著者
清山 風人 伊藤 菜々 大橋 裕平 田中 志歩 藤谷 亮 小森 祐輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-201_2-H2-201_2, 2019

<p>【はじめに、目的】頸部姿勢保持筋の異常筋緊張をもつ患者おいて,うつ症状だけでなく運動に対するネガティブ感情(恐怖,つらい)を持っていることが多い.そのため頭頸部姿勢保持筋の筋機能異常は感情と関連すると考えられてきた.しかしながらそれらを示す検討はない.感情と姿勢保持筋の関連を明らかにすることは,感情と筋制御の関連を示す基礎的知見となる.そこで本研究では健常成人を対象に感情が頭頸部姿勢保持筋に与える影響について検討することを目的とした.</p><p>【方法】顔面神経麻痺などの既往のない健常成人学生19名(男性11名,女性8名)を対象とした.実験1としてポジティブ映像(笑い①,笑い②),ネガティブ映像(高所,恐怖,つらい)をランダムに見せ,その間の表情筋(大頬骨筋,皺眉筋,咬筋)および頸部姿勢保持筋(後頸筋群,肩甲挙筋,僧帽筋,胸鎖乳突筋)の筋活動を表面筋電図によって計測し,目的とする感情が得られたかをVASにより記録した.またEMGデータはフィルタ処理,二乗平方根平滑化処理を行い,安静時の各筋活動のRMSを基に正規化した.実験2では,笑い・怒り・つらいの3つの表情を各被験者にランダムにとらせ,その際の表情筋および頭頸部の筋活動を実験1同様に記録した.また実験1,2において姿勢が頭頸部の筋活動に影響しないよう姿勢は固定し,頭頸部の姿勢を矢状面上より撮影し,姿勢が崩れた場合はその試技を除外し,試間での姿勢評価を行った.各実験で得られたiEMG,姿勢に対し一元配置分散分析を行い,有意差のあった項目に対して多重比較検定を行った.有意水準はいずれも0.05未満とした.</p><p>【結果】実験1の結果から,ポジティブな動画を見た際に大頬骨筋,咬筋,胸鎖乳突筋が有意に増加した(p<0.05).またネガティブな動画を見た際に皺眉筋(p<0.05)が有意に増加した.実験2の結果から大頬骨筋,咬筋,胸鎖乳突筋は笑いの表情を作ることで,また皺眉筋が怒りの表情を作ることでそれぞれ有意に増加した(p<0.05). また実験1,実験2の笑い,つらいに頭頸部の筋活動で有意な差を認めなかった.また各実験間で実験1,2前後の姿勢に有意な変化は認めなかった.</p><p>【結論(考察も含む)】本実験の結果から,感情の有無が頭頸部筋活動に影響を示さないことが明らかになった.このことから,感情変化に伴う姿勢や頭頸部の筋緊張の増加は短期的ではなく長期的,また二次的に発生するものであること考えられる.このことは頸部姿勢保持筋の過緊張とネガティブ感情を持つ患者に対する理学療法アプローチとして,感情にではなく,姿勢保持筋に対する姿勢改善や体操などの運動療法がより重要であるという基礎的知見を示すものである.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に従い,実験を行うにあたり事前に全対象者に対して本実験内容,趣旨,データの取り扱いについて十分に説明を行い,紙面にて同意を得た上で実験を行った.</p>
著者
大石 一行 田尻 淳一 深田 修司 菱沼 昭 佐藤 伸也 横井 忠郎 橘 正剛 森 祐輔 覚道 健一 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.144-149, 2014

症例は8歳女児。母親は遺伝性髄様癌と診断され甲状腺全摘術と側頸部リンパ節郭清術を受けていた。遺伝を心配した母親に連れられて当院を受診し,<i>RET</i>遺伝子検査でexon11 codon634に母親と同じmissense変異を認めた。超音波検査で甲状腺内に明らかな腫瘤は認めず,カルシトニンやCEAの上昇はなかったが,カルシウム負荷試験では陽性であった。上記の遺伝子変異は髄様癌発症のhigh risk群に分類されるため,髄様癌発症の可能性について両親と面談を繰り返した後,最終的に発症前の予防的甲状腺全摘術を希望された。術後の病理組織診断は微小髄様癌,C細胞過形成が甲状腺内に多発しており,遺伝性髄様癌に一致する所見であった。遺伝性髄様癌に対して海外では幼少時での手術を推奨する施設もあるが,本邦では予防的甲状腺全摘術の報告はほとんどない。今回われわれは予防的甲状腺全摘術を行った遺伝性髄様癌の一女児例を経験したので報告する。
著者
佐藤 伸也 森 祐輔 橘 正剛 横井 忠郎 山下 弘幸
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.207-216, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
20
被引用文献数
2

当院での甲状腺内副甲状腺腫の頻度は,原発性副甲状腺機能亢進症手術例319例中10例(3.1%)であった。8例が右葉,2例が左葉と右葉に多く,また下極が6例と下極側に多かった。超音波検査では7例が内部低エコーで,6例でドップラー血流の亢進を認めた。MIBIを7例に施行し,5例で集積を認めたが,同時に存在した腺腫様結節にも集積している症例が1例存在した。CTは腫瘍としての存在を提示できるものの質的診断は困難であった。穿刺PTH測定を6例に施行し,5例でPTHの高値を認め局在診断に有用であった。また1例に両側内頸静脈サンプリングPTH測定を行い,PTHの左右差を認め局在診断に有用であった。
著者
横井 忠郎 森 祐輔 橘 正剛 佐藤 伸也 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.197-201, 2014 (Released:2014-10-31)
参考文献数
22

古典的な原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を日常診療で診ることは相対的に少なくなっており,むしろ無症候性で発見されることが増えている。さらには正カルシウム血症であることもしばしば認められる。これらの病態はPHPTの前駆あるいは初期像と考えられているが,結論は出ていない。正確な診断についてはPTH不適合分泌を見逃さないことや,ビタミンD不足を初めとする二次性副甲状腺機能亢進症の合併を除外することが大切である。治療に当たってはNIHガイドラインを参考にする施設が多いと思われるが,ガイドライン自体にも問題点が多い。ガイドライン上の手術適応に固執すると,適切な治療時期を逸することもあり,注意が必要である。