著者
田中 真奈実 入江 勇治 安羅岡 一男 佐藤 章仁 松本 繁 白田 保夫 中村 尚志 河合 美枝子 海老原 誠
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.156-163, 1988-02-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

関東地方利根川流域で感染した慢性日本住血吸虫症について, 茨城県内診断例12例を中心に, その診断法・病態・治療適応について検討した. 患者は, すべて海外渡航歴・利根川以外の本症流行地への旅行歴はなく, 取手市戸頭, 稲敷郡河内村, 筑波郡谷和原村等かつて本症の流行が報じられた地域の在住者である. 血中抗住血吸虫抗体及び糞便中の虫卵は検査したすべての症例で陰性であった. 8例の患者の確定診断は, 本症とは異なる基礎疾患で摘出された臓器 (胃・十二指腸等上部消化管及び肝・胆道系) 中の日本住血吸虫虫卵の病理学的検索によってなされた. しかし, 茨城県取手市戸頭の3症例と筑波郡伊奈町の1症例は, 人間ドックで画像診断学的に診断されており, 流行地における本症患者のスクリーニングには, 肝エコーにおける魚鱗状パターン, 肝CT像における被膜石灰化像・隔壁様石灰化像等特徴的所見も有用であることが示された. また, その病態は, 基礎疾患によって異なっており, 胃癌・肝癌等悪性腫瘍との合併例は4例であった. プラジカンテルによる治療適応の判定には, 虫卵排出の有無及び虫卵の孵化能の検索が必要であるが, 疑わしい症例には生検材料による孵化試験をすることが必要である. 病理組織学的検索だけでは, 感染時期及び孵化能の判定は困難である.
著者
田中 真奈実 入江 勇治 安羅岡 一男 佐藤 章仁 松本 繁 白田 保夫 中村 尚志 河合 美枝子 海老原 誠
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.156-163, 1988

関東地方利根川流域で感染した慢性日本住血吸虫症について, 茨城県内診断例12例を中心に, その診断法・病態・治療適応について検討した. 患者は, すべて海外渡航歴・利根川以外の本症流行地への旅行歴はなく, 取手市戸頭, 稲敷郡河内村, 筑波郡谷和原村等かつて本症の流行が報じられた地域の在住者である. 血中抗住血吸虫抗体及び糞便中の虫卵は検査したすべての症例で陰性であった. 8例の患者の確定診断は, 本症とは異なる基礎疾患で摘出された臓器 (胃・十二指腸等上部消化管及び肝・胆道系) 中の日本住血吸虫虫卵の病理学的検索によってなされた. しかし, 茨城県取手市戸頭の3症例と筑波郡伊奈町の1症例は, 人間ドックで画像診断学的に診断されており, 流行地における本症患者のスクリーニングには, 肝エコーにおける魚鱗状パターン, 肝CT像における被膜石灰化像・隔壁様石灰化像等特徴的所見も有用であることが示された. また, その病態は, 基礎疾患によって異なっており, 胃癌・肝癌等悪性腫瘍との合併例は4例であった. プラジカンテルによる治療適応の判定には, 虫卵排出の有無及び虫卵の孵化能の検索が必要であるが, 疑わしい症例には生検材料による孵化試験をすることが必要である. 病理組織学的検索だけでは, 感染時期及び孵化能の判定は困難である.
著者
田中 朝雄 田中 真奈美 村上 博 三井 洋司 田中 真奈実 田中 真奈美 田中 朝雄
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

宿主寄生体間情報伝達物質の検出のため、ヒト脳神経系及び寄生原虫クルーズ・トリパノソーマを等しく認識する単クローン抗体(Wood,J.N.et al.,Nature,1982)を用い、ヒト臓器別およびトリパノソーマのcDNAライブラリーを精査し、多数の新規遺伝子を得た。ノザンブロット解析により、元来この抗体が認識する神経や心筋細胞、クルーズ・トリパノソーマのみに発現が認められるBradeion遺伝子が選別され、その後の生体機能解析へと進んだ。現在までにこの新規生理活性物質の生体機能解明・情報整備をほぼ完備することが出来た。即ち、1.成人脳の神経細胞での発現が認められ、2種のタイプが存在する(α及びβと呼称)。アミノ酸配列の特徴として、成長ホルモンやサイトカイン受容体特異的配列が認められ、膜貫通部分やATP/GTP結合部位も含めてオーファン受容体としての特徴的配列を有する。2.ノザンブロット解析でヒト成人脳、心臓(脳の10%以下)でのみ検知可能であり、他臓器・胎児期では検出感度以下の発現しか示さない。3.マウス脳でβ型相同遺伝子配列が存在する(94%の相同性)。マウス第11番染色体に位置し、3エクソン、2イントロンの構成で約17kb領域にコードされる。4.細胞内局在部位は、αはミトコンドリア、βは核周囲細胞質である。5.培養ヒト癌細胞に過剰発現させると、アポトーシスを誘導する。6.ヒト培養大腸癌・メラノーマ細胞株で強度遺伝子発現を示す。大腸癌の患者検体でもこの強度発現は確認された。7.アンチセンス・リボザイムで大腸癌細胞で発現を抑制すると、細胞増殖速度に顕著な影響が現れ、増殖抑制及び癌細胞の形質転換が起こる。脳神経系細胞の寿命制御・脱落防止に関しては、遺伝子病としての脳神経退行性疾患やアルツハイマー病、ハンチントン病で疾病の分子基盤解明とそれを応用した医薬品・医療機器開発が世界規模で推進されている。また、C.elegansやマウス等モデル生物系を含めた物質解明及びヒトへの応用が試みられているが、これは脳神経系という臓器・細胞の持つ種特異性や個体差というものが研究の限界となり、ヒト細胞を用いた方法論の整備が叫ばれている。Bradeionは、このような従来型のアプローチでは決して抽出されることのできないヒトの生物共進化や「寄生」という環境適合から焦点を当ててのみ得られるヒト脳神経生存(脱落)に関わる新規物質である。従って、本研究は、このような細胞寿命制御因子Bradeionの発見と機能解明を行った。この知見から現在、老化・癌化等の細胞変異制御のために、1.有用生理活性物質としてのヒト脳オーファン受容体の生体機能解明、2.脳内高次機能構築・細胞脱落の機構解析、3.脳神経細胞死、癌早期診断及び遺伝子治療に向けての技術開発、医療機器開発、を行っており、広範な新規産業創造シーズへ活用することを目指してさらなる研究が展開されている。