著者
田中 理絵
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.119-138, 2011-06-10 (Released:2014-06-03)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

本稿の目的は,日本において児童虐待が社会問題化してきた過程について明らかにしたうえで,さらにその対応方法の問題点について考察することにある。その結果,児童虐待の社会問題化が幾つかの段階を経て拡大してきたこと,「激増」,「深刻化」というイメージがマスメディアによって流布されてきたこと,また社会的対応方法としてリスクアセスメントの方向へ向かっているがそれは結局すべての家庭を国の監視・管理下におさめることを意味することを指摘した。 国家主導で,リスクアセスメントを導入することは困難を抱える家族を発見するためだが,それは児童虐待を社会問題としてではなく個別の家族問題として捉えられることに繋がる。 また,児童福祉の現場では,児童虐待の背景は両親の心理的問題などではなく,むしろ社会経済的課題にあると長年見なされてきたが,マスメディアによって広まった児童虐待のイメージは,家族の養育機能の低下が原因であると信じさせてきた。そこで,すべての家庭が検査対象に拡大されているのだが,これは人的資源のロスである。 教育社会学にできる貢献としては,実証的研究の蓄積,児童虐待に対するモラルパニックの客観的分析など,経験科学の立場からの研究結果の提供が考えられる。また臨床的には,当事者である親・子どもの視点から児童虐待という経験の意味を抽出したり,解決に資するような具体的な事項の特定を行うなどの貢献が可能であろう。
著者
田中 理絵
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.119-138, 2011
被引用文献数
2

本稿の目的は,日本において児童虐待が社会問題化してきた過程について明らかにしたうえで,さらにその対応方法の問題点について考察することにある。その結果,児童虐待の社会問題化が幾つかの段階を経て拡大してきたこと,「激増」,「深刻化」というイメージがマスメディアによって流布されてきたこと,また社会的対応方法としてリスクアセスメントの方向へ向かっているがそれは結局すべての家庭を国の監視・管理下におさめることを意味することを指摘した。<BR> 国家主導で,リスクアセスメントを導入することは困難を抱える家族を発見するためだが,それは児童虐待を社会問題としてではなく個別の家族問題として捉えられることに繋がる。<BR> また,児童福祉の現場では,児童虐待の背景は両親の心理的問題などではなく,むしろ社会経済的課題にあると長年見なされてきたが,マスメディアによって広まった児童虐待のイメージは,家族の養育機能の低下が原因であると信じさせてきた。そこで,すべての家庭が検査対象に拡大されているのだが,これは人的資源のロスである。<BR> 教育社会学にできる貢献としては,実証的研究の蓄積,児童虐待に対するモラルパニックの客観的分析など,経験科学の立場からの研究結果の提供が考えられる。また臨床的には,当事者である親・子どもの視点から児童虐待という経験の意味を抽出したり,解決に資するような具体的な事項の特定を行うなどの貢献が可能であろう。
著者
田中 理絵
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.199-217, 1998-10-20 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

This paper attempts to analyze and explain the stigmatization of children that in a children's home. In particular, I focus on the feelings that stigmatized children have about themselves and about their relationships with children who do not live in the institution. To understand these feelings, I examined children's discussions of their lives, and in particular, the use and significance of certain vocabulary they used to describe their lives.The following are results of my research.(1) Stigmatized children view their stigma as retribution from their parent (s).(2) In society, people are categorized, and the members of each category consider their own attributes as ordinary and normal.(3) Stress management and information management are important in helping stigmatized children avoid unreasonable treatment.(4) Stigmatized children think that their perspective is the same as other children and do not differentiate themselves from others. However, they and people around them define them as being different, which causes these children to strive for “normalcy”. Thus, this line of thought produces the irony that the more “normal” they hope to be, the more they stigmatize themselves in their minds.These children do not identify themselves as living at an orphanage, and instead attempt to manage information about themselves when talking with others. It is most significant that although children view achieving “normalcy” as a kind of panacea for solving their problems, this “normalcy”, in fact, can never serve as the means of solution.
著者
田中 理絵
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、子ども期に家族崩壊を経験した者を対象に面接調査を実施し、彼らが遭遇する社会的困難や課題について明らかにしながら、家族崩壊の再生産要因について分析することを目的としたものである。調査の結果、定位家族での家族崩壊経験について被害経験を客観的に説明できると同時に、生殖家族において、今度は自分自身が加害者となるのではないかという不安を抱えること、それには性別・年齢・崩壊に至った原因による傾向はみられないことが明らかになった。