著者
大石 一行 田尻 淳一 深田 修司 菱沼 昭 佐藤 伸也 横井 忠郎 橘 正剛 森 祐輔 覚道 健一 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.144-149, 2014

症例は8歳女児。母親は遺伝性髄様癌と診断され甲状腺全摘術と側頸部リンパ節郭清術を受けていた。遺伝を心配した母親に連れられて当院を受診し,<i>RET</i>遺伝子検査でexon11 codon634に母親と同じmissense変異を認めた。超音波検査で甲状腺内に明らかな腫瘤は認めず,カルシトニンやCEAの上昇はなかったが,カルシウム負荷試験では陽性であった。上記の遺伝子変異は髄様癌発症のhigh risk群に分類されるため,髄様癌発症の可能性について両親と面談を繰り返した後,最終的に発症前の予防的甲状腺全摘術を希望された。術後の病理組織診断は微小髄様癌,C細胞過形成が甲状腺内に多発しており,遺伝性髄様癌に一致する所見であった。遺伝性髄様癌に対して海外では幼少時での手術を推奨する施設もあるが,本邦では予防的甲状腺全摘術の報告はほとんどない。今回われわれは予防的甲状腺全摘術を行った遺伝性髄様癌の一女児例を経験したので報告する。
著者
田尻 淳一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.862-869, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
10

最近は検診をする医療機関が増えている.甲状腺に対して超音波検診を行い,甲状腺結節が偶然に発見される.また,頸動脈超音波,胸部CT,PET/CTで偶然に甲状腺結節が見つかる.偶然,画像診断で発見された甲状腺結節は偶発腫と呼ばれる.偶発腫は特別のものではなく,サイズが同じであれば触診で見つかる結節と同じ頻度で甲状腺癌が存在するので,対応は通常の甲状腺結節と同じである.本稿では,偶発腫の対応について述べる.