著者
田口 信教 田中 孝夫 荻田 太
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

【目的】本研究は、昨年度の成果をもとに、低圧環境下を用いて一流選手にスプリントトレーニングを施し、エネルギー供給能力、泳パフォーマンスに対する有効性について検討することを目的とした。【方法】被検者は、年齢20±2歳、身長165.6±1.7cm、体重57.7±5.1kgの全日本学生選手権3連覇中の水泳部に所属する選手であり(女子4名、男子2名)、うち3名はリレーにおける日本記録保持者、1名はヨーロッパサーキットグランプリ出場、その他も全日本選手権、全日本学生に出場する選手であった。トレーニングは加減圧調整可能流水プールを用い、1日1回、週5回の頻度で4週間、海抜4000m相当の低圧環境下において行われた。トレーニング内容は、5秒の運動を10秒の休憩を挟み5回繰り返す間欠的運動とし、これを20分の休憩をはさんで2セット行った。強度は、常圧環境下において10秒程度で疲労困憊に至る強度とした。トレーニング効果は、常圧環境下における最大酸素摂取量、最大酸素借、最大推進パワー、50m、100m自由形泳記録の変化によって評価した。【結果および考察】4週間のトレーニング後、最大酸素摂取量に有意な変化は見られなかったが、最大酸素借は27%増加(前:2.85±3.57、後:3.57±1.56l)、さらに最大推進パワーも18%増加(前:90.1±45.2、後:106.4±40.4W)し、いずれの有意であった(P<0.01)。さらに泳記録についても50m(前:27.33±1.64、後:26.78±1.46秒)、100m(前:59.40±3.22、後:58.15±2.94秒)ともに有意に向上した(P<0.01)。以上の結果より、低圧環境下におけるスプリントトレーニングは、エリート選手に対してもエネルギー供給能力および泳成績の向上に有効であることが示唆された。