著者
田村 雲供
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.1-30, 2007

第一次世界大戦後のドイツ・ヴァイマル共和国では、開放は同時に消費指向性をもたらした。まず「性」の解放が進む。これは産児制限への欲求となって「性相談所」の設立をうながす。1919年から1932年までに400件以上の相談所ができ、そのうちのほぼ400件がベルリーンに集中していた。20年末には最高潮となる。フェミニスト、ヘレーネ・シュテッカーは精力的に相談所設立にかかわり、「性の民主化」をおしすすめた。しかし、1926年以降には公営の「結婚相談所」が設けられ、その方針は社会ダーウィン主義的な選別的断種においていた。「性科学」と「優生学」への両極化へのプロセスがはじまる。しかし、ナチズムはすべての成果を破壊する。
著者
田村 雲供 Unkyo Tamura
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.127-151, 2009-02-28

ナチズムのユダヤ人迫害を逃れ、アメリカに渡り、生涯をアメリカで過ごしたハンナ・アーレントの思考は、社会的なものと政治的なものとを分け、後者の復権こそがナチズムのような社会現象を防ぐとみる。したがって、リトルロックの公立校での黒人・白人共学実施をめぐっての暴動のなかで、アーレントは教育という社会的な場に権力がはいって共学を実施しようとすると非難し、分離教育を主張した。しかし、その論理には第三の要素「身体」が大きく作用していたことを追う。