著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.177-183, 2006-06-08

ジョージ・ダンツィーク(George Bernard Dantzig)は修士号修得以降にワシントンの労働統計局に勤務していたが,ふとしたことでカリフォルニア大学バークレー校に行ったネイマンの下で Ph.D. を目指すことになった。本稿ではその時代に遅刻が原因で黒板に書いてあった未解決問題2問を宿題と思って解いた彼の若き日の統計学への貢献について述べる。一つはt検定の改良が不可能であること,もう一つは Neyman-Pearson の補題の必要十分性に関する問題である。 ダンツィークは後の空軍時代に考案した線形計画に対するシンプレックス法で有名で「線形計画法の父」と呼ばれているが,スタンフォード大学教授以降も晩年迄温和,研究熱心な人として知られている。昨年5月にパロ・アルトの自宅で惜しまれながら逝去された。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.177-183, 2006-06-08

ジョージ・ダンツィーク(George Bernard Dantzig)は修士号修得以降にワシントンの労働統計局に勤務していたが,ふとしたことでカリフォルニア大学バークレー校に行ったネイマンの下で Ph.D. を目指すことになった。本稿ではその時代に遅刻が原因で黒板に書いてあった未解決問題2問を宿題と思って解いた彼の若き日の統計学への貢献について述べる。一つはt検定の改良が不可能であること,もう一つは Neyman-Pearson の補題の必要十分性に関する問題である。 ダンツィークは後の空軍時代に考案した線形計画に対するシンプレックス法で有名で「線形計画法の父」と呼ばれているが,スタンフォード大学教授以降も晩年迄温和,研究熱心な人として知られている。昨年5月にパロ・アルトの自宅で惜しまれながら逝去された。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.271-276, 2014-01-24

数学が後から多くの分野に於いて重要な応用を持つことは枚挙に暇がなく,現代数学の計算量の理論で「簡単には解けない問題」となっている素因数分解の難易度を逆転の発想で応用した公開鍵暗号が情報通信技術の発展した現代に於いて,電子商取引(EC) や情報基盤で欠くことのできない技術になっていることもその好例である。本稿では,組合せ問題のみならず他の数学の未解決問題とも深く関って本質的な数論に関するこの20年間―1995年の Fermat の最終定理の解決から2013年の双子素数予想への前進まで―を概観する。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.11-18, 2022-06-09

不可分財を人数に比例して配分する問題は,衆議院や下院で 議員定数を地域人口に比例して配分する定数配分の問題が その典型である。 本稿ではアメリカ下院議員の州への配分で用いられた最大剰余方式 や除数法の代表的な方式に関して,その方法や理論的背景を 述べていく。特に,よく使われる d'Hondt 方式が除数法の Jefferson 方式であることを示した。 日本では衆議院小選挙区の議員定数を各都道府県に配分する 定数配分の問題が有るが,「一票の格差」をできるだけ小さく する目標が有り,2016年の選挙改革法では,早晩 Adams 方式 を使うことが決まっている。2021年10月末の第49回衆議院議員 総選挙に関して,実際の配分,Adams 方式の配分,Hill 方式 の配分を比べ,それぞれの「一票の格差」を計算した。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.57-60, 2011-03-10

本稿では Farkas の補題の系を用いて, Mangasarian-Fromovitzの制約想定の下で一般的な非線形計画問題の最適性の必要条件であるKarush-Kuhn-Tuckerの定理をMotzkinの定理やFritz John条件を経由せずに直接導出する。 また, Farkasの定理の無限次元への拡張, 凸関数, 離散変数等様々な方向への拡張についても概観する。
著者
田中 嘉浩
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.41-47, 2013-01-17

選挙, 市場, オークション, 政策等, 異なる選好を持つ人々の間で第三者が集団としての選好を決めなければならないことが多い。本稿では特に2集団マッチング, 中でも1対1マッチングに関して Gale and Shapley (1962) に提案されたDeferred Acceptanceアルゴリズムが導出する安定マッチングの性質や問題点について明らかにする。安定マッチングに関しては, Deferred Acceptanceアルゴリズムは存在の構成的証明になっているが, 束に対するTarskiの不動点定理を用いる存在証明を紹介し, 安定マッチングの線形計画表現を述べる。また, 2集団マッチングに関するDeferred Acceptanceアルゴリズムの(多対1にし, 他の要素を加えた改良版の)適用例や, その周辺の話題, 様々な方向への一般化を概観し, その他の解法の考え方についても触れる。