著者
山脇 加奈子 吉川 峰加 津賀 一弘 久保 隆靖 田地 豪 赤川 安正
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.179-184, 2015 (Released:2015-04-18)
参考文献数
19

症例の概要:患者は73歳男性で脳血管性認知症を有しており,認知症病棟に入院中である.唾液や食物を飲み込みにくいという主訴の下,摂食観察を行ったところ多量の口腔内食物残留および喫食率の低下を認めた.また,嚥下造影検査(Videofluoroscopic examination of swallowing: VF)では,舌搾送運動の不良,嚥下反射の惹起遅延,ならびに口蓋から咽頭部にかけての食物残留を認めた.そこで,従来からの口腔機能リハビリテーションに加え,飴を舐める機能を応用したリハビリテーションを6カ月間行い,訓練介入前後および介入期間中の嚥下機能,口腔機能,口腔内環境,体重および摂食状況を観察したところ,舌搾送運動の改善,最大舌圧値,体重,喫食率の増加,口腔内の食物残留量や細菌数の減少を認めた.考察:中等度認知症患者に対し,従来のリハビリテーションに加えて,複雑な指示理解を必要としない飴を舐めるリハビリテーションを継続することにより,口腔内および口腔周囲筋の廃用防止と口腔内環境の改善につながったものと考えられた. 結論:6カ月間の本口腔機能リハビリテーションにより,口腔の機能と環境に改善を認めたことより,中等度認知症患者において,飴を用いたリハビリテーションが有効である可能性が示唆された.
著者
田地 豪 二川 浩樹
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.399-404, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
13

平成17年,わが国で初めて広島大学歯学部に4年制の歯科技工士養成機関である口腔保健学科口腔保健工学専攻が設置された.歯科技工士をオーラルエンジニアと捉え,新しいオーラルエンジニアには工学的知識・技能のほかに,生物学的知識・技能,高度専門医療やチーム医療などに関する能力が必要になると考え,教育カリキュラムを策定した.教養教育の充実,材料や機器の革新に伴う専門教育の強化,関連分野の教育の実践を目指し,特色ある授業科目を設定している.これまでの教育の結果,卒業生は多方面で活躍しており,今後とも,口腔工学として専門分野や関連分野で活躍できる人材の育成に努めていきたいと考えている.
著者
大倉 恵美 石井 仁美 高本 祐子 高山 幸宏 牧平 清超 熊谷 宏 佐々木 正和 田地 豪 二川 浩樹
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.258-265, 2012
参考文献数
10

本研究では市販口腔保湿材13種類と試作品3種類を用いて,その粘性,湿潤度と香り,味,舌触り,潤いについて物性評価および官能評価を行った.粘性は粘度の低い口腔保湿材で数mPa・sから高い口腔保湿材で数千mPa・sと口腔保湿材の間で大きな差があった.口腔保湿材の粘度は温度が高くなると低くなり,常温で粘度が高くても口腔内では粘度が低くなると考えられた.湿潤度は,フィットエンジェルジェルタイプで最も高くなり,ついでバイオティーンマウスウォッシュ,試作品(ウメ,グリーンアップル)が高くなった.官能試験ではVAS法を用いて,香り,味,舌触り,潤いを評価した.口腔保湿材ごとに特徴があり味や香りに対する好みなども分かれていた.これより,口腔保湿材には粘性や湿潤度などの物性に加えて味や香りなどの好みもあり,それぞれの特徴を理解し,患者に合わせて選択する必要があると考えられた.