著者
堀田 裕貴 田中 隆文 小谷 亜由美
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-22, 2022-04-25 (Released:2022-05-09)
参考文献数
49

地理的に離れた流域間においては,降水条件が大きく異なるため流量データのみからその流域が持つ降雨–流出応答特性(本論文では流出特性)を比較することは難しい。そのため流出モデルのパラメータを比較することで流出特性を比較するという試みがなされている。しかし,多数の流域で同一の構造を持つ流出モデルを用いて蒸発散量を考慮した1年以上の長期間の流出解析を行い,そのパラメータを比較することで流域条件が与える影響を検討した研究はほとんどない。そこで本研究では,降雪が少なく上流にダムが無い国内の27の堆積岩流域・変成岩流域,38の火成岩流域において,タンクモデルパラメータと流域の気候・地形・流域面積・地質年代・土壌・植生との関係を重回帰分析により検証した。その結果,年平均降水量が多いほどタンクモデルの流出率は大きくなる傾向,そして浸透率は小さくなる傾向が見られ,特に堆積岩流域・変成岩流域でその傾向が顕著であった。また,地質を問わずTopographic Wetness Index 7以上の面積率が大きいほど,タンクモデルの第一タンクの横孔が低くなる傾向と,森林面積における広葉樹林の割合が高いほどタンクモデルの第一タンクの流出率が小さくなり,洪水時のピーク流量が小さくなる可能性が示された。
著者
田中 隆文 大津 悠暉 熊谷 冴矢子 西田 結也 宮城島 由有
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

意見を公募したり住民が企画に参加してさえいれば,ボトムアップの意義が発揮されることになるのだろうか。災害対策基本法に基づく地区防災計画制度を例とすれば,内閣府のガイドブックにはボトムアップという言葉が繰り返し使われるが,地区の防災計画案をまとめる際に専門家のアドバイスを受けるよう繰り返し促されている。 東日本大震災の際の科学知の限界を踏まえれば,ここでの専門家のアドバイスは,ローカルノレッジを頭ごなしに却下する"固い科学"であってはならず,地域特性(自然科学的および人文・社会科学的な意味での地域特性も含む)の理解を踏まえた柔軟なものでなければならない(田中,2015)。しかし,このニーズに応えるために必要となる"柔軟な科学知"をアドバイスできる防災専門家は非常に少ないのが実情である。 本報告では,地区の防災計画およびその親規定である地域防災計画へのローカルノレッジの反映状況を調査し,課題を整理した。参考文献:田中隆文編(2015)想定外を生まない防災科学.-すべてを背負う「知の野生化」-,古今書院,p.299