著者
前田 晴良 田中 源吾
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は,研究代表者(前田晴良)および研究分担者(田中源吾)による2名の陣容で行う3年計画のうちの初年度分として実施した.代表者はおもに大型化石のタフォノミーや堆積相の分析,および全体のまとめを担当し,研究分担者は,おもに共産する微化石の分析,および代表者と協力して機器分析を担当した.H30年度は,まず愛知県・師崎層群の野外調査を行い,発光器を備えた深海魚化石の保存・産状をマクロスケールで精査して地質学的な情報を収集した.同時に,東海化石研究会が保管・収蔵している師崎層群産の魚類化石についてタフォノミーの視点から詳細に観察した.また,南部北上および四国に分布する中・古生界について予察的な調査を行い,発光器を含む化石が保存されている可能性を探った.その結果,師崎層群産の発光器を備えた深海魚化石は,これまで漠然と「ハダカイワシ類」と呼ばれていたが,発光器が体側下部に一列に並ぶ配列様式から見て,分類学的には「ハダカイワシ目」の中でも「ソトオリイワシ科」に絞り込めることがわかった.また,化石中に反射板・色素などの発光器の組織・微細構造が電子顕微鏡スケールで保存されていることを確認した.ソトオリイワシ類の死後,反射板はすぐバラバラになってしまうため,化石における反射板の保存はこれまで世界に例がない.さらに,筋肉・鱗を伴う皮膚などの軟体部や,眼や耳石を含む頭部の微細構造も保存されていることがわかった.他方,腹腔内は,火山ガラス(=沸石に変質)によって充填されていて,内臓等の痕跡は認められなかった.火山ガラスは腐敗による腹部断裂を通して埋没後に体内に侵入したものである.よって,消化管・うきぶくろ(鰾)などの内臓は,発光器よりさらに早い段階で,腐敗により消失していた可能性が高い.これらの新知見をもとに,次年度以降の研究を進めてゆく予定である.
著者
前田 晴良 上田 直人 西村 智弘 田中 源吾 野村 真一 松岡 廣繁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.11, pp.741-747, 2012-11-15 (Released:2013-04-04)
参考文献数
44
被引用文献数
1 2

高知県佐川地域に分布する七良谷層の模式層序周辺の泥質砂岩中から,最上部ジュラ系を示す2種類のアンモノイド化石を発見した.そのうちAspidoceras属は,テチス海地域の最上部ジュラ系から多産し,Hybonoticeras属は同地域のキンメリッジアン−チトニアン階境界付近を示準するタクサである.これらの化石の産出により,七良谷層は最上部ジュラ系(キンメリッジアン−チトニアン階)に対比される可能性が高い.この結論は放散虫化石層序とおおむね調和的である.これまで七良谷層は,上部ジュラ系−下部白亜系鳥巣層群の層序的下位にあたる地層と考えられてきた.しかし七良谷層から産出したアンモノイドの示す時代は,鳥巣層群産アンモノイドのレンジと明らかに重複し,アンモノイド化石からは両岩相層序ユニットの時代差は識別できない.したがって,今後,七良谷層と鳥巣層群の層序関係を再検討する必要がある.
著者
田中 源吾
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.15-30, 2012
参考文献数
83

'The Light-Switch Hypothesis' proposed by Parker (2003) is reviewed on the basis of recent relevant literature in order to test the hypothesis. This review revealed the following: 1) Diversification of bilaterian animals occurred during the Late Ediacaran Period, based on paleontological and molecular clock evidences. 2) Developmental genetic studies of eyes suggest that the eyes of bilaterian animals were formed from those of the Urbilateria, which hypothetically had both rhabdom and cilium photoreceptors during the Ediacaran period. During evolution, vertebrates utilized cilium photoreceptors, while invertebrates selected rhabdom photoreceptors for the development of eyes. On the basis of the detailed research of the ommatidium surface of the low-light adapted compound eye of the fruit fly, the phenotype of corneal nipple protuberances has changed in a extremely short time period from the view point of the geologic time scale. 3) The oldest fossilized eyes discovered are those of trilobite and bradoriid arthropods from 521 Ma. Increases in body size, and the corresponding increase of energy required, during 630Ma-521Ma may have been triggered by the evolution of the eye.'
著者
田中 源吾
出版者
群馬県立自然史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

カンブリア紀の地層は日本に露出しておらず、海外調査に重点をおいて研究を行った。スウェーデン南部のカンブリア紀の地層が露出する地域を調査し、そこから眼の細部まで3次元的に保存された、三葉虫をはじめとした微小(1mm未満)な節足動物化石を発見した。電子顕微鏡を用いた調査の結果、複眼やノープリウス眼様の眼、1つの単眼様の眼など、様々な眼をもった節足動物が古生代の初めのカンブリア紀にはすでに地球上に現れていたことが初めて明らかになった。