著者
塚崎 あゆみ 西田 民人 田上 英一郎
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.346, 2009

海洋のPOMは、食物連鎖による高次生産者への移行、中・深層、堆積物への鉛直輸送、溶存態有機物への移行等の過程に関与しており、海洋での物質循環の出発物質と言える。海洋表層のPOMは、生物体有機物およびその初期分解産物の複雑な混合物である。POMの化学的特性や動態に関する知見を蓄えることは、海洋、ひいては地球表層における炭素や窒素などの循環を理解する上で必須といえる。POMの最大構成成分はアミノ酸である。POMには生物体有機物と非生物態有機物が混在しており、それらを分けることができず、どのような物質が生物体アミノ酸で、どのような物質が非生物態アミノ酸であるのか分かっていないのが現状である。そこで本研究では、SDS-PAGE法で検出される物質の化学的特性および、それらがPOMに占める割合を明らかにし、生物体アミノ酸の海洋表層懸濁態有機物に対する貢献について検討した。
著者
田上 英一郎 BHASKAR P. V. BHASKER P.V.
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

海水中の有機物の起源や動態は、懸濁態有機物や溶存態有機物毎に、それぞれ個別的に炭素安定同位体やバイオマーカーを用いて研究されてきた。本研究では、同一海水中に含まれる懸濁態有機物や溶存態有機物について、陸源性及び海洋性有機物を分子レベルで明らかにし、伊勢湾-黒潮域を対象に、それらの動態を明らかにすることを目的とする。具体的には、濾紙上に捕集できる懸濁態有機物と共に、脱塩・濃縮が可能な溶存有機物高分子画分について、陸起源性高分子有機物、海洋性有機物を生産する動物、植物、細菌に由来する分子を区別しつつ、それらの動態を解明する。伊勢湾は、本州中央部に位置する閉鎖性内湾で、広大な集水域を有する木曽三川を中心に陸起源性有機物が負荷される一方、富栄養化による高い基礎生産による海起源性有機物の負荷も大きい。このような伊勢湾を南下すれば、そこには世界の海洋環境のなかで、最も貧栄養海域である黒潮海域が存在している。本研究が対象とする海域は、上記研究目的達成には理想的モデル海域と言える。9月23日〜25日、三重大学所属勢水丸の航海において、伊勢湾奥から伊勢湾口外部大王崎にいたる測線で、一般海洋観測を行い、淡水-海水混合状態や生物現存量、等を把握すると同時に懸濁態及び溶存態有機物試料を連続的に採集した。得られた試料については、炭水化物、アミノ酸・タンパク質及び蛍光・吸光物質等の全量分析を行った。
著者
田上 英一郎 原 成光 西田 民人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

海洋有機物プール消長がもたらす地球表層炭素循環へのインパクトを明らかにするために海洋有機物動態の総合的理解を目指した。ハイスループット分析法を用いて溶存有機物の分布を求め、その特徴から溶存有機物動態を明らかにし、分子レベルで有機物プールの詳細に把握することが主題である。本研究課題では、LC-MS/MSを用いたハイスループット分析法を開発し、観測海域から大量の基礎データを採取した。2次元多核種NMR法およびFACE法を用いて溶存および懸濁態有機物の高分子レベル分析法を用いて、海洋有機物の高次構造を明らかにすることで、海洋有機物の化学像を洗い出しを行った。