1 0 0 0 OA 膵臓手術

著者
海道 利実 宮地 洋介 三本松 毬子 中林 瑠美 武田 崇志 鈴木 研裕 松原 猛人 横井 忠郎 嶋田 元
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.186-191, 2022-10-15 (Released:2022-11-15)
参考文献数
23

膵臓手術には,膵頭十二指腸切除術(Pancreaticoduodenectomy:PD)や膵体尾部切除術などがある.特にPDは,膵や胆管,消化管の再建を伴い,術中の腹腔内汚染などに起因する手術部位感染(Surgical site infection:SSI),特に臓器/体腔SSIの頻度が高く,術後在院日数延長の一因となっている.さらに膵臓手術患者は,術前低栄養や糖尿病,サルコペニアなどを合併していることが多く,SSI発生を助長している.したがって,膵臓手術においては,手術手技や術中の感染症発症予防対策とともに周術期代謝栄養管理がきわめて重要である.そこでわれわれは,2020年4月より「PD術後10日以内の自宅退院を目標アウトカムとするクリニカルパス」を作成し,臓器/体腔SSI予防ならびに早期退院を目的とした周術期代謝栄養管理を開始した.術前は評価に基づく術前栄養運動療法,術中は臓器/体腔SSIの発生を防ぐ工夫,術後は早期離床,早期経口摂取開始などである.その結果,PD施行連続30例の臓器/体腔SSI発生率は3例(10%),術後在院日数中央値は8日(6‐26)と良好な結果を得ることができた.
著者
大石 一行 田尻 淳一 深田 修司 菱沼 昭 佐藤 伸也 横井 忠郎 橘 正剛 森 祐輔 覚道 健一 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.144-149, 2014

症例は8歳女児。母親は遺伝性髄様癌と診断され甲状腺全摘術と側頸部リンパ節郭清術を受けていた。遺伝を心配した母親に連れられて当院を受診し,<i>RET</i>遺伝子検査でexon11 codon634に母親と同じmissense変異を認めた。超音波検査で甲状腺内に明らかな腫瘤は認めず,カルシトニンやCEAの上昇はなかったが,カルシウム負荷試験では陽性であった。上記の遺伝子変異は髄様癌発症のhigh risk群に分類されるため,髄様癌発症の可能性について両親と面談を繰り返した後,最終的に発症前の予防的甲状腺全摘術を希望された。術後の病理組織診断は微小髄様癌,C細胞過形成が甲状腺内に多発しており,遺伝性髄様癌に一致する所見であった。遺伝性髄様癌に対して海外では幼少時での手術を推奨する施設もあるが,本邦では予防的甲状腺全摘術の報告はほとんどない。今回われわれは予防的甲状腺全摘術を行った遺伝性髄様癌の一女児例を経験したので報告する。
著者
佐藤 伸也 森 祐輔 橘 正剛 横井 忠郎 山下 弘幸
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.207-216, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
20
被引用文献数
2

当院での甲状腺内副甲状腺腫の頻度は,原発性副甲状腺機能亢進症手術例319例中10例(3.1%)であった。8例が右葉,2例が左葉と右葉に多く,また下極が6例と下極側に多かった。超音波検査では7例が内部低エコーで,6例でドップラー血流の亢進を認めた。MIBIを7例に施行し,5例で集積を認めたが,同時に存在した腺腫様結節にも集積している症例が1例存在した。CTは腫瘍としての存在を提示できるものの質的診断は困難であった。穿刺PTH測定を6例に施行し,5例でPTHの高値を認め局在診断に有用であった。また1例に両側内頸静脈サンプリングPTH測定を行い,PTHの左右差を認め局在診断に有用であった。
著者
横井 忠郎 森 祐輔 橘 正剛 佐藤 伸也 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.197-201, 2014 (Released:2014-10-31)
参考文献数
22

古典的な原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を日常診療で診ることは相対的に少なくなっており,むしろ無症候性で発見されることが増えている。さらには正カルシウム血症であることもしばしば認められる。これらの病態はPHPTの前駆あるいは初期像と考えられているが,結論は出ていない。正確な診断についてはPTH不適合分泌を見逃さないことや,ビタミンD不足を初めとする二次性副甲状腺機能亢進症の合併を除外することが大切である。治療に当たってはNIHガイドラインを参考にする施設が多いと思われるが,ガイドライン自体にも問題点が多い。ガイドライン上の手術適応に固執すると,適切な治療時期を逸することもあり,注意が必要である。