著者
白土 保 柳田 益造
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.426-433, 1998-06-01 (Released:2017-06-02)

継時的な音列の聴取における音程の適確さの判断に関し, 仮説:"音程はずれ検知の範ちゅう化の強さは, 言語的な音程(音程名, あるいは半音何個分の音程か, などの非知覚的情報)の予測し易さに依存する"を立てた。この仮説の妥当性を検証するため, 継時的な二つの音からなる音列を用い, 音程はずれ検知に関する聴覚実験を行った。実験では音程はずれの判断に際し, 言語的な音程に関する情報を被験者に事前に知らせる条件, 及び知らせない条件の二つの条件を設定した。実験の結果, 事前情報ありの場合はなしの場合に比べ音程はずれ検知がより範ちゅう的に行われることが示され, 先の仮説が支持された。
著者
白土 保
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.715-719, 1998-10-01 (Released:2017-06-02)

二重奏音から, 個々の単音の基本周波数を分離抽出する手法と提案した。本手法は, 対象音の音響的性質に関して二つの穏やかな制約:(1)単音や調波複合音に類似しており, 低次の調波成分のパワーは他の部分音のパワーに比べ概して大きい, (2)二重奏音のパワースペクトルはそれぞれの単音のパワースペクトルの和として近似できる, ものを仮定している。このため本手法は, 対象とする楽器固有の音響特性やad hocなシステムパラメータを用いることなく幅広い範囲の二重奏音に対して適用することができる。また, 本手法では統計的検定手法を導入することにより, 基本周波数比が1:n(ただしnは2以上の整数)の関係, すなわち調波的関係の単音からなる二重奏音からの基本周波数の分離抽出を可能にしている。ヴァイオリン二重奏音, フルート二重奏音, 及び1台のピアノによるピアノ二重音に対し基本周波数分離抽出実験を行った。その結果, 調波的関係の単音からなる二重奏音に対し60〜90%程度, それ以外の二重奏音に対し90%程度の正解率で演奏された音名を同定でき, 本手法の有効性が確認された。
著者
白土保
雑誌
日本音響学会音楽音響研究会資料
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.1-8, 1995
被引用文献数
1
著者
白土 保 井佐原 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.114, pp.115-120, 1996-11-18

待遇表現の計算モデルが提案されている.このモデルでは,それぞれの待遇表現及び語尾に対し,各表現が持つ話し手と聞き手の待遇関係に応じた丁寧さを表す待遇値が一定の確率分布をとり,その確率分布は一次元の正規分布である,と仮定されている.そしてこの仮定に基づき,待遇表現に語尾を付加した際の待遇値の変化量が,付加の際得られる情報量に基づいて定義されている.いくつかの待遇表現,及びそれぞれの待遇表現に語尾を付加した表現の待遇値を心理実験によって求めたところ,語尾の付加による待遇値の変化は提案されたモデルによって予測された傾向に従い,モデルの妥当性が支持された.A computational model for polite expression is presented. In the proposed model, politeness magnitudes corresponding to expressions and ending words are assumed to be distributed in normal distribution. Modification of politeness magnitude on an ending word adding to a polite expression is defined by the amount of information. The result of the psychological experiment support the validity of the model.