著者
山路弘樹 中村輝子 横山潤 近藤健児 諸田隆 竹田秀一 佐々木博 牧雅之
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.57-78, 2007-04-20 (Released:2022-10-20)

日本産カンアオイ属ウスバサイシン節植物の形態変異を明らかにするために,国内の全分布域・既知の分類群,地域集団を含む55集団について野外調査を行った.同節に関する過去の研究はいずれも量的形質の評価が不十分であるため,本研究では今まで用いられてきた形質,新たに採用した形質の評価に加え,花の量的形質に基づく多変量解析を行った.その結果,形態より区別できる8型が認識された.日本の同節はまず萼筒内壁のカラーパターンで2型に分けられ, D 型は全面暗紫色なのに対し, L 型は基底部は暗紫色,中央部は黄緑色ないし淡紫色,萼筒開口部は暗紫色ないし白色だった. D 型はさらに萼筒内壁,萼裂片内面の毛の細胞数,雄蕊・雌蕊の数で D1-D4 の4型に分けられ, L 型は萼筒の形態,萼筒開口部の大きさ,萼裂片の形態,サイズで L1-L4 の4型に分けられた.この8型はほぼ異所的に分布し,それぞれ独立の分類群に値するまとまった地域集団と推定された.
著者
今里 雅之 林 恒男 田中 精一 上田 哲哉 竹田 秀一 山本 清孝 武藤 康悦 磯部 義憲 上野 恵子 山本 雅一 小林 誠一郎 羽生 富士夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.80-84, 1990-01-01
被引用文献数
5

症例は50歳男性で,主訴は心窩部痛である.胃潰瘍の診断とともに,超音波検査で肝右葉に蜂巣状内部構造を有する比較的境界鮮明な直径7cmの腫瘤を認めた.Computed tomography(CT)では腫瘤は低吸収域で造影後には菊花状で各花弁にあたる部位の辺縁が濃染される特異な像を呈した.腹部血管造影では,腫瘍血管や圧排所見はないが毛細管相で腫瘍濃染像を認めた.腫瘍マーカーは正常であった.腫瘍の穿刺吸収細胞診では,白色の濃汁の中に線維性組織が吸引されたが炎症性変化のみで悪性所見は認めないため厳重な経過観察とした.2年後,画像的に腫瘤の増大が認められ,悪性腫瘍が否定できないために拡大肝右葉切除術を施行した.病理学的にinflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患は文献上17例の報告しかなく,経過を追い増大を認めた症例はいまだ報告されていない.ここに文献的考察を加え報告する.