著者
前田 晴良
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.131-140, 1999-12-27
被引用文献数
1
著者
前田 晴良
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.148, pp.285-305, 1987-12-30
被引用文献数
14

北海道からサハリンにかけて分布する上部白亜系から産するアンモナイトのタフォノミーについて, 主に達布地域での観察を中心に議論した。平行葉理の発達したセノマニアン階の泥岩では, アンモナイトの殻は石灰質ノジュール中に含まれている場合でも, 圧密・溶解を被っている。一方, 生物擾乱を強く受けたチューロニアン階中部〜サントニアン階上部の泥岩中のノジュールは, 圧密・溶解を受けていない保存の良いアンモナイトを豊富に含む。おそらく上位層準のノジュールの方が, 下位層準のものよりも続成作用のより早い段階で形成されたと考えられる。大型アンモナイトは, 中・小型のものより続成作用の影響を強く受け, "half-ammonite"や"ventral-tire"等の特徴的な保存をしばしば示す。これらの保存は, 堆積物が殻内を不均一に埋積するため生じると考えられる。また, アンモナイトの殻は, 植物片とよく共存する。これは海水が侵入したアンモナイトの殻の密度が, 流木片のそれと近く, 両者が水力学的に似かよった挙動を示すためと推測される。これら木片やアンモナイト・イノセラムスの殻破片は, 大型アンモナイトのヘソの下に特徴的に掃き寄せられることも多い。植物片や貝の殻破片が集まったこのようなヘソ下部の空間に, 堆積物食者のブンブク類ウニが自生的産状で保存されていることがある。
著者
加瀬 友喜 前田 晴良
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.118, pp.291-324_1, 1980-06-30 (Released:2010-05-25)
参考文献数
44

千葉県銚子地方の前期白亜紀層より得られた保存良好な軟体動物化石を検討した結果, 10新種を含む11属12種の腹足類化石(Calliostoma? ojii KASE, sp. nov., Ataphrus (s. str.) nipponicus KASE, sp. nov., Hayamia rex KASE, sp. nov., Hayamia choshiensis KASE, sp. nov., Amberleya (Eucyclus) japonica KASE, sp. nov., Oolitica sp., Metriomphalus nagasakiensis KASE, sp. nov., Perissoptera elegans KASE, sp. nov., Pietteia cretacea KASE, sp. nov., Ceratosiphon densestriatus KASE, sp. nov., Vanikoropsis decussata (DESHAYES) and Eriptycha japonica KASE, sp. nov.を識別・鑑定したので記載する。これらの中には, 腹足類の系統分類学上, 注目すべきいくつかの種が含まれている。Hayamia属は殻の外形, 表面装飾, 楕円形のフタを持つこと, および内唇の中央部に凹みを持たない点でNeritopsinae亜科の他の属から区別され, さらにHayamia属のフタはNaticopsis属のそれに類似する。以上の事実は, Hayamia属とNaticopsis属の親密な類縁関係が暗示され, Hayamia属がNeritopsis属とは異なった系列に沿って進化したことを暗示する。Pietteia cretaceaは翼状に伸びた外唇に直交する棘を持つ特異なモミジソデの一種類で, 従来本属はジュラ紀にのみ知られていたが, 今回の報告により, 前期白亜紀にも存在することが明らかになった。Ceratosiphon属はCOSSMANN (1907)以来Tessarolax属のシノニムと見なされてきたが, 両属が独立の属であることを示した。銚子層群産腹足類群の中には, フランスやイギリスのバレミアン, アプチアンあるいはアルビアンのものと共通, あるいは近縁な種が多く含まれている。
著者
前田 晴良 田中 源吾
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は,研究代表者(前田晴良)および研究分担者(田中源吾)による2名の陣容で行う3年計画のうちの初年度分として実施した.代表者はおもに大型化石のタフォノミーや堆積相の分析,および全体のまとめを担当し,研究分担者は,おもに共産する微化石の分析,および代表者と協力して機器分析を担当した.H30年度は,まず愛知県・師崎層群の野外調査を行い,発光器を備えた深海魚化石の保存・産状をマクロスケールで精査して地質学的な情報を収集した.同時に,東海化石研究会が保管・収蔵している師崎層群産の魚類化石についてタフォノミーの視点から詳細に観察した.また,南部北上および四国に分布する中・古生界について予察的な調査を行い,発光器を含む化石が保存されている可能性を探った.その結果,師崎層群産の発光器を備えた深海魚化石は,これまで漠然と「ハダカイワシ類」と呼ばれていたが,発光器が体側下部に一列に並ぶ配列様式から見て,分類学的には「ハダカイワシ目」の中でも「ソトオリイワシ科」に絞り込めることがわかった.また,化石中に反射板・色素などの発光器の組織・微細構造が電子顕微鏡スケールで保存されていることを確認した.ソトオリイワシ類の死後,反射板はすぐバラバラになってしまうため,化石における反射板の保存はこれまで世界に例がない.さらに,筋肉・鱗を伴う皮膚などの軟体部や,眼や耳石を含む頭部の微細構造も保存されていることがわかった.他方,腹腔内は,火山ガラス(=沸石に変質)によって充填されていて,内臓等の痕跡は認められなかった.火山ガラスは腐敗による腹部断裂を通して埋没後に体内に侵入したものである.よって,消化管・うきぶくろ(鰾)などの内臓は,発光器よりさらに早い段階で,腐敗により消失していた可能性が高い.これらの新知見をもとに,次年度以降の研究を進めてゆく予定である.
著者
前田 晴良 上田 直人 西村 智弘 田中 源吾 野村 真一 松岡 廣繁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.11, pp.741-747, 2012-11-15 (Released:2013-04-04)
参考文献数
44
被引用文献数
1 2

高知県佐川地域に分布する七良谷層の模式層序周辺の泥質砂岩中から,最上部ジュラ系を示す2種類のアンモノイド化石を発見した.そのうちAspidoceras属は,テチス海地域の最上部ジュラ系から多産し,Hybonoticeras属は同地域のキンメリッジアン−チトニアン階境界付近を示準するタクサである.これらの化石の産出により,七良谷層は最上部ジュラ系(キンメリッジアン−チトニアン階)に対比される可能性が高い.この結論は放散虫化石層序とおおむね調和的である.これまで七良谷層は,上部ジュラ系−下部白亜系鳥巣層群の層序的下位にあたる地層と考えられてきた.しかし七良谷層から産出したアンモノイドの示す時代は,鳥巣層群産アンモノイドのレンジと明らかに重複し,アンモノイド化石からは両岩相層序ユニットの時代差は識別できない.したがって,今後,七良谷層と鳥巣層群の層序関係を再検討する必要がある.
著者
前田 晴良
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

北海道・上部白亜系中の菱鉄鉱ノジュールを産する貧酸素環境の層準等から, Sphenoceramus naumanniのセンサス群集を発見した.これらは合弁で,非常に薄く壊れやすい後耳が保存されており,当時の個体群がそのまま埋没・固定された可能性が高い.底生生物の活動に不適な環境下で,逆に生態情報を保ったままの化石群が保存されるという逆説的な結果は,今後のイノセラムス類の古生態復元の上で重要なヒントとなる.