著者
田原 晃
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.205-211, 2011-06-20 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

鉄鋼材料を健全に使用するためには,使用される環境の腐食性評価が重要である。腐食性評価には対象材料の実暴露試験による腐食速度の測定と使用環境の環境因子から推定する二つの方法がある。実暴露による評価は高精度ではあるが長期間を有し,一方,環境因子からの推定では比較的短期間で評価が可能であるが精度が劣るという特徴を有している。実暴露試験では,近年,遮へい暴露試験が重視されており,飛来塩分の多い環境では直接暴露試験の数倍の腐食速度が観察される場合もある。今後,正確な大気環境の腐食性評価を行うためには,新たな暴露試験も必要であるが,従来の腐食データのデータベース化も重要なカギを握っており,NIMSでもこれらの課題に取り組んでいるところである。
著者
野田 和彦 片山 英樹 升田 博之 小野 孝也 田原 晃
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.368-374, 2005-08-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
55
被引用文献数
3 5

材料の実用に際し, 大気腐食は身近にして多くの課題を有する問題であるが, 一般的な電気化学測定による評価が困難であるため, 大気腐食評価法に関して多くの取り組み, 試行がなされている。ここでは, 大気腐食性評価におけるモニタリング技術と表面観察法を中心とした大気腐食評価法を紹介した。モニタリングにおいては, 大気暴露試験, ACMセンサ, 交流インピーダンス法, QCMについて解説し, その有効性と適用範囲を整理した。鉄鋼材料の大気腐食性評価に用いたさび膜のイオン透過抵抗測定およびイオン選択透過性評価について, 試料作製から解析の一部を紹介し, 腐食生成物の物性評価の重要性を説明した。さらに, 表面観察法としてケルビン法や原子間力顕微鏡を用いた表面電位測定, 表面pH分布測定の有効性を解説することで, 表面可視化技術の発展と大気腐食性評価への適用の期待を示した。
著者
藤橋 健太 奥地 誠 押川 渡 田原 晃 篠原 正 片山 英樹
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo‐to‐Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.216-221, 2018
被引用文献数
1

<p>再生可能エネルギー固定買取制度を背景に,太陽光発電設備は急増した.太陽光発電設備の基礎杭は,浅層土壌中に金属表面が接し,地際部より突出している.本研究では,この環境における腐食の把握を目的に,杭状試験体の暴露試験と暴露試験場土壌の分析を行った.浅層土壌中の腐食量は,土壌中の腐食量として一般的に示される年間0.02 mmの腐食量を上回った.それらの腐食量は各土壌を電解質とした分極抵抗測定結果と良い相関を得た.地際部のマクロセル腐食は,土地造成など人為的な作用により土壌の化学組成が大きく変化することが一因であると考えられる.</p>