著者
近藤 匡慶 菅谷 量俊 長野 槙彦 磐井 佑輔 金子 純也 諸江 雄太 工藤 小織 久野 将宗 畝本 恭子 村田 和也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.571-577, 2016-08-31 (Released:2016-08-31)
参考文献数
18

目的:バンコマイシン(以下,VCM)負荷投与は,抗菌薬TDMガイドラインに記載されているが,有用性を示す報告は少なく,今回,救命救急センターでの有用性を検討した。方法:トラフ値,治療効果,投与日数等を負荷投与群,通常投与群(以下,対照群)で比較検討した。負荷投与は初日1〜2g投与し,維持投与はトラフ値10〜20μg/mLを目標に薬剤師が投与設計した。結果:負荷投与群7例,対照群21例を認め,トラフ値は,対照群9.4±5.4μg/mLと比較して負荷投与群15.8±6.8μg/mLと有意な増加を認め(p<0.05),トラフ値10μg/mL以下の症例が対照群62%から負荷投与群29%と減少傾向を示した。治療効果は有意差を認めなかったが,投与日数では,負荷投与群で有意な短縮を認めた(p<0.05)。結論:VCM負荷投与は,早期に血中濃度を上昇させ,治療効果に寄与する可能性が示唆された。
著者
上田 康晴 野口 周作 牧 真彦 上笹 宙 望月 徹 畝本 恭子 黒川 顕
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.8-16, 2007-01-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
26
被引用文献数
4

救急領域におけるmethicillin-resistant Staphylococcus aums (MRSA) 感染症に対するteicoplanin (TEIC) の高用量投与 (初日1,600mg/日, 以降800mg/日) を実施し, 本薬剤投与後の血中トラフ値推移と有効性および安全性との関係について検討し, 下記の成績が得られた。(1) MRSAに起因する肺炎10例, 創部感染症2例に対するTEICの臨床的有効率は, 100%であった。(2) 細菌学的効果は全症例のうち, 消失9例, 減少1例, 菌交代2例, 不変0例であった。TEIC単独治療8例では消失7例, 減少0例, 菌交代1例, 不変0例で, 他薬剤併用治療4例では消失2例, 減少1例, 菌交代1例, 不変0例であった。なお全12例中4例にPseudomoms aeruginosaとの複数菌感染が認められた。(3) 投与例では本薬剤に起因する副作用は認められなかった。(4) TEIC血中トラフ値は, day2で17.5±6.7μg/mL, day4で163±6.3μg/mLと若干低下するものの定常状態となり, day8でも20.5±6.9μg/mLとTEICの蓄積は軽微であった。さらに各症例で, 血中濃度のばらつきも認めなかった。(5) TEICの高用量投与はその効果に抜群のキレがあり, しかも安全性の高いことが示され, 重症MRSA感染症の治療において非常に有用な投与法であると考えられた。