著者
宮崎 彰吾 皆川 陽一 沢崎 健太 飯村 佳織 脇 英彰 田原 伊織 吉田 成仁 赤岩 忠孝 佐保田 満美 田村 憲彦 藤岡 隆司 森野 一巳
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.254-265, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【背景】欠勤には至っていないが、 様々な徴候や症状で労働遂行能力が低下している労働者の状態 (プレゼンティーイズム) が、 企業に多額の損失を与えている。 しかし、 包括的かつ実効性のある労働衛生対策は未だ提示されていない。 そこで、 鍼治療を含む施術費用への助成が労働者のプレゼンティーイズムに有用であるか中間解析した結果を報告する。 【方法】プレゼンティーイズムと自覚しているオフィスワーカーを対象として、 4週間のランダム化群間比較試験を行い、 各職場において励行されている通常のプレゼンティーイズム対策を任意で行う対照群、 通常の対策を任意で行うことに加えて鍼治療を含む施術に要した費用に対して最大8,000円まで助成を受けることができる介入群、 のいずれかに割り付けた。 主要評価項目はWHO-HPQの相対的プレゼンティーイズム値 (1から低下するほど労働遂行能力が低下していることを意味する) で、 最大の解析対象集団を対象に解析した。 【結果】52例を介入群30例と対照群22例とに割り付けた。 介入群では、 首や肩のこり (67%)、 腰痛 (26%)、 うつ (5%)、 アレルギー (2%) に対して鍼治療を平均1.4回受療して合計7,219円支払い、 6,556円の助成を受けた。 その結果、 相対的プレゼンティーイズム値は対照群0.91に対して介入群0.95で、 群間差は0.04 (ES(r)=0.22、 P=0.12) であった。 【結論】プレゼンティーイズムと自覚しているオフィスワーカーに鍼治療の費用に対して4週間に合計最大8,000円助成する、 と提示すると平均1.4回受療し、 提示しない場合と比べて労働遂行能力が約4% (一人当たり19,691円に相当) 向上することが示唆された。
著者
田原 伊織 宮崎 彰吾
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.4-12, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
16

【目的】シワは4割以上の中高年者が美容上の悩みとして抱えている。その予防・改善には、シワの溝が真皮に至る前に保湿成分を継続的に表皮内に送達し、水分の蒸散を防ぐ必要があるが、皮膚表面の角質層はバリア機能が高く、物質の透過性が極めて低い。本研究では、経皮的DDS技術の一つであるマイクロニードルから着想を得て、「小ジワ」 に対して散鍼術を行い、その直後に保湿成分を含む美容液を塗布した際の有効性、安全性について質の高いエビデンスを得ることを目的とした。 【研究デザイン】アウトカム評価者に対して割付結果を盲検化したランダム化比較試験。 【セッティング】単一施設試験。 【参加者】抗シワ製品評価ガイドラインのシワグレード(0:無い~7:著しく深い)において小ジワ(1~3)に該当し、適格基準を満たした25例。 【介入】介入群には、毎日1回、2週間、洗顔・消毒後に片側の目尻に鍼長0.3mmの円皮鍼を用いて、5回/秒程度の頻度で1分間タッピングした直後に指定の美容液を塗布するよう指示した。対照群には、鍼を抜去した円皮鍼を用いて介入群と同様のスキンケアを行うよう指示した。 【主要なアウトカム評価】主要なアウトカム評価項目はシワグレードとし、シワの評価に熟達した者が1/4値で評価した。なお、効能表現として、1未満の減少を軽減、1以上の減少を改善とした。 【主な結果】対照群では12例中3例(25%)が軽減したのに対して、介入群では13例中4例が改善、5例が軽減し、計9例(69%)で効能が認められ、リスク比は2.8(95%信頼区間:1.0~7.9、P =0.03) であった。 【結論】小ジワに対して円皮鍼で散鍼術を行い、直後に美容液を塗布するスキンケアを14日間行うと、わずかな痛みを伴うが約7割の対象者に効能が認められ、その割合は美容液を塗布するだけより約3倍であった。