著者
三橋 富子 田島 真理子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.216-222, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

水の硬度が緑茶浸出液の嗜好性に与える影響について,溶出成分の分析と官能評価を行って検討した。浸出液中の白色沈殿は硬度の上昇に伴って増加した。浸出液の水色は硬度の上昇に伴って黄色味が強くなり,明度が低くなったため,濃色化した。浸出液中のエピガロカテキンとエピガロカテキンガレートの濃度は硬度の上昇に伴って小さくなった。ビタミンCも同様に硬度の上昇に伴い顕著に低下した。浸出液中の遊離アミノ酸,カフェインおよび遊離糖は浸出液の種類による有意差はなかった。 官能評価で,Filetteで淹れた緑茶浸出液は蒸留水で淹れたものに比べて有意ににごりと甘味が強く,有意に好まれた。
著者
大富 あき子 田島 真理子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.20-30, 2009-01-15
参考文献数
31
被引用文献数
4 1

めんつゆの味に関して,SD法を用いて食味特性(プロフィール)と品質(分析値)との関連を調べ,めんつゆの材料が味にどのように影響を与えているのかを明らかにすることを目的に,材料の種類や割合を変えた16種のつゆを調製し,SD法による食味特性評定および一般成分分析を行った.重回帰分析,因子分析を行い,次の結果を得た.<BR>(1) 砂糖を少量増したつゆ,鰹節をIMPに等量置換したつゆはおいしさを保っており,鰹節や昆布を増量したつゆ,MSGを添加したつゆはだしの味やうま味は増強されたものの,多すぎると必ずしもおいしいとの評価にはつながらなかった.昆布をMSGに置換したつゆは,コントロールと有意な差がなく昆布の代用としておいしさを保てることがわかった.<BR>(2) 一般成分分析値と食味特性値との重回帰分析結果より,グルタミン酸濃度はつゆの特性にかなり大きな影響を与えていたが,食味特性としての塩味には特徴があったにもかかわらず,食塩濃度分析値はつゆの特性に対して影響は少なかった.また,全糖濃度も甘味,かど,ひきしまった味以外にはあまり影響を与えてはいなかった.<BR>(3) 因子分析の結果,「複雑な濃厚さ」「つゆのシャープさ」「だしとうま味」の3つの特性が認められた.鰹節を増量したつゆ,濃口醤油に置換したそれぞれのつゆは特にこれら3つの特性が強く認められたので,この両者を適量使用することにより,複雑な濃厚さ,シャープさ,だしとうま味をつゆに付与できることがわかった.<BR>以上より,つゆの材料としてMSGを付与し,鰹の天然だし,濃口醤油を適量用いることは,特に2倍,3倍に希釈して用いる市販の濃縮めんつゆの複雑な味に大きく寄与することがわかった.
著者
三橋 富子 田島 真理子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-44, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

スープストック調製時のアク生成に及ぼす水の硬度の影響を検討した。3種類のミネラルウォーターおよび硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムで調整した様々な硬度の調整ミネラル水を用いてスープストックを調製した。3種のミネラルウォーターでは蒸留水よりも有意に多くのアクを生成したが,水の硬度とアクの生成量は比例していなかった。カルシウムのみ,又はマグネシウムのみで作ったすべての調整ミネラル水のアクは蒸留水よりも有意に多く,また硬度に比例して多くなっていたが,カルシウムのほうがマグネシウムよりもアク生成に強く働いていた。加えて,カルシウムとマグネシウムの混合調整ミネラル水の場合,カルシウムだけの調整ミネラル水よりもアクの生成は抑制されていた。アク中のカルシウム含量はスープストック調製に用いたミネラルウォーター中のカルシウム含量に比例して増加していたが,タンパク質とそれ以外のミネラル類は大きな差はなかった。 アクの生成は,硬度1,000位までは水の硬度よりもカルシウム含量の関与が大きく,またマグネシウムの比率が増加するとアクの生成は抑制されていた。