著者
戸井田 哲也 中林 宣男
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.231-240, 1996-05-25 (Released:2018-04-06)
参考文献数
28
被引用文献数
4

酸による脱灰は象牙質コラーゲンを変性させる場合があり, この脱灰象牙質は乾燥により容易に収縮する. 収縮した脱灰象牙質のモノマー透過性は低いため, そこに樹脂含浸象牙質を生成させることは困難である. 研削面の一部をプロテクトバニッシュで保護した後に接着操作を行い, その接着縦断面を塩酸および次亜塩素酸ナトリウムに浸漬させてSEM観察することは, 樹脂含浸象牙質の生成のメカニズムを理解するのに有効な方法である. この観察法により, リン酸のエッチング時間を延長すると象牙質の脱灰はそれだけ深く進行し, 乾燥による脱灰象牙質の収縮の度合いも大きくなること, リン酸の脱灰力は解離したリン酸の濃度と量に関係することを明らかにすることができた.
著者
齊藤 仁弘 大木 裕玄 臼井 伸行 笹尾 道昭 河西 宗一郎 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.38-45, 1999-01-25 (Released:2018-04-06)
参考文献数
30
被引用文献数
1

寒天・アルジネート連合印象法に用いられる寒天印象材およびアルジネート印象材と,歯科用硬質石こうおよび超硬質石こうとの組み合わせから得られたそれぞれの石こう模型の細線再現性および表面粗さを測定し,それらの適合性について検討した.その結果,以下の事柄が明らかとなった. 寒天印象材との組み合わせについては,細線再現性および表面粗さの両者で評価Aとなったのは,硬質石こうでは24組中4組,超硬質石こうでは30組中0組であった.アルジネート印象材との組み合わせについては,20組中10組,超硬質石こうでは25組中2組であった。したがって,両印象材には,硬質石こうのほうが超硬質石こうよりも適合性が良好であった.また,寒天およびアルジネート印象材と石こう模型材とのそれぞれの適合性を比較すると,アルジネート印象材との組み合わせのほうが寒天印象材との組み合わせよりも適合性が良好であった.
著者
峯 篤史 萩野 僚介 伴 晋太朗 松本 真理子 壁谷 知茂 矢谷 博文
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.135-141, 2022-05-25 (Released:2022-06-20)
参考文献数
13

2014年に保険導入されてから8年間で,CAD/CAMレジン冠は日本の臨床に着々と普及してきている.この新規補綴装置の質を向上させるために,わが国は「臨産官学民連携」で奮起してきた.臨床研究の成果として4年予後調査では,小臼歯CAD/CAMレジン冠の生存率は96.4%であり,脱離をトラブルと捉えた場合の成功率は77.4%であった.基礎的データの蓄積も進み,マトリックスレジンを被着対象としたレジンプライマーの有用性が明らかとなっている.このように,CAD/CAMレジン冠の臨床と基礎研究から,さらなるコンポジットレジン系材料としての可能性がみえてきている.今後,「日本独自のメタルフリー治療」が確立されるために,歯科理工学会にも強く期待せずにはいられない.本総説の内容は第78回日本歯科理工学会学術講演会(担当校:岡山大学)における学会主導型シンポジウム「さらなるコンポジットレジン系材料の可能性を探る!」で発表した.
著者
竹内 義真 米山 隆之 小泉 寛恭 河合 達志
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.41-45, 2021-01-25 (Released:2021-04-06)
参考文献数
13

CAD/CAMによる間接修復用コンポジットレジン冠の適応が大臼歯まで拡大されているが,特に歯科用金属アレルギー患者における第二大臼歯への適応では歯冠高径が十分に得られない症例が多く,脱離,破損の懸念がある.このような症例における代替技術として,日本歯科理工学会では,高い機械的性質と耐食性を有し,生体安全性に優れたチタンおよびチタン合金の鋳造法による歯冠修復物について検討し,日本補綴歯科学会とともに医療技術評価提案書を申請した結果,大臼歯における純チタン第2種の全部鋳造冠が令和2年6月に保険収載された.また,チタンの歯科鋳造には特殊な鋳造機や専用の埋没材を用いる必要があることから,新技術として承認された.また,健康保険適用の金属材料として広く用いられてきた金銀パラジウム合金の価格は高騰を続けており,その代替材料としても期待される.
著者
小峰 太
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.58-62, 2022-01-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
11

歯冠補綴治療において,歯冠補綴装置は装着材料を用いて支台歯に装着され,長期間にわたり口腔内で機能することが重要である.現在,セラミック修復において,高い機械的強度,優れた生体親和性を持つジルコニアが,クラウン・ブリッジ,インプラントアバットメントおよび上部構造など幅広く臨床応用されている.歯の保存の観点から,歯質削除量の少ないジルコニア接着ブリッジが紹介されているが,その際には支台歯と強固で安定したレジン接着が必須となる.ジルコニア接着ブリッジの成功には,安定した接着のみならず,適切な臨床的なプロトコルが必要であると報告されている.そこで,臨床におけるジルコニア接着ブリッジの長期安定性を獲得するための要件などについて紹介し,今後のジルコニア接着ブリッジの可能性について提示する.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 友清 直 高野 守 吉橋 和江 安斎 碕 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.477-482, 1991
被引用文献数
11

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 3種の2元系レジンのモノマー組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとして合成したシクロホスファゼン系のP_4N_4(CF_3CH_2O)_2[CH_2=C(CH_3)COOCH_2CH_2O]_6, [4PN-(TF)_2-(EMA)_6]と市販のUDMA, Tri-EDMAおよびBMPEPPとを用い, 4PN-(TF)_2-(EMA)_6に市販メタクリレートモノマーを20〜80wt%配合して調製した.試作したレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれの系の場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, RDBは, 4PN-(TF)_2-(EMA)_6に配合する市販モノマーの配合量の増加にともない単調に減少し, 重合率が増大した.4PN-(TF)_2-(EMA)_6に, UDMAあるいはBMPEPPを配合した場合, 粘度が増大するが, RDBは減少した.
著者
倉田 茂昭 二瓶 智太郎 楳本 貢三
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.466-470, 2005
参考文献数
11
被引用文献数
2

銀を抗菌性物質としてもつモノマーであるメタクリル酸銀(MAg)を用い, 抗菌性歯科用レジンの可能性を試みた.すなわち, MAgのメタクリル酸メチル(MMA)に対する溶解性を調べ, 次にMAgを含有するMMAの重合体を調製し, 重合体の圧縮および曲げ強さ, ならびに重合体から水に溶出する銀の溶出量を評価した.その結果, MAgはMMAに84μmol/l溶解し, その濃度は抗菌性を発現できる範囲内であった.MAg含有重合体は, 無色透明であり審美的にも問題はなかった.重合体の圧縮および曲げ強さはPMMAと有意差は認められず, 重合体からの銀の溶出も少なく抗菌性歯科用レジンとして期待できた.
著者
藤島 昭宏 竹内 健一郎 佐藤 充羽 佐藤 康太郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.241-250, 2012
参考文献数
15

研磨したチタンに4種類の表面処理(サンドブラスト,プライマー,2種類のトライボケミカル)を施し,7種類のレジンセメントを用いてチタン接着体を接着させ,せん断接着強さ(SBS)の測定を行った.チタン研磨面における接着強さは,機能性モノマーを含有するアンフィルド系レジンセメントでは,コンポジット系レジンセメントよりも顕著に高いSBSを示したが,表面処理を施しても接着強さには影響しなかった.サンドブラスト処理面へのプライマー(B-MDP)処理では,機能性モノマーを含有しないコンポジット系レジンセメントは,顕著に高いSBSを示した.また,トライボケミカル(TRB)処理においても,B-MDP処理面とほぼ同等の高いSBSを示した.以上の結果から,チタンに対する接着強さの増加には,B-MDP処理やTRB処理を施した後,機能性モノマーを含有しないレジンセメントを用いた場合,最も効果的であった.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 宮﨑 紀代美 友清 直 高野 守 吉橋 和江 安斎 碕 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.127-135, 1992
被引用文献数
7

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, モノマーの種類および触媒組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, 合成したシクロホスファゼン系モノマー3種および市販モノマー8種の計11種に, 6種の触媒組成を配合して調製した.試作したレジンについて, FT-IRを用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれのレジンの場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.重合禁止剤を配合したレジンの場合, 重合率は9G>BPE200≧4G≧3G≧U-2TH>BPE100>EPM800+3G≧2.6E>(EMA)<sub>6</sub>>(EMA)<sub>7</sub>>(EMA)<sub>8</sub>の順となる傾向であった.一方, 重合禁止剤を配合しないレジンの場合, 重合率はBPE200>9G≧4G≧3G≧U-2TH>BPE100>EPM800+3G≧2.6E>(EMA)<sub>6</sub>>(EMA)<sub>7</sub>>(EMA)<sub>8</sub>の順となる傾向であった.シクロホスファゼン系のモノマーを用いたレジンの場合, 重合性官能基の置換数の減少とともに重合率が増大した.EDMA系およびBMPEPP系のモノマーを用いたレジンの場合, エチレングリコール鎖の鎖員数の増加とともに重合率が増大した.11種のモノマーを可視光線重合型アンフィルドレジンとした場合, 重合率は, 触媒組成A(CQ0.50wt%, DMAEM1.00wt%, BHT0.01wt%)およびC(CQ0.30wt%, DB0.15wt%, DMAB-EMA1.40wt%, BHT0.01wt%)を配合した場合が, 比較的高い値を示した.重合禁止剤BHTを配合しない場合, 配合した場合に比較して重合率は高い値を示したが, 保存安定性が低かった.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 吉橋 和江 安斎 碕 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.213-218, 1991
被引用文献数
10

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 光増感触媒の組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとして合成したシクロホスファゼン系のP<sub>4</sub>N<sub>4</sub>(CF<sub>3</sub>CH<sub>2</sub>O)<sub>1</sub>[CH<sub>2</sub>=C(CH<sub>3</sub>)COOCH<sub>2</sub>CH<sub>2</sub>O]<sub>7</sub>[4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>]と市販のTri-EDMAを採用し, これに, 光増感触媒の配合量を種々変化させて配合し調製した.光増感剤は, カンファーキノン(CQ)およびジベンゾイル(DB)を用い, 還元剤は, メタクリロキシエチル-p-ジメチルアミノベンゾエートを用いた.18種のレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いKBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および光照射後の所定時間に経時的に行った.残存二重結合量(RDB)は, 光照射前のレジン中の二重結合量に対する百分率で表示した.4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>の場合, RDBは, 光照射開始5分および1日後でそれぞれ56〜78%および47〜71%を示した.また, Tri-EDMAの場合, RDBは, 光照射開始5分および1日後でそれぞれ27〜63%および15〜47%を示した.RDBは, モノマーとして4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>を用いた場合, CQの配合量の増加にともない有意に減少し, 一方, Tri-EDMAを用いた場合はDBの配合量の増加にともない有意に減少した.
著者
鈴木 哲也 織田 展輔 内田 光春 早川 巖 高橋 英和
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.165-170, 2002
参考文献数
20
被引用文献数
4

本研究の目的は光重合型レジンが上顎全部床義歯の基礎床用レジンとして有用であるか,常温重合型基礎床用レジンと比較し,検討することである.市販の光重合型基礎床用レジン3種類と常温重合型基礎床用レジン2種類を用い,曲げ特性,ヌープ硬さ,寸法変化率,フィラー含有量および模型への適合性を測定した.光重合型レジンの曲げ特性とヌープ硬さは各製品間で異なり,さらに厚さの違いが性質に影響する製品も認められた.光重合型レジンのヌープ硬さと曲げ特性,特に弾性係数は常温重合型レジンより有意に大きかった.光重合型レジンの浮き上がり量は常温重合型より模型中央部で有意に大きかった.以上の結果から,光重合型レジンは適合性については常温重合型レジンよりやや劣るものの,十分な機械的特性を有し,かつ操作性に優れていることから,上顎全部床義歯の基礎床として有用であることが示唆された.
著者
廣瀬 英晴 菊地 久二 斉藤 仁弘 小堀 雅教 芝原 健夫 安斎 碕 大橋 正敬
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.517-524, 1989
被引用文献数
1

本研究は, 吸水および溶解量の少ない可視光線重合型レジンの開発を目的として, シクロホスファゼンモノマー3種および市販モノマー3種を用いて可視光線重合型のアンフィルドレジンを試作し, それぞれの硬化物の水中での吸水量, 溶解量, MeOH中での膨潤量, 溶解量, THF中での膨潤量および機械的性質について検討したものである.その結果, 吸水量は, いずれのモノマーを用いた場合も経時的に増大した.また, 30日間水中浸漬した場合の溶解量は, 4PN-(EMA)<sub>8</sub>, 4PN-(TF)<sub>1</sub>-(EMA)<sub>7</sub>, 4PN-(TF)<sub>2</sub>-(EMA)<sub>6</sub>, Tri-EDMA, BMPEPPおよびBis-GMA+Tri-EDMAの場合, それぞれ順に0.16, 0.20, 0.51, 0.65, 0.17および0.81%を示した.MeOH中での膨潤量は, Bis-GMA+Tri-EDMAおよび4PN-(TF)<sub>2</sub>-(EMA)<sub>6</sub>の場合を除き, いずれも経時的に増加する傾向を示した.30日間MeOH中に浸漬した場合の溶解量は, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合および市販モノマーを用いた場合, それぞれ0.09〜0.36および1.36〜5.40%を示した.30日間THF中に浸漬した場合の経時的な膨潤量は, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合に市販モノマーを用いた場合と比較して小さかった.一方, 圧縮強さは, いずれのモノマーを用いた場合も230〜275MPaを示し, 曲げ強さは, シクロホスファゼンモノマーを用いた場合は, いずれも45MPa以下を示し, 市販モノマーを用いた場合は59〜90MPaを示した.
著者
高野 守
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.147-153, 1993
被引用文献数
2

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, BisGMAを用いた2種の二元系レジンのモノマー組成と重合率および粘度との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてBisGMA[2, 2-ビス{4-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル}プロパン], TriEDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)およびBMPEPP[2, 2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン]を用い, BisGMAに希釈モノマーをそれぞれ20〜100wt%の範囲で配合して調製した.試作したレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれの系の場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, RDBは, BisGMAに配合する希釈モノマーの配合量の増加に伴い減少し, 80wt%で極小を示した.二元系レジンの重合率は, 成分モノマー単独の重合率の相加平均より大きかった.希釈モノマーの配合量が20〜80wt%の範囲の場合, 2種の二元系レジンの重合率はほぼ同じであった.二元系レジンの粘度は, いずれも希釈モノマーの配合量の増加に伴い単調に減少したが, 粘度の低減効果はTriEDMAの方がBMPEPPより大きかった.二元系レジンの重合率は, 成分モノマーの重合率の相加平均およびその粘度の増減に支配されることが示唆された.
著者
友清 直
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.225-232, 1992
被引用文献数
1

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 複合増感剤の組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてトリエチレングリコールジメタクリレートを用い, これに種々組成を変化させた複合増感剤を配合して調製した.光増感剤としてはカンファーキノン(CQ), ベンズアンスロン(BA), ジベンゾイル(DB), チオキサンテン-9-オン(T9), 8-キノリンスルホニルクロライド(QC)および3-フェニル-5-イソオキサゾロン(PIO)を用いた.還元剤としては, メタクリロキシエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート(DMAB-EMA)を用いた.重合禁止剤は, 2, 6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を用いた, 複合増感剤の基本組成(NON)は, CQ0.30wt%, DMAB-EMA1.40wt%およびBHT0.01wt%とし, これに他の光増感剤を1〜3種配合して用いた.試作したレジンについて, FT-IRを用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, BA-PIO系のレジンの場合を除いて, いずれの場合も, 光照射開始5分以降経過時間(対数表示)と直線関係で減少した.BA-PIO系のレジンは, 重合反応の誘導期を示した.NONに光増感剤1種を配合した複合増感剤を用いた場合の重合率は, 光照射開始5分後でQC>DB>T9>NON>BAの順であった.複合増感剤に用いる補助光増感剤としては, QCが最適で, その配合量は0.30wt%であった.
著者
髙橋 辰政
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.412-419, 1990
被引用文献数
7

重合した可視光線重合型レジン中の残存二重結合量(RDB)の経時的変化を検討した.RDBは, 試作のアンフィルドレジン5種, 市販のコンポジットレジン8種および歯冠用硬質レジン3種について, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, 液膜法に準じて測定した.吸光度の測定は, 光照射前および光照射後の所定の時期に行い, RDBは, 光照射前の二重結合量に対する百分率で表示した.5種のアンフィルドレジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, モノマーの種類によって5分でのRDBおよびこの時間以降でのRDBの減少速度に差が認められた.5種のアンフィルドレジンのなかで, 光照射開始5分後のRDBの最も少ない値を示したのは, モノマーとしてBMPEPP(BPE-200)を用いた場合で, 逆に最も多い値を示したのは, モノマーとして4PN-(TF)_2-(EMA)_6を用いた場合であった.Tri-EDMAを用いたアンフィルドレジンの場合, 光照射時間の延長にともない, RDBは減少したが, 1カ月後ではいずれの照射時間のものもほぼ同じ値を示した.市販可視光線重合型コンポジットレジンおよび歯冠用硬質レジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, いずれのレジンの場合もRDBは, ベースモノマーがBis-GMA系の場合に少なく, UDMA系で多かった.
著者
草野 綾 藤島 昭宏 竹内 健一郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.192-201, 2011
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究の目的は,合着材料としてのレジンセメントのチタンに対する接着性を評価するのに適した接着試験法を検討することである.チタン研磨面およびサンドブラスト処理面に対し5種類の接着性レジンセメントを用いて引張接着試験とせん断接着試験を行い,それぞれの接着強さならびに残留セメント率(RRC)の関係について検討した.接着強さは,せん断接着強さ(SBS)が引張接着強さ(TBS)より顕著に大きい値を示し,統計学的有意差(p<0.05)が認められた.SBSとTBSの関係は,チタン研磨面では相関関係(R<sup>2</sup>=0.82)が認められたが,サンドブラスト処理面では明瞭ではなかった(R<sup>2</sup>=0.17).RRCの測定は,チタン研磨面だけで測定可能であり,特にTBSでは高い相関(R<sup>2</sup>=0.99)が認められた.チタン研磨面を用いた引張接着試験は,接着強さだけでなく破断様式をRRCにより簡便に評価できるため,レジンセメントの接着性を評価するのに好ましい接着試験法であることが示唆された.
著者
森田 直久
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.218-239, 1990-03-25 (Released:2018-04-03)
被引用文献数
1

本発明の目的は, 鋳造床程度の大きさの純チタンを電解研磨により鏡面にまで仕上げることである.従来から, チタンの電解研磨は, その強い酸化傾向のために困難とされてきたが, 今回非水系の電解液を用い, 被研磨体の形状や電解条件などに工夫を加えた結果, 30cm2程度の大きさの純チタン板を電解研磨により鏡面仕上げすることができた.まず, 小型試片の電解研磨条件を見いだした.しかし, 大型試片の場合には同じ条件では, 研磨面の中程に顕著な梨地を生じ, 均一な研磨はできなかった.梨地部分は, 表面あらさ値が大きく, このままでは生体材料に適さない.このような梨地は電解液面を貫く被研磨体の面積を小さくすることで阻止できることを見いだした.また, 純チタン鋳造体の電解研磨は, 加工材の場合と同一の研磨条件で可能であった.さらに, アルコールを主成分とする電解液の溶媒成分の配合を変えることによって, より安全で, ふかみのある鏡面研磨が可能で, 疲労しにくく, 使用回数などの制限の比較的緩やかな優れた電解液を開発した. 例 エチルアルコール70ml iso-プロピルアルコール30ml 塩化アルミニウム6g 塩化亜鉛25g 電解条件 電圧30V 通電時間6分 電解液温25℃
著者
日比野 靖 橋本 弘一
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.554-559, 1995
参考文献数
14
被引用文献数
8

本研究の目的は強化型グラスアイオノマーセメントの諸性質を測定し, 従来型のグラスアイオノマーセメントと比較検討を行うことである. 強化型グラスアイオノマーセメント (Fuji DUET) と従来型のグラスアイオノマーセメント (Fuji I) を本研究に使用した. 各セメントの練和はメーカー指定の粉液比にて行った.稠度, 硬化時間, 被膜厚さ, 圧縮強さならびに崩壊率をADA規格No.8に準じて測定を行った. また, 操作時間の測定もあわせて行った. 接着強さならびに接触角の測定は従来から行ってきた方法により測定した. その結果, 強化型グラスアイオノマーセメントの稠度, 硬化時間, 操作時間ならびに圧縮強さは従来型と比較して小さい結果を示した. 被膜厚さならびに崩壊率については従来型と差が認められなかった. 強化型グラスアイオノマーセメントの各被着体に対する接触角はチタンを除いて従来型と比較して有意に大きな結果を示した. 強化型グラスアイオノマーセメントの各被着体に対する接着強さはAu-Ag-Cu合金を除いて従来型と差が認められなかった.<br> 以上のことから, 強化型グラスアイオノマーセメントは稠度, 操作時間ならびに圧縮強さが小さいものの, 従来型と比較してその諸性質に懸念される問題はないことが示唆された.
著者
荒木 吉馬 川上 道夫 菊池 雅彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.299-306, 1985
被引用文献数
3

前報において, トレー内の圧力分布は, 用いるトレーの形態に強く依存するものであることを指摘したが, 今回これをさらに具体的に実証するため, 3種の円形トレー, すなわち平板状のFタイプ, 同心円状のV字形溝を付したVタイプおよびVタイプの周縁にふちどりを付したRタイプにおいて内部圧力分布を測定するとともに, そのトレー形態による効果を流体力学的に検討した.<br> 各点の圧力は, Rタイプ, Vタイプ, Fタイプの順に大きかった.VタイプとRタイプのV字形溝より内側の圧力分布はほぼ平坦な形であり, 溝の部分で急激な圧力降下を示した.また, Rタイプのふちどり部分においても著明な圧力降下がみられた.<br> これらの特徴は解析結果とよく対応している.つまり溝およびふちどり部分では, 試料のせん断速度が高くなり, さらに溝の部分では流動路も長くなるので, それぞれの部分において特に圧力降下が著しくあらわれることになる.<br> 以上の結果から, トレー形態や筋圧形成が圧力分布に及ぼす影響はかなり明確に把握できるものと思われる.