- 著者
-
田附 紘平
- 出版者
- 日本カウンセリング学会
- 雑誌
- カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.3, pp.147-159, 2015 (Released:2017-06-30)
- 参考文献数
- 24
本研究は,カウンセリング場面でのクライエントによるセラピストへの感受のあり方とアタッチメントスタイルの関連を見いだすための基礎的研究を行うことを目的とした。具体的には,カウンセリング場面の映像観察の差異を検討することを通じて,セラピストへの感受の表れである注目の仕方や印象の抱き方についてのアタッチメントスタイルによる特徴を検討した。まず,見捨てられ不安と親密性の回避という二次元に基づくアタッチメントスタイルの4分類(安定型,とらわれ型,軽視型,おそれ型)についての質問紙調査を行い,各スタイル10名の映像観察調査協力者を選出した。映像観察調査の結果,見捨てられ不安低群は高群よりもセラピストの動作に有意に注目しやすく,高群は低群よりもセラピストの表情に有意に注目しやすかった。親密性の回避低群はセラピストの言葉のうち,言葉の内容に有意に注目しやすく,高群は言葉のリズムやトーンに有意に注目しやすかった。さらに,セラピストへの印象の抱き方について,各アタッチメントスタイルによる特徴が見いだされた。その後,カウンセリング実践を反省的に捉え直すための視点生成という点から考察を行った。