著者
田中 孝夫 荻田 太 田巻 弘之 齊藤 和人
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、一流競泳選手のパフォーマンスを決定する要因の解明、およびその競技力を向上させる新たなトレーニング法を開発することであった。その結果、一流競泳選手のパフォーマンスは、生理(体力)的要因より、むしろ推進パワーや抵抗、推進効率といった力学(技術)的要因の方が深く関与していることが明らかとなった。また、本研究で開発された高強度スプリントトレーニング、およびpush-offトレーニングは、無酸素性エネルギー供給能力、および最大推進パワーを効果的に向上させ、泳成績の改善に有効であることが証明された。
著者
田中 孝夫 荻田 太 田巻 弘之 浜岡 隆文
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【目的】本研究は、一流競泳選手を対象とし、泳成績と生理的、力学的指標との関係からパフォーマンスの規定要因を解明し、さらに年間トレーニングにおける各指標の変化と泳成績の変化との関連性や、技術要因の数値化を試み、国際競技力向上に資するための実践的資料を得ることを目的とした。【方法】被検者は、オリンピック、アジア大会、ユニバーシアードなどの国際大会出場選手を含むインカレ3連覇中のチームに属する女子競泳選手であった。本研究では、生理的指標として最大酸素摂取量、最大血中乳酸濃度、OBLAが、力学的指標として抵抗-泳速関係、抵抗係数・指数、最大推進パワー、および推進効率が計測され、各距離種目の泳成績との関係、縦断的変化が検討された。力学的指標の測定は、本学で開発されたMAD(Measurement of Active Drag)システムを用いて行われた。【結果及び考察】一流選手における各距離種目の泳成績と、生理的および力学的指標との関係を検討した結果、体力の代表指標とされてきた最大酸素摂取量とは必ずしも相関はなく、短距離種目ではより大きな機械的パワー発揮と無酸素性エネルギー供給能力、さらにはそれを生み出すための大きな筋量(体格)が、長距離種目では低い乳酸蓄積と、抵抗係数を小さくする泳技術が重要な要因であることが示唆された。また、縦断的に同一選手の測定を行い、そのときの泳記録の変化との関係を検討した結果、記録の向上は最大努力泳時の抵抗の低下のみと有意な相関が得られ、エリート選手における記録の更新は、体力要因の維持向上はもちろんであるが、特に抵抗を軽減させるような泳技術の改善に起因していたことが示唆された。また、一流選手における規定要因については、年間のトレーニングを通じて有意差が出るほど顕著な変化が得られないこと、さらに本被検者における推進効率は73.2±8.3%であり、これまで報告されている値よりも高く、非常に優れた技術を有していることも明らかとなった。
著者
田口 信教 田中 孝夫 荻田 太
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

【目的】本研究は、昨年度の成果をもとに、低圧環境下を用いて一流選手にスプリントトレーニングを施し、エネルギー供給能力、泳パフォーマンスに対する有効性について検討することを目的とした。【方法】被検者は、年齢20±2歳、身長165.6±1.7cm、体重57.7±5.1kgの全日本学生選手権3連覇中の水泳部に所属する選手であり(女子4名、男子2名)、うち3名はリレーにおける日本記録保持者、1名はヨーロッパサーキットグランプリ出場、その他も全日本選手権、全日本学生に出場する選手であった。トレーニングは加減圧調整可能流水プールを用い、1日1回、週5回の頻度で4週間、海抜4000m相当の低圧環境下において行われた。トレーニング内容は、5秒の運動を10秒の休憩を挟み5回繰り返す間欠的運動とし、これを20分の休憩をはさんで2セット行った。強度は、常圧環境下において10秒程度で疲労困憊に至る強度とした。トレーニング効果は、常圧環境下における最大酸素摂取量、最大酸素借、最大推進パワー、50m、100m自由形泳記録の変化によって評価した。【結果および考察】4週間のトレーニング後、最大酸素摂取量に有意な変化は見られなかったが、最大酸素借は27%増加(前:2.85±3.57、後:3.57±1.56l)、さらに最大推進パワーも18%増加(前:90.1±45.2、後:106.4±40.4W)し、いずれの有意であった(P<0.01)。さらに泳記録についても50m(前:27.33±1.64、後:26.78±1.46秒)、100m(前:59.40±3.22、後:58.15±2.94秒)ともに有意に向上した(P<0.01)。以上の結果より、低圧環境下におけるスプリントトレーニングは、エリート選手に対してもエネルギー供給能力および泳成績の向上に有効であることが示唆された。