著者
峯 篤史 萩野 僚介 伴 晋太朗 松本 真理子 壁谷 知茂 矢谷 博文
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.135-141, 2022-05-25 (Released:2022-06-20)
参考文献数
13

2014年に保険導入されてから8年間で,CAD/CAMレジン冠は日本の臨床に着々と普及してきている.この新規補綴装置の質を向上させるために,わが国は「臨産官学民連携」で奮起してきた.臨床研究の成果として4年予後調査では,小臼歯CAD/CAMレジン冠の生存率は96.4%であり,脱離をトラブルと捉えた場合の成功率は77.4%であった.基礎的データの蓄積も進み,マトリックスレジンを被着対象としたレジンプライマーの有用性が明らかとなっている.このように,CAD/CAMレジン冠の臨床と基礎研究から,さらなるコンポジットレジン系材料としての可能性がみえてきている.今後,「日本独自のメタルフリー治療」が確立されるために,歯科理工学会にも強く期待せずにはいられない.本総説の内容は第78回日本歯科理工学会学術講演会(担当校:岡山大学)における学会主導型シンポジウム「さらなるコンポジットレジン系材料の可能性を探る!」で発表した.
著者
竹内 義真 米山 隆之 小泉 寛恭 河合 達志
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.41-45, 2021-01-25 (Released:2021-04-06)
参考文献数
13

CAD/CAMによる間接修復用コンポジットレジン冠の適応が大臼歯まで拡大されているが,特に歯科用金属アレルギー患者における第二大臼歯への適応では歯冠高径が十分に得られない症例が多く,脱離,破損の懸念がある.このような症例における代替技術として,日本歯科理工学会では,高い機械的性質と耐食性を有し,生体安全性に優れたチタンおよびチタン合金の鋳造法による歯冠修復物について検討し,日本補綴歯科学会とともに医療技術評価提案書を申請した結果,大臼歯における純チタン第2種の全部鋳造冠が令和2年6月に保険収載された.また,チタンの歯科鋳造には特殊な鋳造機や専用の埋没材を用いる必要があることから,新技術として承認された.また,健康保険適用の金属材料として広く用いられてきた金銀パラジウム合金の価格は高騰を続けており,その代替材料としても期待される.
著者
小峰 太
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.58-62, 2022-01-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
11

歯冠補綴治療において,歯冠補綴装置は装着材料を用いて支台歯に装着され,長期間にわたり口腔内で機能することが重要である.現在,セラミック修復において,高い機械的強度,優れた生体親和性を持つジルコニアが,クラウン・ブリッジ,インプラントアバットメントおよび上部構造など幅広く臨床応用されている.歯の保存の観点から,歯質削除量の少ないジルコニア接着ブリッジが紹介されているが,その際には支台歯と強固で安定したレジン接着が必須となる.ジルコニア接着ブリッジの成功には,安定した接着のみならず,適切な臨床的なプロトコルが必要であると報告されている.そこで,臨床におけるジルコニア接着ブリッジの長期安定性を獲得するための要件などについて紹介し,今後のジルコニア接着ブリッジの可能性について提示する.
著者
藤島 昭宏 竹内 健一郎 佐藤 充羽 佐藤 康太郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.241-250, 2012
参考文献数
15

研磨したチタンに4種類の表面処理(サンドブラスト,プライマー,2種類のトライボケミカル)を施し,7種類のレジンセメントを用いてチタン接着体を接着させ,せん断接着強さ(SBS)の測定を行った.チタン研磨面における接着強さは,機能性モノマーを含有するアンフィルド系レジンセメントでは,コンポジット系レジンセメントよりも顕著に高いSBSを示したが,表面処理を施しても接着強さには影響しなかった.サンドブラスト処理面へのプライマー(B-MDP)処理では,機能性モノマーを含有しないコンポジット系レジンセメントは,顕著に高いSBSを示した.また,トライボケミカル(TRB)処理においても,B-MDP処理面とほぼ同等の高いSBSを示した.以上の結果から,チタンに対する接着強さの増加には,B-MDP処理やTRB処理を施した後,機能性モノマーを含有しないレジンセメントを用いた場合,最も効果的であった.
著者
草野 綾 藤島 昭宏 竹内 健一郎 宮﨑 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.192-201, 2011
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究の目的は,合着材料としてのレジンセメントのチタンに対する接着性を評価するのに適した接着試験法を検討することである.チタン研磨面およびサンドブラスト処理面に対し5種類の接着性レジンセメントを用いて引張接着試験とせん断接着試験を行い,それぞれの接着強さならびに残留セメント率(RRC)の関係について検討した.接着強さは,せん断接着強さ(SBS)が引張接着強さ(TBS)より顕著に大きい値を示し,統計学的有意差(p<0.05)が認められた.SBSとTBSの関係は,チタン研磨面では相関関係(R<sup>2</sup>=0.82)が認められたが,サンドブラスト処理面では明瞭ではなかった(R<sup>2</sup>=0.17).RRCの測定は,チタン研磨面だけで測定可能であり,特にTBSでは高い相関(R<sup>2</sup>=0.99)が認められた.チタン研磨面を用いた引張接着試験は,接着強さだけでなく破断様式をRRCにより簡便に評価できるため,レジンセメントの接着性を評価するのに好ましい接着試験法であることが示唆された.
著者
蛯原 善則
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.64-69, 2020

<p>様々な装置やソフトウェアから出力されるデジタルデータにより,歯科治療に取り組む医療関係者,患者までもがイメージを共有し,多くの視点から考察された診断・治療が行われている.一方で,デジタル機器は先進デバイスが多いため,医療機器のカテゴリの判断や安全性・有効性担保の評価方法に戸惑う場面も多い.<br>各装置やシステムの適応範囲の拡大,市場から要望される新機能追加などは永遠に継続すべき開発テーマである.それに加えて,複数のデジタルデータを融合させた活用方法やデータベースなどを活用した新たなシステムの提案,デジタルデータの共有によるトータルシステムの提供などにより,これからの健康長寿社会を実現するためのデジタルワークフローをより一層発展させていきたい.</p>
著者
青木 春美 宮坂 平 石田 祥己 青柳 有祐 三浦 大輔
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.171-178, 2018-07-25 (Released:2018-08-28)
参考文献数
22

各種次亜塩素酸水(強酸性電解水,弱酸性電解水,微酸性電解水),義歯清掃剤,電解次亜水の各液に金合金(キャスティングゴールドM.C.タイプⅣ),金銀パラジウム合金(キャストウエルM.C.,以降,金パラ),銀合金(ミロブライト),純チタン( JIS 1種,Ti),コバルトクロム合金(コバルタン,以降,Co-Cr合金)の計5種を1日間と3日間浸漬したときの色差,光沢度変化,重量変化率を調べた.さらに電子線マイクロアナライザ(EPMA)により構成元素と塩素の面分析を行った.金合金と金パラは,強酸性電解水,弱酸性電解水に浸漬すると色差が大きく,光沢度が小さくなった.銀合金は微酸性電解水に浸漬すると色差が最も大きく,光沢度はすべての液で著しく小さくなった.Tiは色差,光沢度変化,重量変化は認められなかった.同様に,Co-Cr合金は電解次亜水に浸漬すると色差が大きかったが,他の浸漬液では光沢度変化,重量変化はほとんど認められなかった.EPMAによる元素面分析結果から,金合金と金パラでは,塩素濃度の高い部分は銀濃度の高い部分と一致していた.他方,銀合金では義歯清掃剤に浸漬したときには,塩素濃度の高い部分は銀濃度の低い部分と一致していた.
著者
村上 高宏 西山 典宏 會田 雅啓
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.41-48, 2017-01-25 (Released:2017-04-26)
参考文献数
19

本研究では,市販ジルコニア接着システムを用い,プライマーがジルコニア接着に及ぼす影響を検討した.ジルコニア研磨面をセラミックプライマーⅡ,モノボンドプラス,クリアフィルセラミックプライマープラス,トクヤマユニバーサルプライマーにて処理した.プライマー処理ジルコニア面をテトラヒドロフランで洗浄し,水の接触角を測定した.また,プライマー処理したジルコニア研磨面およびサンドブラスト面にレジンセメントを接着させ,圧縮せん断接着強さを測定した.プライマー処理ジルコニア面に対する接触角はプライマー間で異なった.レジンの初期接着強さはジルコニア研磨面にサンドブラスト処理すると上昇し,プライマー処理するとさらに上昇した.しかし,プライマー処理ジルコニア研磨面にレジンを接着させた後サーマルサイクル負荷すると,セラミックプライマーⅡ以外のプライマーは接着強さが低下した.以上の結果から,水の接触角とレジンの初期接着強さとの間には強い相関が認められた.
著者
大倉 恵美 石井 仁美 高本 祐子 高山 幸宏 牧平 清超 熊谷 宏 佐々木 正和 田地 豪 二川 浩樹
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.258-265, 2012
参考文献数
10

本研究では市販口腔保湿材13種類と試作品3種類を用いて,その粘性,湿潤度と香り,味,舌触り,潤いについて物性評価および官能評価を行った.粘性は粘度の低い口腔保湿材で数mPa・sから高い口腔保湿材で数千mPa・sと口腔保湿材の間で大きな差があった.口腔保湿材の粘度は温度が高くなると低くなり,常温で粘度が高くても口腔内では粘度が低くなると考えられた.湿潤度は,フィットエンジェルジェルタイプで最も高くなり,ついでバイオティーンマウスウォッシュ,試作品(ウメ,グリーンアップル)が高くなった.官能試験ではVAS法を用いて,香り,味,舌触り,潤いを評価した.口腔保湿材ごとに特徴があり味や香りに対する好みなども分かれていた.これより,口腔保湿材には粘性や湿潤度などの物性に加えて味や香りなどの好みもあり,それぞれの特徴を理解し,患者に合わせて選択する必要があると考えられた.
著者
武本 真治 春山 亜貴子 松本 倫彦 服部 雅之 吉成 正雄 河田 英司 小田 豊
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.41-46, 2011-01-25 (Released:2017-05-08)
参考文献数
16

次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含有した根管清掃剤で処理した牛歯歯冠象牙質への4-META/MMA-TBB系レジンセメントの接着強さに及ぼす還元剤処理の影響を検討した.根管清掃剤で処理した牛歯歯冠象牙質の接着強さは,根管清掃剤の処理時間が長くなるにしたがって低下した.一方で,根管清掃剤処理後に還元剤を応用するとその接着強さは,根管清掃剤で処理していない牛歯歯冠象牙質の接着強さと同等であることが明らかとなった.また,エッチングと還元剤での処理の順序は接着強さに影響しないことが明らかになった.さらに,根管清掃剤で処理することにより,レジンタグの伸長が抑制されるものの,還元剤を応用するとレジンタグの伸長が抑制されないことが明らかになった.
著者
古賀 のり子 都留 寛治 戸井田 力 高橋 一郎 石川 邦夫
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, 2014-09-20

Effect of treatment condition on carbonation of calcium hydroxide compact was examined. The result indicated that 100% relative humidity was quite effective for carbonation of calcium hydroxide compact. When calcium hydroxide compact was prepared under high compaction pressure, the calcite block with high mechanical property could be obtained after the carbonation although it took longer time to transform to calcite. High temperature more than 200℃ could enhance the carbonation, however, the heating more than 600℃ facilitated calcium oxide formation which caused lower mechanical property.
著者
井波 俊博 谷本 安浩 南 奈緒美 山口 大 西山 典宏 葛西 一貴
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:18844421)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, 2014-03-25

The aim of this study was to apply the dynamic micro-indentation method as a simple method for determining the mechanical behavior of orthodontic wire alloys. Moreover, the effect of the indentation peak load on the mechanical behavior of orthodontic wire alloys was investigated. As a result, we confirmed that the dynamic hardness and elastic modulus of orthodontic wire alloys on micro indentation scales is dependent on the indentation size effect. In conclusion, the dynamic micro-indentation method is a useful technique for determining mechanical properties within very small areas on the surface of orthodontic wires.