが特徴であり、彝族の宗教観がはっきりした色使いと輪郭をもった刺繍、すなわち題材のモチーフ化という形に表れており、自然写実を好む漢民族との大きな違いであることが今回の調査の結果確認された。また刺繍の技術は母から娘に伝承されてきたが、現在は市場において手刺繍が施されたパーツが販売され、ミシン刺繍が施された民族衣装もあり、技術の伝承も行われなくなりつつある。しかし道端や公園で刺繍をする少数民族女性の姿はよく見かけ、刺繍などの針仕事が今なお日常の中に存在していることが確認された。
著者
菅原 陽心 溝口 由己 河村 哲二 清水 敦 苑 志佳 王 東明 WANG Dongming 植村 高久 横内 正雄 竹野内 真樹
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,中国における市場経済化の進展過程を市場経済の多様性という視角から分析し,中国型市場経済を類型として明らかにすることを目的として、企業システム,経済政策,金融改革の三つの側面から実証分析を行った。企業システム分析では,国有企業,郷鎮企業,外資系企業の実証分析を行い,中国の企業システムあっては,欧米型のそれとは異なって,中国社会に基底的なネットワーク関係が軸に据えられたものであることが明確になった。経済政策の分析ではWTO加盟等この間の環境変化の中で、経済政策がどのように変化したのかをヒアリングを中心に調査し,政府・党の役割は非常に大きいものの,その役割を間接的なものにしていくという方向で改革政策が進められていることが明確になった。金融改革の分析は,ネットワークを軸にした中国型市場経済の中で,金融制度改革が,欧米流の個人の自由な取引に基づいた金融市場の構築という方向で進展しているということを踏まえ,中国型ネットワークと欧米型「市場」のせめぎ合い,相互適応・融合という視角から分析を行ったが、国有企業改革がはらむ問題等から、証券市場の整備が順調ではないこと、また、国家資産の管理などにも種々の問題が生じていることが明確になった。本研究は実証的な成果を前提にして、社会主義市場経済の類型化を図ることを最終的な目標としてきた。しかし、実証分析の深化を図るとともに、現在の状況が大きな変化の途上にあるということ、また、市場経済化の進展は地域によって様々異なった様相を呈していることが明確になった。そこで、全体的な類型化としては、政府・党によるマクロ・ミクロ両面から支えられた市場経済という極めて抽象度の高いものに留まらざるをえず、より具体的なモデル化は、調査地域の違いに応じた類型化、ならびに、今後の状況の変化を織り込むことによって可能であることが明確になった。