著者
杉江 亮祐 百武 徹
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
バイオエンジニアリング講演会講演論文集 2016.28 (ISSN:24242829)
巻号頁・発行日
pp._1C43-1_-_1C43-5_, 2016-01-09 (Released:2017-06-19)

Infertility is often cited as one of the causes of the declining birthrate, which has a social problem in recent years. Roughly 10% of couples have infertility problems, and almost 50% of all cases of infertility are associated with a lack of sperm or sperm abnormalities. Therefore, motile sperm are required to increase the probability of fertilization. We previously observed of flagellar motion of bovine sperm and clarified that ambient fluid viscosity and non-Newtonian properties affected its shape and motion. However, the detail mechanics of the effect of surrounding fluid properties on the sperm motion is still unclear. Therefore, we simulated the sperm motion in various viscosity and non-Newtonian fluid to reveal the effect of the surrounding environments on the sperm motility. The simulation results indicated the decrease in the sperm velocity when the viscosity increased, because the increase in the viscosity lead to increase in the resistance of the ambient fluid. Additionally, the increase in the viscosity brought about the increase in sperm motility. We compared the present results with previous experimental data for the sperm velocity, and estimated the sperm motility for each viscosity. Consequently, we obtained the relationship of viscosity coefficient and sperm motility. These results will provide the useful information to estimate the sperm motility for various fluid properties.
著者
百武 徹
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.175-177, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
10

受精環境を模した高粘度かつ粘弾性を有する流体中を遊泳する精子の運動特性に関する研究例を紹介する.粘度増加のみでは精子の運動性は低下するが,Shear thinning粘弾性流体というレオロジー特性が,特徴的な鞭毛形状による精子の直進性向上をもたらしており,さらには精子の協調的な遊泳を促進している.
著者
百武 徹 安井 学
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

3年目は,以下の2つの研究項目を実施した.①異なる幅をもつ溝付きのマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,実際に精子が遊泳する卵管内の壁面には多くのマイクロスケールの溝が存在していることから,実形状を模擬したin vitro実験となる.実験では牛の凍結ストロー精液を用いて,チャネル内に設けられた溝の幅が遡上する精子分布に与える影響を調査した.画像解析した結果,溝が存在することで精子の分布には違いが見られた.具体的には,溝幅10, 20 μmの流路では,溝が存在する領域において精子分布が大きくなった.原因として,精子の走触性により,溝に近づいた精子の一部が溝にトラップされて溝に沿って遊泳しやすくなるためであると考えられる.加えて,溝が存在することで,精子の平均速度も大きくなった.このことは,卵管内を模擬したマイクロスケールの溝を応用することで,受精に適した高運動性精子を選別できる可能性を示唆している.②マイクロチャネル内に狭窄を設けることで,精子集積機能を有するマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,狭窄をもつマイクロチャネルにおいて,走流性によって流れに逆らってきた精子は狭窄を通過できず,テーパ部分に運動性の良い精子が集積することを利用している.実験では,チャネル形状やチャネル内流速が,チャネル内の精子分布や精子濃度に与える影響について調査を行った.合わせてOpenFOAMを用いた流体解析によりチャネル内流体挙動の調査も行った.その結果,チャネル形状やチャネル内流速を変化させることで狭窄内の精子の集積場所や精子濃度が変化することが明らかになった.本マイクロチャネルは,実際の受精環境を模擬した高受胎性の体外受精用チップに応用できる可能性がある.今後はさらに異なる形状,流速で実験を行うことでより詳細な傾向をつかむ予定である.