著者
丸山 茂徳 戎崎 俊一 黒川 顕
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.4, pp.513-548, 2019-08-25 (Released:2019-09-20)
参考文献数
103
被引用文献数
3 4

Several models of the birthplace of life have long been proposed and discussed. However, those discussions are chaotic. To test the birthplace models, we introduce nine requirements that must be met for the emergence of life. These requirements are: (1) energy source (ionizing radiation and thermal energy), (2) supplies of nutrients such as phosphorus and potassium, (3) supplies of main life constituent elements (C, H, O, and N), (4) condensed reducing gas, (5) dry wet cycle, (6) Na poor water, (7) clean lacustrine environment, (8) diversified surface environment, and (9) cyclic nature. Based on these nine requirements, most proposed birthplaces, such as the mid-oceanic ridge hydrothermal system, do not meet the requirements for life to emerge. The only possible site is a nuclear geyser system. Under the Hadean surface environment, sites satisfying the nine requirements are extremely limited because it is significantly difficult to meet the nine requirements, including extrinsic conditions. This difficulty to fulfill all the requirements indicates that only one site is the birthplace of life on Hadean Earth.
著者
上田 康晴 野口 周作 牧 真彦 上笹 宙 望月 徹 畝本 恭子 黒川 顕
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.8-16, 2007-01-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
26
被引用文献数
4

救急領域におけるmethicillin-resistant Staphylococcus aums (MRSA) 感染症に対するteicoplanin (TEIC) の高用量投与 (初日1,600mg/日, 以降800mg/日) を実施し, 本薬剤投与後の血中トラフ値推移と有効性および安全性との関係について検討し, 下記の成績が得られた。(1) MRSAに起因する肺炎10例, 創部感染症2例に対するTEICの臨床的有効率は, 100%であった。(2) 細菌学的効果は全症例のうち, 消失9例, 減少1例, 菌交代2例, 不変0例であった。TEIC単独治療8例では消失7例, 減少0例, 菌交代1例, 不変0例で, 他薬剤併用治療4例では消失2例, 減少1例, 菌交代1例, 不変0例であった。なお全12例中4例にPseudomoms aeruginosaとの複数菌感染が認められた。(3) 投与例では本薬剤に起因する副作用は認められなかった。(4) TEIC血中トラフ値は, day2で17.5±6.7μg/mL, day4で163±6.3μg/mLと若干低下するものの定常状態となり, day8でも20.5±6.9μg/mLとTEICの蓄積は軽微であった。さらに各症例で, 血中濃度のばらつきも認めなかった。(5) TEICの高用量投与はその効果に抜群のキレがあり, しかも安全性の高いことが示され, 重症MRSA感染症の治療において非常に有用な投与法であると考えられた。
著者
小原 雄治 加藤 和人 川嶋 実苗 豊田 敦 鈴木 穣 三井 純 林 哲也 時野 隆至 黒川 顕 中村 保一 野口 英樹 高木 利久 岩崎 渉 森下 真一 浅井 潔 笠原 雅弘 伊藤 武彦 山田 拓司 小椋 義俊 久原 哲 高橋 弘喜 瀬々 潤 榊原 康文
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動では、支援課題の公募を行い、領域外有識者による審査委員会により選考し、支援を行った。経費上限設定など多くの採択ができるように努めた結果、応募188件、採択93件(採択率49.5%)となった。支援の成果として2017年度に54報の論文発表がなされた。②大規模配列解析拠点ネットワーク支援活動においては、最先端技術を提供するためにそれらの整備や高度化を進めた。遺伝研拠点では染色体の端から端までの連続した配列完成を目指して、ロングリードシーケンサー(PacBio Sequel)、長鎖DNA試料調製技術、さらに1分子ゲノムマッピングシステム(Irysシステム)の最適化を進め、実際の試料に応用した。東大柏拠点では、1細胞解析技術を整備し支援に供するとともに、Nanopore MinIONを用いた一連の要素技術開発を進めた。九大拠点では微生物ゲノムのNGS解析最適化を進めた。札幌医大拠点ではLiquid Biopsyによる体細胞における低頻度変異検出技術開発を進めた。③高度情報解析支援ネットワーク活動では、支援から浮かび上がった課題を解決するソフトウェアの開発を進めた。支援で特に活用されたものは、真核2倍体用denovoハプロタイプアセンブラPlatanus2(東工大)、染色体大規模構造変異高精度検出アルゴリズムCOSMOS、変異解析結果の信頼性を評価するソフトウェアEAGLE(以上、産総研)、エクソン・イントロン境界におけるスプライソソーム結合頻度の解析パイプライン(東大)、であった。また、CLIP-seqデータの解析パイプライン、高速オルソログ同定プログラムSonicParanoid、ロングリード向けアラインメントツールminialign(以上、東大)は今後の活用が予想される。高度化等の成果として48報の論文発表がなされた。
著者
馬場 知哉 柿澤 茂行 森 宙史 車 兪澈 黒川 顕 大島 拓
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.805-824, 2020-12-25 (Released:2021-01-18)
参考文献数
103
被引用文献数
3

Estimating the “minimal gene set” for a cell to be viable is an important issue in understanding “living” cells, creating “artificial” cells, and revealing “ancient” cells. The minimal gene set is critical information for understanding a cell system and designing an artificial genome, which is an essential element for creating an artificial cell. Artificial cells can provide many clues to understanding primordial life on Earth. To reveal minimal gene sets, “essential genes” in many bacteria, which could not be removed from bacterial genomes, have been identified. Bacteria are the most useful organisms for identifying essential genes from their specific characteristics: small genomes, rapid growth, and species that are easy to manipulate genetically. Therefore, various investigations on minimal gene sets or minimal genome of bacteria are reviewed, and “the minimal gene set for a viable cell” is discussed.
著者
戎崎 俊一 西原 秀典 黒川 顕 森 宙史 鎌形 洋一 玉木 秀幸 中井 亮佑 大島 拓 原 正彦 鈴木 鉄兵 丸山 茂徳
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.779-804, 2020-12-25 (Released:2021-01-18)
参考文献数
94
被引用文献数
2

Previously proposed hypotheses on the origin of life are reviewed and it is demonstrated that none of them can provide the energy flux of ionizing radiation (UV/X/γ photons, and high-energy charged particles and neutrons) required to synthesize organic materials as demonstrated by the experiments by Miller and Urey in 1953. In order to overcome this difficulty, Ebisuzaki and Maruyama, in 2017, proposed a new hypothesis called the “Nuclear Geyser Model” of the origin of life, in which high-energy flux from a natural nuclear reactor drives chemical reactions to produce major biological molecules, such as amino acids, nucleotides, sugars, and fatty acids from raw molecules (H2O, N2, and CO2). Natural nuclear reactors were common on the surface of Hadean Earth, because the 235U/238U ratio was as high as 20%, which is much higher than the present value (0.7%), due to the shorter half-life of 235U than 238U. Ebisuzaki and Maruyama further posited that aqueous electrons and glyceraldehyde play key roles in the networks of chemical reactions in a nuclear geyser and suggested that primordial life depended on glyceraldehyde phosphate (GAP) from the nuclear geyser system as energy, carbon, and phosphate sources, pointing to a possible parallelism with the anaerobic glycolysis pathway; in particular, the lower stem path starting from GAP through Acetyl Coenzyme A to produce ATP and reduction power. It is shown that microbes (members of candidate division OD1) inhabiting high alkali hot springs, a modern analogue of the Hadean Earth environment, do not possess genes associated with conventional metabolisms, such as those of the TCA cycle, but only have genes in the lower stem path of the glycolysis. This is named the “Hadean Primordial Pathway”, because it is believed that this striking result points to a plausible origin of metabolic pathways of extant organisms. Also proposed is a step-by-step scenario of the evolution of the metabolism: 1) Chemical degradation of GAP supplied from the nuclear geyser to lactate; 2) Catalytic reactions to produce reductive power and acetyl coenzyme A (or its primitive form) and self-reproductive reactions by ribozymes on the surface of minerals (pyrite and struvite), which precipitate in a nuclear geyser (RNA world); 3) Enzymatic reactions by proteins with pyrites and the struvite in their reaction centers (RNP world); and, 4) Metabolism of extant organisms with the full assembly of enzymes produced by translating molecular machines with information stored in DNA sequences (DNA world). It is further inferred that relics of primordial metabolic evolution in the Hadean nuclear geyser can be seen at the reaction centers of enzymes of both pyrite and struvite types, nucleotide-like molecules as a cofactor of the enzymes, Calvin Cycle of photosynthesis, and chemical abundance of cytoplasm.
著者
黒川 顕 戎崎 俊一 丸山 茂徳 原 正彦 クリーヴス ヘンダーソン 鎌形 洋一 磯崎 行雄 青野 真士
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

H29年度は立案した計画に基づき、以下の活動を実施した。1. キックオフWSの開催:H29年度から14課題からなる第二期の公募班が新たに領域に加わった。計画班と公募班との連携を強めるために、キックオフWSを開催した。2. 中規模WSの開催:領域全体での合同班会議を白馬八方文化会館にて開催した。3. Origin of Life 国際シンポジウムの開催:新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏」と合同で、化学進化および初期生命体に関する国際シンポジウムを開催した。4. 総括班会議を年6回開催した。会議後には計画班横断WSを開催し計画班間の連携を強めた。5. 地球生命アーカイブの開発:微生物統合データベースの開発ならびに東工大地球史資料館のデータベースの整理作業を継続した。また、領域の最先端研究内容をわかりやすく発信するために製作している映像ライブラリ「全地球史アトラス映像」をインターネットで配信できるよう、YouTubeチャンネルを開設した。さらに、「全地球史アトラス映像vol.3」を完成させた。6. 地域活性化イベント:中規模WSと同時に長野県白馬村役場にて教育講演会「白馬とカガクの奇跡episode2」を長野県教育委員会および白馬村の後援を受け開催し、最新の研究成果および白馬と生命起源との関係性に関する講演を行った。また、白馬高校(2017年10月19日)および大町岳陽高校(2017年12月21日)に出張講義を行った。また、大町岳陽高校では、理数科の生徒の課題研究に協力し、3つの班の課題を引き受け、共同研究を実施した。3班のうち1班の研究は、日本ゲノム微生物学会第12回年会にてポスター発表をした。
著者
須崎 紳一郎 小井土 雄一 冨岡 譲二 大泉 旭 布施 明 黒川 顕 山本 保博
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.42-50, 1994-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

International repatriation(国際患者搬送帰還)を担当実施した自験例19例(邦人帰還12例,外国人送還7例)を報告し,その実態と問題点を検討した。相手地はアジア,南北米,欧州からなど4大陸13ヵ国で,総搬送距離は133,643km,搬送飛行時間は171時間35分に及び,平均搬送距離は7,034km,平均飛行所要時間も9時間2分を要した。最長はLimaからのLos Angels経由15,511kmの搬送で,飛行時間だけでも21時間を超えた。随行医師は当施設から1名ないし2名を派遣した。原疾患は多岐にわたり,19例のうち意識障害例は4例,移送経過中人工呼吸を必要としたものは2例あった。最近の10例は国際アシスタンス会社からの依頼を受けた。航空機は全例民間定期便を利用した。移送経費は平均で300万円程度を要した。搬送途上の医療面では呼吸管理が最も重要であったが,一般の大型定期旅客機を利用する範囲では騒音,離着陸加速度,振動などは患者の循環動態には大きな影響を認めなかった。国際患者搬送帰還は,相手先病院,航空会社,保険会社,空港当局はじめ諸方面の協力と綿密な準備連絡があれば医療上は必ずしも困難ではないが,目下のところ本邦は欧米に比べ,これまでこのような医療需要に対する受け入れや派遣の実績,経験が乏しく,支援体制の整備,組織化が遅れているのが最大の問題点である。
著者
平田 清貴 松本 宜明 松本 光雄 村田 正弘 黒川 顕
出版者
日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.657-666, 1999-11-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
28

わが国における急性ベンゾジアゼピン系薬物の重篤,かつ致死的な中毒の実態を解明することを目的として,1996年の1月から12月において,日本の59の三次救急医療施設に受け入れられた669人の急性ベンゾジアゼピン系薬物中毒症例と,同一期間における日本の27の都道府県警察管区(58.7%の都道府県に発生した)におけるベンゾジアゼピン系薬物を服用し,死亡した95例の法医学的検死例について解析し検討を行った。両群とも大多数が自殺目的によるベンゾジアゼピン系薬物中毒であり,その比率はそれぞれ82.7, 83.2%であった。フルニトラゼパム,トリアゾラム,エチゾラムそしてニトラゼパムが両群に共通して多く使用された薬物群であった。とくにフルニトラゼパムが統計的にも有意に検死例群に多く使用されていたことは,効果の発現が早い一方で生物学的半減期が長いとされるこの薬剤のもつ薬物動態上の特徴からも納得できる。一方,両群において,ベンゾジアゼピン系薬物中毒例の多くは血漿および尿中の検出試験を受けていなかった。このことは診断を誤らせる可能性と同時に急性中毒研究の科学的進歩の妨げにもなっていると考えられる。本研究において,6例が三次救急医療施設にベンゾジアゼピン系薬物を含む複合薬物中毒で搬入され死亡した。そのうち5人は来院時心肺停止状態の患者であった。よって急性ベンゾジアゼピン系薬物中毒に関連する死亡例のほとんどは医療機関外で,発見されず,処置も受けなかったために発生すると考えられる。また,大多数の患者が使用薬物を処方箋により入手していることから,本薬剤の無分別な処方と画一的な調剤は急性中毒発生の原因のひとつとなっていると考えられる。したがって,その急性中毒の発生を抑制するには薬歴管理や服薬指導を行い,ベンゾジアゼピン系薬物(とくにフルニトラゼパム,トリアゾラム,エチゾラム,ニトラゼパム)の臨床使用をより適切に管理することが重要といえよう。
著者
黒川 顕
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

代表者は前年度に特徴的な病原性に関するデータベースは作成完了したが,今年度は病原性という曖昧な表現型にこだわるのではなく,病原遺伝子に着目し,その遺伝子群をターゲットとして比較ゲノム解析をすることで,病原遺伝子の分布や構造を明らかにしようとした.初めとして,病原性大腸菌や腸炎ビブリオ,さらには植物病原菌において代表的な病原因子として注目されている3型分泌装置(TTSS)に着目した.TTSSでは装置を構成する遺伝子群のみならず,宿主細胞に送り込まれる分泌蛋白(エフェクター)こそが病原性として重要であるが,これら分泌蛋白は遺伝子配列レベルでの相同性がほとんどなく,それら遺伝子を予測することは非常に困難であり,世界中で精力的に予測が試みられている.代表者は既知の分泌蛋白遺伝子のN末端50残基のアミノ酸頻度パターンに着目し,ゲノム全遺伝子から多次元尺度構成法(MDS)および自己組織化地図法(SOM)によりクラスタリングすることで,分泌蛋白遺伝子の予測をおこなった.病原性大腸菌O157に本方法を適用し,60個の遺伝子を分泌蛋白遺伝子候補として予測した.これら予測した遺伝子には,既知の分泌蛋白遺伝子だけでなく,共同研究者により実験的に明らかとなった分泌蛋白遺伝子がすべて含まれていることから,本予測法が極めて高いレベルにあることを示唆しており,それら以外の候補も分泌蛋白遺伝子としての可能性が高いと考えられる.このような高い精度をもった予測法は世界的にも例がない.今後は,本方法で予測した遺伝子の抗体を作成し,共同研究者により実際に分泌されているか否かの検証をすると同時に,実験で確認された分泌蛋白遺伝子情報を本方法に取り入れることにより予測精度を向上させ,他の菌種にも応用していく予定である.