著者
田村 悠 魚住 大介
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.145-148, 2018-03-20 (Released:2018-04-20)
参考文献数
14

症例はシーズー,去勢雄,12歳齢で,急性の嘔吐と腹囲膨満を主訴に来院した.腹部X線検査にて胃拡張が疑われたため,経皮的減圧を行った.胃からは約1l のガスと液体が抜去された.その後,状態は安定したため経過観察とした.6日後の再診時には一般状態に問題はなく,食欲及び排便も正常であった.しかし,その1カ月後に再度腹囲膨満を呈し,腹部X線検査にて胃拡張捻転症候群が疑われた.一般状態は良好だったため,再度経皮的減圧を行い一晩様子を観察したが,改善が認められなかったため,開腹手術を行った.胃は捻転し,脾臓及び小腸の変位が認められた.腹腔内臓器を整復した後,ベルトループ胃腹壁固定術を実施した.胃拡張捻転症候群は小型犬では報告は少ないが,本症例においては雪の多食が発症に関与した可能性が考えられた.
著者
田村 悠
出版者
明治大学大学院宮越ゼミ
雑誌
大正文学論叢
巻号頁・発行日
vol.1, pp.51-59, 2012-02-29

「金色の死」は大正三年十二月四日から十七日まで「東京朝日新聞」に連載されていた谷崎潤一郎の短篇小説である。この作品の梗概を簡単にまとめてみると、登場人物である岡村が自己の願望である自己の考える美を結集させたユートピアを建設し、最後に全身を金箔で覆って、そのため皮膚呼吸ができなくなって死に至る、というものである。「金色の死」はこのような全身に金粉を塗りたくって死ぬ、という衝撃的な結末を持っているがゆえに、これまでの評価、研究もこの結末を重要視してきたものが多い。例えばこの場面について三島由紀夫は昭和四十五年の『谷崎潤一郎集』解説の中で、金粉を全身に塗りたくって死ぬという点を「昂然たるナルシシズムの表白」と見ている。
著者
田村 悠
出版者
明治大学大学院
雑誌
文学研究論集 (ISSN:13409174)
巻号頁・発行日
no.38, pp.115-125, 2012

大正期の谷崎は探偵小説のような作品を多く書き記してきた。そしてその探偵小説群の根幹にあたる作品はこの「秘密」であろう。この「秘密」は探偵小説として一体どのような性質をもっているかを考えたとき、そこに《秘密》という概念が根底に潜んでいることが見て取れる。その《秘密》という概念が「秘密」という作品の中でどのような影響を与えているか、またそのことが「秘密」をどのような探偵小説としての意義をもたらしているか考えてみたとき、谷崎の「秘密」は通常の探偵小説とはいささか異なった特性を持っていることがうかがい知れた。単なる変態性欲やマゾヒズムといった見地とは違う立場からこの「秘密」という作品を読解していくと、そこには《秘密》と《謎》という新たなテーマが浮かんできた。